ショート・ショート

雨の日には歌を歌おう
「夜明けまで1マイル」より

「雨だね」
「雨だな」
「こんなときは…」
「こんなときは？」
「歌を歌おう」

歌を歌おう。
雨の日には歌を歌おう。

「雨の歌ってたくさんあるわよ」
「全部歌っちゃえ」

切ない歌を山ほど歌おう。
楽しい歌を全部歌おう。

「そうすれば？」
「私の良い人が来るかもね」
「良い人ねぇ…」
「ほら、ほら、良い人」
「誰が？」
「俺、俺」
「涯、寝言は寝てから言おうね」
「がーん」

ギター１本かき鳴らし
声をそろえて歌おうよ。

「くすん。うさぎは俺のこと嫌いなんだ…」
「あぁ、涯、ごめんてば。いじけないでよ」

歌を歌おう。
雨の日には歌を歌おう。
雨上がりの青空に虹が懸かるのを待ちながら。

「いいんだ、いいんだ、うさぎは俺のことが嫌いなんだ」
「だから、ごめんてば。あたし涯のこと…す、好き…だよ」
「ん〜照れたうさぎって可愛いな」

歌を歌おう。
雨の日には歌を歌おう。
雨が止んだら一緒に出かけよう。

「あ〜涯。嘘泣きしてたなっ」
「うわっ、暴力反対っ」
「うるさいっ。嘘吐きに人権は無いっ」

歌を歌おう。
雨の日には歌を歌おう。
君と一緒に歌を歌おう。

「わ、わ、悪かったよ。赦してうさぎさまっ」
「う〜今度どこかに連れていきなさいよね」
「はいはい、喜んで何処へでも」
「よ〜し。じゃ、約束だよ」

歌を歌おう。
雨が止んでも歌を歌おう。
洗い立ての世界を歩いていこう。
２人で一緒に歩いていこう。
（雨の日には歌を歌おう　了）

＊＊＊あとがき＊＊＊
まぁ、梅雨ってことで。
次は「かれんさん」の後編かな。たぶん。
（2001／6／10　初稿UP）