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星野りつ子SS はじめての・・・ 「おいしいコーヒーのいれ方IV・雪の降る音」より 狩野雅明 Up:1999.7.30 Fri |
ねぇ。君の瞳に私が映ってるよ。 ねぇ。どうして瞳に姿が映るのか知ってる? それはね。 自分をちゃんと見てもらえてるんだっていう証拠なんだよ。 私はそう信じてるよ。 そう信じているの。 星野りつ子SS はじめての・・・ 「おいしいコーヒーの入れ方IV・雪の降る音」より 私の周りは暗かった。 そうか・・・布団、被ってるんだ・・・電気も点けてないし。 聞こえるのは鳴咽だけ。たぶん、私の。 「お願い、ひとつだけ教えて」 聞かなければ良かった。 「今でも、好き?」 答えはわかっていたはずなのに。 でも、かすかな期待にすがりたかった。 「答えて。これからもずっと、あの人だけ想い続けるつもりなの?」 無言の肯定。 お願い。 「そんなこと無い」って言って。 「ねぇ、私じゃ・・・・・・ダメ?」 私じゃダメなの? 私じゃあの人を忘れさせることは出来ないの? あの人には好きな人がいるんだよ。 どんなにがんばっても振り向いてくれないかもしれないんだよ。 『ごめん。でも・・・・・・無理だよ』 何故? どうして? どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてなの。 あの人は、あの人はねっ。 怒り。嫉妬。理不尽。惨め。 『よせって言ってるだろう!』 気づいて欲しかった。 分かって欲しかった。 どんなに言葉を重ねても。 どんなに思慕を募らせても。 この隔たりは埋まらないの? 「・・・・・・ばかだよ、和泉くん」 ちがうよ。 馬鹿なのは私。 好きな人がいること知ってた。 振り向いてくれないのに追いかけ続けた。 そして、ふられた。 彼の瞳に私なんか映っていなかった。 映っていると思い込んでいただけ。 瞳に映るあの人を私にすりかえていただけ。 可笑しいよね。 おかしいよね。 オカシイヨネ。 可笑しいのに、涙がでるのは何故? 誰もいない部屋はどこかひんやりとしている。 倒れこむように布団に身を沈める。 雪の降る音が聞こえそうなくらい静かな空間に私の嗚咽だけが聞こえる。 失恋なんて初めてじゃなかったはずなのに。 こんな気持ちになるのは何故? 「さようなら」って言ったのは何時? 「さようなら」って言われたのは何時? 何時だろう。思い出せない。 はじめての恋。 はじめての失恋。 はじめての涙。 私の、はじめて。 だから、これが私のはじめて。 流れる涙に意味があるなら。 もう少し、泣いていても良いよね。 この涙が乾いたら、きっと違う私になれるから。 (はじめての・・・・・・ 了) ―あとがき― え〜ご覧の通り「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズのSSです。 薄幸の乙女、星野りつ子ちゃんのSSです。 物語のヒロインを張っても良いキャラクターですが「かれん」というヒロインがいたために横恋慕の末にふられる役回りとなってしまいました。彼女にはぜひ幸せになってもらいたいところです。 自分には恋愛経験が無いので当然失恋の痛みなど知る由もないのですが、彼女があそこまで涙するということはよほどのことなんだろうなぁと考えて書いてみました。いかがだったでしょうか。時間潰しにはなったと思います。時間の浪費だったかもしれませんが。 言葉を探すのが大変でした。今度書くときはもう少し辞書の種類を増やそうかと思います。 感想などいただけたら幸いです。 |
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