波照間島には宿が少ない。キャンプも禁止。
事前に全ての宿に電話したが、どこも満室であった。

西表島で会った市橋君の情報を頼りに、
とりあえず島に渡り、ある建物を探す。

「港から右の方に行くと壁がみどり色のスナックがあり、
そこの部屋に泊めてくれる」のだそうだ。

その建物はすぐに見つかった。
看板もなく、とても泊まれるようには見えなかったが
そこにいた、おじさんに声を掛けると
「一部屋だけ空いてるので、そこのノートに名前を書け」とのこと。

玄関脇にある二畳以下しかスペースがない、物置のような部屋に通された。


この島の集落は、石の壁と防風林に囲まれるようにして
島の真ん中に集まっている。

きれいに花が植えられている庭で草とりをしているおばあに
「写真をとってもいいですか」と声を掛ける。
「何を」と不思議そうに聞くので「おばあを」と答えると
すこし照れたように草を刈り続けた。
二度シャッターをきり「ありがとうございました」と言うと
顔をあげずにうなずいた。


ビールを持って浜岸に夕陽を見に行く。

陽がすっかり落ちると近くで酒盛りが始まり、飲ませてもらう。
そこにいた同じ宿の若宮君と夕飯を食べに行く。
まぐろの胃袋のキムチを肴にさらに飲む。

彼は勤めていた京都の民芸屋をやめて、
ダイビングの仕事を求めて八重山にやってきたそうだ。
いろいろ島をまわったが仕事はない。
「夢を見続けていたいけど、現実は・・・」
しばらく、小浜島でもずく取りのバイトをしていた。
今は福岡からやってきた彼女と、この島にいる。

「もう少し飲みませんか」
幻の泡盛と言われている”波盛”が部屋にあるのだそうだ。
彼の部屋で彼女も合流して3人で飲む。

それぞれの人生が交差する。