QJYつうしん 111号
きゅう・じぇい・わい 休日は山にいます 1998・8・28
立ち並ぶワレモコウをかき分けて登る 広島県山県郡芸北町
大佐山(1069m)
八幡洞門ルート
芸北の山々はスキー場が多く、そういう意味では
春の花、夏のキャンプ、秋の紅葉、冬のスキーと一年中遊べる要素を持っている。大佐山も年中賑わう山のはずだが、なぜかこんな素晴らしい山を訪れる人は少ない。
今日も下山するまで誰一人出会う事のない、静かな山歩きだった。
ただ最初に聖湖や八幡湿原を訪れたため、少々登山開始が遅くなってしまった。なにしろサワギキョウとカキツバタが紫色の饗宴をしていて、湿原を離れられなかったのだ。芸北の山に登るのに、八幡湿原に寄り道すると時間がいくらあっても足りない。なお、この時期にカキツバタが咲くのは不思議だが、6月頃と晩秋まで見られる。
ところで大佐山は普通はR186の大佐スキー場側から登る。そのイメージから何となくただ登るだけの面白くない登山と思われる。確かにスキー場からのルートは面白くない。
そこで本日紹介するのは、QJY通信第46号で鷹ノ巣山へのルートに使った八幡トンネル近くの登山道から行くルートだ。すると大佐山が素晴らしいお花畑の山になるから不思議、早い秋の休日を楽しもう。
若い植林地
車を奥に入れようにも、先日相当大雨が降ったようで、土砂の流れた跡が深い。従って舗装道路からすぐの場所に駐車し歩きはじめる。気の毒だが二台目の車が来てももう入れない。
山道の中央に赤、白のゲンノショウコやヒメキンミズヒキが咲く。普通のキンミズヒキもある。左に流れの音、右の崖にはアカバナやツシマママコナ。アカソ、シシウド、クサアジサイ。ヌスビトハギも可愛らしいネズミノブラジャーをぶら下げている。
水気のある場所にはアケボノソウやツリフネソウが、元気良く咲いている。
一番奥まで来るとクリの実も落ちていて、楽しいぞ。ここにある「水源の森」の看板の意味するものは何だろう。右手の危なっかしい取りつきに広島やまびこ会の「←大佐山」の案内を見つける。
ヤマシロギクやサラシナショウマの咲く細い山道が始まるが、危なっかしかったのは入り口だけで、歩きはじめると普通の山道となった。
キバナアキギリ、ミズタマソウ、カワラナデシコが秋本番を告げる。アキノタムラソウ、オミナエシ。アカモノやリンドウの葉も多い。
明るい谷筋の道はワレモコウが元気に咲く。アキノキリンソウやヤマシロギクも美しいこと。
好天で暑いが青空が広がって気持が良い。
マルバハギの山道をどんどん上り詰めると、マツムシソウが群落を作っていた。それは第46号でレポートした頃の様子と変わらない。
フィールドノートには歩きながら「アキタム/オミナ/ヒメキン/ワレモ」と手早くメモが書き込まれる。「汗ポタ/風いい/水の音」も。
この登山道は杉、ひのきの植林地だが、樹木が若いのでこうして秋の七草をたっぷり見る事ができるのだろう。もう10年すれば日当たりが悪くなってしまうかも。
今のうちだぞ。
総苞片(普通の花のガクの部分)をさわると粘るヨシノアザミ、明日にも咲きそうなのはホクチアザミだ。ちなみに八幡湿原にはマアザミ(キセルアザミ)が咲いていた。
なおも道の両側から覆いかぶさるようにワレモコウが立つ。それをかき分けながら進むと、大佐山と鷹ノ巣山の分岐に着いた。出発30分である。
前回はここを左に行った。今日は右。
上空を米軍のジェット機だろうか、低空飛行がやかましい。
マツムシソウの群落が絶え間無く現われ、メモには「ワレモ/ワレモ…」とワレモコウの連続。
ススキの原の大原山
時折ヤブコギ的なクマザサ。しばらく広い草原。と、変化がとても嬉しい。
ヤマザクラかと思った木がどうも気になる。葉の縁のギザギザが鋭いのだ。樹皮をナイフで剥いでみるとツーンとサロメチールの香り、ヨグソミネバリ(本名:ミズメ)だ。
ヤマラッキョウのネギ坊主がすっと立つ。
ススキの中にキキョウが一輪咲いていた。ここも深入山みたいに素晴らしいお花畑の山だ。
ホクチアザミはどうも上に行くほど良く咲いているようだ。高度が増すほど咲いているのはこの花が秋の花であることの証明か。
マルバハギ、オミナエシ、ススキ、ヒヨドリバナ、カワラナデシコなど秋の七草が咲きそろう。足元にはチゴユリが咲いたあと、ツリガネニンジンもまだまだ紫色の釣り鐘をぶら下げている。
ヤマジノホトトギスにしても随分遅くまで残っている感じ。でもヤマシロギクはもう咲いている感じ。複雑に秋の花々が折り重なっている。
そして山の名称は確認できないがススキの原の小ピーク「大原山」へとやってきた。振り返れば臥竜山とそれに連なる掛頭山の山容、右手後方は高岳や聖山。今日はすっきりと遠くまで見える。
展望の山頂へ
さあ、ペースを上げて、と言いたいが、山の距離感はいつも遠めに感じてしまうもの、大佐山ははるか向こうに見えてちょっと落胆する。
いや、ゆったりと存分にこのお花畑を楽しめるんだ、と思うのが正解だが。ただ、アップダウンは全く無い、緩やかなハイキングコースと言える。
なおも道をふさぐワレモコウをかき分けながら歩くとアラゲナツハゼか、ブルーベリーが口にすっぱいぞ。ササ原が続いたり、雑木林があらわれたり変化も多い。それはリョウブ、ミズナラ、ウリハダカエデの林でそれは2年前の鷹ノ巣山と良く似ている。
平坦な道ではサルナシとヤマブドウがたくさんなっていた。残念ながら今はまだ青いが。
出発から一時間半で明るい山頂が現れた。スキー場からのルートが向こうから来ている。キアゲハやタテハが激しく舞い、イワツバメも山頂をかすめるように飛ぶ。
カワラナデシコはまだ残り、オミナエシ咲く山頂は前方にリフトの施設も見える。白いススキが風に揺れて美しい。
こちらよりちょっと低い大潰山やサイオトスキー場がはっきり確認できる高杉山、天狗石も指呼の間。臥竜と掛頭の間に深入山も。
帰路は当然車を置いた場所へとなるが、次の方法も一応考えられるので、どなたか試してみて欲しい。
1・大佐スキー場に車を置く。
2・タクシーを呼び、この登山道へ移動。
3・下山はスキー場側へ。
但し、私の知る限り、芸北町には「まきはらタクシー」一台きり。芸北町川小田、08263-5-1107
この日、R186を加計町経由で帰ろうとしたら、王泊ダム近辺で通行止めとのこと。復旧は未定だからしばらくは浜田へは迂回路を使用しなければならないそうだ。
[編集後記]
お盆や彼岸の墓参りのたびに、近場でよかったな、と思う。おばさんの墓はとうかさんの円隆寺、妻は尾長の高天が原、私のところは高陽の墓苑。
墓が市内にあると全部を回っても午前中に済むからとても楽。
高陽ではこの時期コマツナギが咲き始める。ヘクソカズラ、アオツヅラフジ、ヤマノイモも花を付けている。
東区役所の「まちづくり推進課」が今取り組んでいる「樹木マップ」作りに協力しているが、高天が原のマップを作りたいと言う委員もいた。自然観察にもいいところなのだそうだ。
本になるのは来年の3月。限定5000部、さてどんなのが出来るかな。