休日は山にいます 平成9年11月7日

QJY79

 紅葉の山歩き その4 島根県瑞穂町 丸瀬山(1021m)〜トビ岩

小春日和

立冬である。で、空は青く澄み、気温も暖かい。こんな日を小春日和と呼ぶ。実際は立冬を過ぎなければこの表現は使えない。

出発する前に、近所の薮にあるシロダモに花がついているのを見た。もうそんな季節なんだ。

青空が広がっているので県北のもみじ狩りに出かけることとする。行き先は瑞穂ハイランドスキー場、阿佐山への登山口として名高いが、今は完全にスキー場化してしまってこの山の自然の魅力は乏しい。

そこで、今回、とてもいい展望の山「丸瀬山」を紹介しよう。

スキー場の登り口

瑞穂ICを出てハイランドスキー場はすぐ近くにある。瑞穂バレーもあるので間違えないこと。

一昨年は確か日曜日だったがゴンドラが動いていて紅葉の見物客が多いことを物語っていた。あいにく本日は平日、しかし駐車場には車がたくさん、シーズン前の工事もあるのだろう。

閉鎖されていれば近くに停めるしかないが。

登りをスキー場のリフト沿いコースとし、下りを林内の山道とした。その理由は、陽が低い内は陰になる林内の明るさ不足と、咲く花があってもまだ開かないのではないか、という想定。

まあ、それほどたいした違いは無いが、結局これが正解であった。読んで下さればわかる。

ゴンドラ出発点の立派な建物の左脇を抜けるとスキー場フェアウェイに出る。右にゴンドラのロープを見ながらきつい坂を登り始める。これはゴンドラが動いていない限り必ず歩かなければならない道。

7番支柱まで来ると普通なら息が切れて休憩だ。ここに林内の山道に入る印がある。と、言ってもスギの木に巻いた赤テープと誰かが掛けた CCレモンのペットボトルのこと。青いペンキで「入り口」とも書いてある。

オオバアサガラに実が鈴なりだ。この辺りまではアカマツもちらほら。ケヤマハンノキが多い。ヤマシロギクが唯一の花か。

夏なら迷わず、日陰になる右の道を選ぶが、今日はさらにしんどい坂登りを続ける。見上げるゴンドラの道は絶望的な急坂だ。12番支柱、登山路はここで右手の作業道に入る。変電設備の看板のある建物の方だ。

振り返ると向こうに三瓶山が見えてきた。良く澄んだ青い空、しかし足元はとんでもないガレ場道だ。下りで使うととても怖い。

MAP

ヤマブドウがたくさん

足元は悪くても左の崖に沿ってハギが植えられている。花の時期は素晴らしいことだろう。ヤマアジサイが一輪残っていた。アカマツが見られなくなってブナやミズナラが目立つようになった。アカバナが白髭の実を付け、終わっているもののオカトラノオ、オトギリソウ、アケボノソウが多いぞ。

逆に右手の谷沿いにはオトコエシが実をつける。おや黒い実は何だろう。葉が落ちているがツル性の植物だ。実の付きかたからしてヤマブドウだ。黒い実をつぶしてみる、青いぶどうの実が出てきた。良く熟した秋の味覚、大きく甘い園芸種とは比較の余地も無いが、なかなか実ったものはお目にかからない。

ナナカマド、ミヤマガマズミが秋の赤い実を堪能させてくれる。

ゴンドラが動き出した、営業しているのか?工事の人を運ぶのだろうか?手を挙げれば乗せてくれるだろうか?(アホな)。

1時間半はかかっただろうか、ゴンドラの山頂終着駅に着いた。

よくもまあ荒れた山道を登ってきたものだ。

今日は上まで行かないで右手にある。スレートぶきの高電圧と書かれた建物の方へ行く。百葉箱の置いてある、裏手に貯水槽のある場所だ。その前の土手を下りて山道が始まる。

つまり右手のなだらかな丸い丘が目指す「丸瀬山」だ。全山紅葉しているではないか。もともと「丸背山」だったに違いない、まるで巨大な古墳のような姿をした山容にやけに広い道が待っていてくれた。

本日の目玉商品、トビ岩

ここから980メートル歩けば山頂だ。ブナに緑のペンキで「丸瀬山へ」と書いてある。あれだけ苦労して登ったのだから、もう下りたくないのだが、しばらくは下りの落ち葉の敷き詰められた山道を歩くことになる。

ヤマボウシが実を付け、それにヤマブドウが絡む。赤い実はツルシキミ。紫色はムラサキシキブ、赤い実のカマツカやミヤマガマズミ、当然ナナカマドも。

思わず口笛の出る枯れ葉の山道は広くて歩きやすい。ほとんどの枝は葉を落としているので背景まできれいに見える。青い空と鳥の声が素晴らしい。ほとんどここを訪れる人はいないのだろう、エビネの葉、クマシデの実、ヤマブドウやカエデ類、小さなアップダウンを繰り返して歩きやすい山道。先程の苦労が報われる。

明るく広い山道は落ち葉を踏むカシャカシャという足音でとても楽しいのだ。

コバノフユイチゴの優しく丸い葉とイワカガミ、イカリソウの葉が春にもおいで、と呼びかけてくれるようだ。

クリやミズナラの実がたくさん落ちているぞ、クマの大好物だ。でもクマは出そうも無い、安心なのはスキー場であること。

背中に小春日和の陽を受けて気持ちいい。

ただ道の中央に筆界表示の赤いクイが埋めてあるので注意して歩かないとけつまずくぞ。

ウリハダカエデはたくさんの実を付け、ミヤマイボタの黒い実も豪華。そしてツルウメモドキが絡み付く。百葉箱から20分で7番支柱からの「出合い」につく。

そこで初めて本日の目玉商品「トビ岩」の案内が目に入った。丸瀬山の頂上は出合いから5分でやってくる。ここは全然展望は開けない。曲がり角のヤマボウシが印象的。で、ここの看板を信用するなら、トビ岩はここから570メートル、昼食は是非トビ岩でとりたいものだ。

この時期は木々の間から向こうが透けて見えるから大きな気持で山歩きができるのだ。

大きな岩が目に入ればそこがトビ岩、北斜面の展望に疲れは吹っ飛ぶこと請け合い。

三角点のそばの岩にサンショウの実が風で飛んで来ていた。マユミやイワガラミ、ツルウメモドキも印象的。そして大岩から遠く琴引山や三瓶山、大江高山が目に付く。眼前に原山、その先は京太郎山。近々登りたい山々。

下山も楽しい

先程の「出合い」まで戻り、林の中の山道を下山しよう。登りであれほど喘いだのだから、下りもそんなに甘くない。ただ、この逆だとガレ道のつまらない下山になる。滑らない様に樹木に助けてもらいながら、変化のある山に別れを告げた。

駐車場ではヘリコプターがスキー場の資材を実に効率よく山の上に運ぶ作業をしていた。

帰りには咲いていたナギナタコウジュの葉を戴いて、ハーブティーをいれよう。

ちょっと苦いが、日本産のハーブが香る。

<<編集後記>>

最近、電車の白島線に良く乗る。自宅の牛田から白島まで歩き八丁堀まで乗って大手町の会社までまた歩く。

なぜか、落ち着くから不思議。

乗っている人達も皆この雰囲気が好きなんだ。

運賃100円の心の贅沢。