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藤沢恵理SS
あいつのこと
「BAD KIDS 海を抱く」より
狩野雅明
Up:2000.4.10 Mon


指が動くたびに音がうまれる。
衣擦れの音。
ホックが外れる音。
衣類が床に落ちる音。
そして、最後の一枚を足から引き抜く。

藤沢恵理SS
あいつのこと
「BAD KIDS 海を抱く」より

「ふぅ」
湯船に浸かるとゆっくり吐息をつく。
家族が寝静まった家の中は物音一つしない。
何者にも邪魔をされないこの時間が私にとっては至福の時間。

ゆっくりと目を閉じ、今日あったことを思い返す。
『ねぇねぇ、恵理って山本君と付き合ってるの?』
友人にそう聞かれた時、なんと答えれば良いのか分からなかった。
『山本君と一緒にいるときの恵理って普段と雰囲気が違うように感じるのよねぇ』
そうなのだろうか。
あいつとは確かに普通の関係とは言えない。
『違うの?』
わからない。
私は何度もあいつと体をかさねた。
でも、そこに恋愛感情は存在していない。
今までも。そしてこれからも。

髪を洗い、全身を洗う。
身体を泡が覆っていく。
あいつはサーフィンの大会でここにはいない。
授業中ぽつんと空いたあいつの席を見ると、何故か幽かな寂しさを感じる。
今あいつは何をしているのだろう。
もう寝ているのだろうか。そこで女を抱いているのだろうか。
私の中の何かが得体の知れない渦に揉まれる。

泡を落とした身体を見る。
部活で鍛えた身体に余分な肉は付いておらず、その外形はしなやかに弧を描く。
「女」という「性」を忠実に形成する肉体。
「雌」としての機能と本能を付与された肉の器。
「雌」は「雄」を求めずにはいられないのだろうか。
縁取りを描くように肌の上で手を泳がす。
私は覚えている。
あいつの指が、舌が、唇が、私の肌で蠢く感触を。
あいつの手の、私を掴む力を、抑えつける強さを。

手のひらに力を込める。
胸が歪む。
小さく声が漏れる。
もっと…もっと…もっと。
もっと強く。もっと激しく。
『なんだ…もう感じてるのか』
存在を主張するように硬くなる胸の頂を摘み上げ、捻り、捏ねる。
飽きることなく何度も何度も。
電流が背筋を通りぬけるような感覚に身を焦がす。
『こんなになって。このスケベ女が』
先端をつまむ指先に力が入る。
それを感じ取るように唇が淫猥な旋律を紡ぐ。
指先が動く。強く、弱く、激しく、緩く、右に、左に、上に、下に。
肉芽を転がす度に喉の奥から溢れそうになる悦楽の悲鳴を押しこめる。
『ほら、もっと可愛い声で鳴いてみせろよ』
湿り気を帯びた秘溝の疼きを無視するように右手が内股を弄る。
肌が感じるぎりぎりの高さで軟らかに愛撫する。
性欲の炎にくべられる快楽への欲求。
焦燥感にも似た感情が胸を掻き毟りたくなるほどに膨れ上がる。
股間の茂みに潜む肉襞から物欲しげに粘性の雫が涎のように滴り落ちる。
『欲しいんだろ』
違う、違う、と首を振る。
『身体はそうは言ってないぞ』
欲しい、欲しいと、当てられている手に腰を擦り付ける。
『正直に言ってみろよ』
指先で秘溝をなぞる。前に後ろに行き来する指に絡み付く淫汁。
決定的な刺激を与えないように触れられる肉の真珠。
切なくて、苦しくて、口を鯉のように開け閉しながら声にならない声を上げる。
『すげぇ間抜けずらしてるぞ、おまえ…ほれ、言ってみな、何が欲しいんだ』
双丘の頂と秘襞の芯芽を焦らすように愛撫され、絶え間無くもたらされる悦楽の波。
しかし、もたらされる小さな波はどんなに願っても私を快感の海に溺れさせてはくれない。
だから……だから、私は言った「あなたのモノが欲しい」と。
『はい、良く出きました』
下腹部に感じる異物感。競り上がってくる悦楽の波。無意識に収縮し肉棒を咥えこむ淫孔。
肉壁の中を蠢く肉棒。
激しく、しなやかに、角度を変え、動きを変え、私を快感の渦へ誘う。
『まだ、足りないだろ』
さらにモノが挿入される。
2本のモノが暴れまわる。貪欲に快楽を貪りたくて淫乱に動く腰。
刺激が欲しくてはちきれんばかりに勃起する肉芽を擦りつける。

「愛の無いセックスは駄目だ」とは誰が言い始めたのだろう。
あいつとのセックスに愛なんて有りはしない。
有ってはいけないのだ。
あいつは私を罰し続けなければならない。
罰せられること。それを私は望んでいる。
あいつに「愛している」と言ってはいけない。
言ってしまったら、終わってしまう。
あいつは私を罰してはくれなくなる。
だから、私はあいつを愛さない。

指が動くたびに音がうまれる。
愛液が絡み付く音。
快楽に溺れる吐息の音。
淫孔の中で振られる指揮棒に合わせて、溢れる。

そして、白濁する意識に身を委ねた。

指に絡み付く指戯の残滓から目を離す。
「早く帰ってきなさいよね……」
虚空を見つめたまま呟いていた。
<あいつのこと 了 >

****後書き****
と、いうわけで18禁SSです。
「こいつはちょっと実用性が薄いかなぁ」なんて思ってます(笑)。
もっと情念みたいなものが出せれば良かったんですけどね。力不足でした。
擬音と直接表現は避けようと考えて書いてみました。
漢字表現のいくつかは私が勝手に創った造語です。
こんな言葉が本当にあるのか保証できません。
もし、あったとしてもこちらが意図した意味とは違うかもしれません。
そこら辺は文脈の前後から意図した意味を汲み取っていただけると幸いです。
「エロ表現辞典」があったら是非欲しいですね(笑)。
<2000.04.05 脱稿 >



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