ショート・ショート −線− 「天使の卵」より 狩野雅明 Up:2000.5.31 Wed
ショート・ショート ―線― 「天使の卵」より
線をひく。 曲線を描く。 曳かれる黒。 重なり合い濃くなる黒。 幾つも。 幾重にも。 重なり延びる黒。 絡み合う線の集合体が愛しい人を描き出す。 1つ線を描く。 もし、この線が無かったら愛しい人にはならないのか。 僕の愛する人と同一の別人になってしまうのか。 付け加えたこの線は愛する人を別人へと変えてしまうのか。 この線を描いても描かなくても人は言うだろう。彼女だと。 そう、この線があってもなくても彼女なのだ。 「なぁ」 僕は窓辺にたたずむ愛する彼女に尋ねた。 「君にとって、僕はなんだろう」 <―線― 了> * **後書き*** まぁ、こんな作品があっても良いかなぁと思いまして。 <2000・5・20 第1稿>