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ショート・ショート
こうもんの裏(白りん編)
「もう一度デジャ.ヴ」
狩野雅明
Up:2002.2.25 Mon


ショート・ショート
こうもんのうら(白りん編)
「もう一度デジャ・ヴ」より


私はこの学校の保健医をしている者です。
生徒の皆からは「りんセンセイ」と呼ばれています。
保健医という仕事は生徒の健康を預かる大変な仕事です。
特にウチのような部活動の盛んな学校は怪我をする生徒が発生しやすいものです。

昨日は出張のために保健室を空けていましたから、昨日の利用状況のチェックをしなければなりません。
利用者カードを眺めていると矢崎武志くんの名がありました。
あのコ、また怪我をしたのね。何処を怪我したのかしら…!!
それを見て私は息を呑みました。
なぜなら、怪我をした場所に……

こうもんのうら

と書いてあったのです。
こ…こうもんのうら…こうもんのうらって…ペ…ペペペペ……よね…
だっ誰が治療したの?
え?小島夕子さん?
お、女の子が治療したっていうの?
………………
…………
………
……

は!いけない、いけない。
顔が熱いですが、と、とにかくあんな大事なところを怪我するなんて大変だわ。
矢崎くんに状態を聞かないと。
私がそんなことを思っていると誰かが保健室に入ってきました。
「失礼しま〜す」
この声は矢崎くん!
「どうしたの。また怪我でもしたの」
私の前にある椅子に座るように促します。
「違うよ。昨日センセイいなくて話できなかったからさ、来たんだ」
と言いながら照れ笑い。
嬉しいことをいってくれます。私も寂しかったんだよ。
しばらくの間、取り止めのないお喋りをしてふと思い出します。
「ところで、昨日怪我したんだって」
「うん。たいした事はないんだけど夕子の奴が大袈裟に騒ぐから大変だったよ」
「そう。でも大事なところだし、怪我をすれば心配するわよ」
「うん。唾でも付けとけば治るって言ったらさ、夕子の奴『じゃ、私が舐めてあげる』なんて言い出すしさ」
「え!小島さん舐めたの!!」
「いや、さすがにそれはさせなかったよ」
「そ、そうよね。嫁入り前の女の子が舐めるなんていけないわよね…で、でも、小島さんに見せたのよね…」
「うん。さすがに見せないと治療できないし」
「ちっ…あの小娘…私でも見たことが無いっていうのに…」
「何か言った」
「いいえ、何も」
「それであいつ薬塗りながらクスクス笑うんだぜ『かわいい』なんていいながらさ。傷ついちゃうよな」
「か、かわいいんだ…武志くんのって…」
「は?センセイ何か言った」
「え、うんん。何も」

傷はもう治ったと彼は言いましたが、確かめねばいけません。
これは保健医としての責務であって別にやましいことなんて考えていません。
ええ、そうです。それにこれは2人の将来にも関わってくることなのです。
そうです。だから良いんです。ええ。今決めました。
だから、言いました。
「本当に治ったか見てあげる。傷口を見せて」
「え、そんな…恥ずかしいから良いよ」
「駄目っ見せなさい!」
「わ、分かったよ…じゃぁ、ちょっと後ろ向いていて」
背中越しにカチャカチャとベルトをいじる音が聞こえます。
うわ、ちょっとドキドキです。
彼の『かわいい』あそこってどうなんでしょう。
「はい。良いよ」
その声に促されて振り向くと目の前に膝が突き出されます。
へ?膝?
「ほら、ちゃんと治ってるでしょ」
「膝、なの…」
彼はそうだよという顔をしています。
「武志くん。これ何処でやったの」
「校門の裏だよ。いやぁ…石に爪先をひっかけちゃって」
校門?
こうもん?
校門…の裏…
校門の裏だったの!
あう!…私…わたしぃぃぃぃぃぃ
「センセイ?どうしたの」
突然真っ赤な顔になった私に彼は不思議そうな顔をします。
「な、なんでもないわ。ほほほほほほほ」


私はこの学校の保健医をしています。
保健医という仕事は生徒の健康を預かる大変な仕事です。
特にウチのような部活動の盛んな学校は怪我をする生徒が発生しやすいものです。
想像をかきたてられような怪我もたまには起きます……
起きるんだってば!

<こうもんのうら(了)>

****後書き****
「こうもんのうら」を勘違いした話は実話です。
私が校門の裏で自転車で転倒して保健室を利用した日に級友が勘違いしたのです。
そのことを思い出したので書いてみました。
ところで、性格の壊れたセンセイは好きですか?



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