QJYつうしん64号 H9.5.23

     休日は山にいます     発行 QJY通信社

服部導人さんの山に見る今年の暖かさ ツツドリの声を聞く 山県郡大朝町/寒曳山 826m

 


大朝町の名峰「寒曳山」

この時期に登る理由は特に無かった。春の花が終わり、ササユリなど夏の花まではちょっと期間がある。湿原の花もカキツバタが咲いてはいるが、トキソウなどが出てくるまではちょっと間がある。

ただ、例年ならこの時期は寒曳山では山頂近くでイワカガミなどが見られる頃でもあり、例年より暖かい今年の植物の咲き具合を確認してみたい気持ちがあった。

特にこの山の特徴は展望の良さと取り付き(駐車場、登りやすさなど)の良さが気軽に登山者を寄せ付ける。

元就ブームで活気付く大朝町(吉川元春の勢力下にあった)を突き抜ける県道5号(浜田八重可部線)を北上すると広電のバス車庫がある、その先(役場から1キロの地点)にコカコーラの赤い看板が目に付くはずだ。これを右折し後は直進だ、高速道路の下をくぐり「松風荘」の前を過ぎるとこれ以上車は無理かな、という場所にたどり着く。スペースはあるのでここに車を置こう。ドアの壊れたトイレがあり、使用するなら紙と勇気が必要。

松風荘裏の斜面にはたくさんのヒメシャガが咲いていた。

15分も歩けば水場のある仙人岩に着く。

シオデやフタリシズカの花がそっと咲いていた。イカリソウの葉が多い、朝露を葉の縁に点々と乗せてワレモコウが生えていた、もちろん花は秋。頂上まで1200メートルだ。

チゴユリに歓迎されながらさらに20分進むとベンチのある展望所に着いた。但し今は木が繁って展望はきかなくなった。何を展望しろと言うのだ、残り800メートルの表示があるが


まだまだ休むことも無さそう。

つぼみを付けたササユリが「もうちょっとあとでね。」と、じらしてくれる。うーん、美人ほどこうしてじらすのだ。

美人でなければすぐOKするか、という話は…

その話はまた別の機会にしよう。

分かれ道があった。直登の左コースを登る、かなり急坂で下りは別ルートをとる予定だ。

ナナカマドが白い花を大きな木にたくさん咲かせて、さすが県北の高い山と思わせる。秋にはナナカマド酒が作れるぞ。

尾根筋に出たのはあれこれ花を見ながら道草しても丁度1時間、頂上までは余裕の平坦コース。

天狗岩の頂きを爽やかな風が通る。

ヤマツツジがつぼみなので少し落胆していたら、レンゲツツジが満開で歓迎してくれた。

広く平坦な頂上は大きな看板に四方の山々の名前を示してあり親切極まりない。惜しむなくば絵に描かれた山の姿が目に入る山容と一致させて欲しかった。

阿佐山塊のはみだし者、と山口の登山家中島篤巳医師に書かれた寒曳山、されど展望の良さで1000メートル級の県境の山に負けない。

ただここも周囲の木が繁ったため特に阿佐山方面は見えなくなった。

雉子の目山(897m)の姿がきれいだ。

ホホッ、ホホッとツツドリが鳴いている。もう夏のトケン類のシーズンだ。カッコウ、ホトトギス等を言う。

最近、山頂では20万分の1の地勢図を利用して周囲を確認しているが、北北東の姿の良い山が気になった。島根県瑞穂町の冠山(かんざん859m)と思われる。こうして山頂から見える山に登ることを思い巡らしながら、次の予定を考えるのは山屋さんたちの楽しみなのだろう。非常に同感である。

さて昼食も摂らずに下山し今見えた瑞穂町方面に向かおう。ウグイスカグラの赤い実がぶら下がっている。スキー場を左に見ながら下りるとイワカガミが群生しているが、今年はもう終っている。最近、朝夕の冷え込みでそれほど進んでいないだろう、と思っていたが、やはり暖かいのか。

「山野草の楽園」

島根県邑智郡瑞穂町、昨年同じ時期に山に入らせてもらった服部さんのお宅へ行ってみることとした。

布施という地区で林業を営む服部導人氏は「西日本山野草を守る会」を作るかたわら約2ヘクタールの山林を開放し、会員に山野草の移植や保護に使用させている。

毎年三日間だけ一般開放して山に入らせて下さるのだが、期間外の本日、急に訪れても断るようなお人柄では無いことを昨年お話させてもらって良く分かっていた。

大朝町と瑞穂町は隣り合わせで道路の整備が進んでいるため、苦も無く到着する。あとは布施地区への道さえ分かれば、の話だが。

瑞穂町役場の前を通り高見地区(昔、道路をたくさんの亀が歩いていてびっくりした所)を過ぎて5キロの地点で右折すればすぐ分かる。時期には「山野草の園」の貼り紙が至る所にあるから。

昼食を布施の「赤馬の滝」で摂る。

春はコウヤミズキの咲く素晴らしい秘密の場所。オオサンショウウオの生息地でもある。秋の紅葉、今もジンジソウの葉があった。

オオバアサガラ、コケイラン、ハンショウヅルなどちょっとクセのある植物に逢えるぞ。

滝は水量が多く、水飛沫がすごい。

きれいな流れに沿って歩いても楽しい。

ミツマタに実がなり、その前にはコウゾの花が咲いていた。キショウブが雑草で生えている。秋には紅葉も楽しめるはず。

こんな誰も知らない、地図にも載っていないような小さな名所を自分の地図に書き込むのも一興である。

明日からの準備に忙しい服部さんに挨拶すると、勝手にどうぞ、とのこと。今日は既に3人の訪問者があったそうだ。

山に入ると今年はキエビネが最高。昨年はまだ咲いていなかったから、やはり暖かいのか。

シライトソウやヤグルマソウなども咲く。かと言ってシラユキゲシも。おやクマガイソウが咲きおわって。

とにかく変わった場所でもある。今では1万株に増えたエビネの多さに少々食傷気味になるが。

先日はテレビ朝日が取材に来たと言う。

帰りに服部さんの家にも寄ってみた。何と前の道路はオキナグサの実がたくさんなっているでは無いか。それも雑草としてアスファルトの割れ目にタンポポみたいに。

服部さんの仕掛けかも知れないが。

欲しい花があればサクラソウでさえ一鉢百円で分けて下さる。

マンション住まいには不要だが。

家に帰って今日出かけた場所を妻に話すと、それなら夕刊に出ている、と中国新聞の記事を見せてくれた。明日から公開とある。

5月第4日曜の前後三日間だ。