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星野SS
−たとえばこんなラブストーリー−
「おいしいコーヒーのいれ方」より
DAI
Up:1999.11.8 Mon


  星野SS
  −たとえばこんなラブストーリー−
  「おいしいコーヒーのいれ方」より



この風見鶏に通いだしてから、はや半年になった。
いまだにおいしいコーヒーのいれかたは伝授してもらえない。
マスターに聞いても、
「そんな物は聞くようなもんじゃない、自分で見つけろ」
と言って、なにも教えてはくれない。
しかし、それ以外にここでのバイトを決めた要因は、ウェイトレスのかれんさんだ。
こう、なんと言うか、ふわふわーっとした感じの、とても優しそうな人だ。
だが、どこか抜けているのか、時々、オーダーを間違えるのでマスターが、
「もういい、カフェオレとでもじゃれてろ」
と言ってから、オーダーが俺で、調理がマスター、その他かれんさん。との構図になっている。
「ねえ、勝利くん」
かれんさんが俺に話しかける。
「なんすか」体育会系丸出しの返事をしてしまう。これが慣れというものだ。
「勝利くんは『ショーリ』って呼ばれたことない?」
じっとこちらを向き、すこし首をかしげながら聞いてくる。
くー、なんてかわいいんだ。反則だぞそりゃ。
「死んだ母親がそう呼んでたかな」
かれんさんはやっぱりといった顔でうなずく。
「やっぱりね。『ショーリ』って、響きがいいもの。今度から『ショーリくん』って呼ぼうかしら」
コップを拭いていたマスターの手が、ピタッと止まる。
「ダメですよ、マスターが気が気でなくなっちゃう。かれんさんにわるい虫がつかないように、見張ってるんだから」
「かつとしー」
マスターが声を大きくして俺を呼ぶ。
「テーブルふき」
と言って、ふきんを投げる。
「いすの足までちゃんとふけよ」
何とも無茶なことを言う。
「ひどいよマスター。いくら図星だからって」
するとマスターはバターナイフを持って、
「これで外の植木の刈り込みでもやるか?」
「喜んでテーブルをふかしてもらいます」
かれんさんがカウンターで笑いをこらえている。
これ以上仕事(というより無理難題)を増やされてもしょうがないので、マスターに従うことにした。
ちょうど一つ目のテーブル(セット)をふき終わった頃に、彼女は来た。
「こんにちわー」
星野りつ子だ。
星野は俺と同じ大学に行っていて、俺の在籍する陸上部のマネージャーでもある。
星野のバイト先であるレンタルビデオ屋がこの近くなので、よく帰りによって行く。
「・・・勝利君、何やってるの?」
よほど珍しいのか、少し間をあけて聞いてくる。
「・・・そばでも打ってるように見える?」
以前、星野に言われた切り返しを逆に使わせてもらった。
「あー、それ私のネタ!」
「へっへーん、何時か使おうと思ってたんだよ」
星野は頬を膨らませて反論する。
「じゃあ、ロイヤリティー払ってよね」
「やだねー」
ヒラヒラと変な踊りをして星野を挑発する。この辺すこし丈に似てきたのかもしれない。
しかし、星野は奥の手があるのか、こちらを見てニヤリとする。
「いいのかなー、そんなこと言っちゃって。勝利君ってかれ・・・」
「だぁー」
そうだった、こいつは俺がかれんさん目当てもあってここで働いているのを知っているんだった。
マスターはわかったのか、こちらをジッと見る。
「・・・な、なんだ、カレーが食いたいのか」
俺が観念すると、星野は顔中ニッコリと笑って、
「ううん、カレーは太るから、ピザトーストとコーヒー」
(続く)



#####後書き#####
見ての通り、全然完結しちゃいません。
これは一応、第一章と言うことで、あと三つあります(予定)
りつ子ファン(?)って少ないと思いますが、どうぞ次回からも呼んで下さい。
ちなみに、マスターとかれんの関係に少し悩んでんですが、生き別れずに一緒にいた、
という設定にしました。ついでにちょっとマスターをシスコンっぽくしてみました。


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