とろとろと青い海を見ていた。 もう少し海岸線を走りたいと国道を離れた。 細い道に分け入った。 ひび割れた道は自然に還り始めている。 ひっそりと整えられた畑。 それ以外に人間の気配は見あたら無い。 草の匂い。 夏の虫と秋の虫。 ゆっくり舞う海の鳥。 蜜柑の色。 青く動かない舞台で光が踊っていた。 烏帽子岩が霞んで遠くなってゆく。 眠っていたのかもしれない。 いつの間に干したのだろう。 空に烏賊が揺れていた。 とろとろと青い空に沈黙ばかり。 2003年10月29日 西泊