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在りし日の風景
〜かれん編〜

「おいしいコーヒーのいれ」より
MEG
Up:2000.8.14 Mon



在りし日の風景
                   〜かれん編〜
                   「おいしいコーヒーのいれ方」より

「行ってきま〜す」
玄関を開けた途端、
太陽の光が眩しくて思わず目を細めた私の視界の端に、
鮮やかな黄色が飛び込んできた。

「あ、向日葵・・・」
庭の片隅ではあるけれど、そこに向日葵が咲いていた。
こんな所にあったなんて、今まで気が付かなかったな。
ショーリったら、私がもらってきた向日葵の種、
食べちゃった、とか言ってたけど、ちゃんと植えてくれてたのね。


いつも、ショーリはさりげないのよね。
自分からは、何も言い出さない。
実際、ショーリの口からは、向日葵のひの字も出てこなかったし、
私も今、見るまでは、すっかり忘れてたくらいだし。
それでも、私の望むことを、ちゃんと解ってて・・・・。
こんな風に、ショーリは私を幸せな気持ちにさせてくれる。

気が付くと、私はいつも、ショーリに幸せな気持ちをもらってる気がする。
居て欲しいとき、必ず私の側に居て、私に安心感をくれる。
嬉しいことだけじゃなくて、悲しいことや辛いこと・・・・、
自分の感情でも、人にはあまり見せないような部分も見せられる。
ショーリと一緒にいるときは、ありのままの、素直な自分で居られる。。。。

私、ショーリの事、好きだなぁ・・・・。
改めて言うと、照れ臭いけど、でもでも、すっごく好きだなぁ、って思う。
私の心の中、ショーリで溢れそう。。。。


これから、夏に向けて、あの向日葵も大きくなっていって、
いつか、私の背を追い越しちゃうかもしれないな。
小さいときは、私より背の低かったショーリが、
いつの間にか私を追い越してしまったかのように・・・・。


「おい、何やってるんだ?」
「え?あ、キャッ!」
「おいおい、何驚いてるんだよ、俺、何かしたか?」
ショーリの事を考えてて、
目の前に急に現れたからびっくりした、なんて言えない・・・。
「それより、時間、大丈夫なのか?」
「いっけなーい、遅刻しちゃう〜」
「終業式くらい、教師らしく余裕をもって登校してもらいたいものだよなぁ」
悪戯っぽい目で私を覗き込む。
「ふーんだ、ショーリに言われなくたって、学校では、ちゃんと教師してるもんっ!」
拗ねたふりをした私の頭を、ショーリは微笑みながら、ポンポンと軽く叩く。
「気を付けて行って来いよ」
「うんっ、行ってきま〜す」


見上げた空に広がる入道雲が、夏の訪れを感じさせる。
私とショーリが恋人(なんか、恥ずかしいな・・・)になってから、初めての夏。
来年もこれから先も、ずっと、ショーリの隣で夏を感じたい。
向日葵が太陽を見上げるみたいに、私も、いつも、ショーリを見上げていたい。
きっと、ショーリは、笑顔で私を見つめ返してくれるはず。
私の大好きな、あの優しい笑顔で・・・・。


私達の夏は、今、始まったばかり・・・・。





=編集後記=
シリーズ第二弾、かれん編です。
「僕らの夏」の文庫化記念という感じで、夏風に仕上げてみました♪
(文庫化から、大分、時間が経ってしまいましたが (^-^; )
ご感想等、頂けたら嬉しいです(*^-^*)


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