Homebrew 21MHz Kandoian Antenna
(自家製21MHz ふきん掛けアンテナ)
1.Abstruct(概要)
“進行波励振”動作の自称“ふきん掛けアンテナ”(Kandoian型)を
自作したので紹介します。
このアンテナは,21MHzシングルバンド全域でSWR=1.1で平坦です。
地上高さ40mH(14階建物最上階バルコ二, 海抜80mH)に設置した
“ふきん掛けアンテナ”の下からの写真を次に示します。
根元の黒い部分は,短縮コイル(自動車用の大電流線(8mm角)で28.5回巻,
コイル長さ=220mm,コイル内径=20mm,コイル外径=35mm)です。
“ふきん掛け”までの支柱は,黒色の熱収縮管で覆ってあります。
アンテナと建物とは,一番接近した位置(建物のバルコ二のひさし)で,
約25cmまで接近しています。他の部分は,最低1m以上の空間がありますし,
垂直頂部には障害物はありません。
2.Backgound of Study(試作の背景)
市販の21MHz L型GPアンテナ[第一電波工業の旧いL型GP(型番L-15)]など
を使用していましたが,CWの運用,SSTV(Slow Scan Television)のように
送信比率が高い電波様式を誤って全電力(500W)で使うと,交信中に短縮コ
イルを焼損していました。そこで,そのアンテナの基部を金鋸で二つに切
断し,その中のコンデンサを外し,短縮コイルを8mm角の被覆より電線に
よって,28.5回に巻き直しました。巻き替え後のコイルの内径と長さとが
大きくなったことによって,インダクタンスが低下し,アンテナの同調周
波数が24MHz台に高くなってしまいました。
しかも,アンテナ先端素子の長さは,調整範囲を超過していて,21MHz帯で
同調するまで長くはできませんでした。
そこで,垂直アンテナの途中に円盤(中間冠と呼ばれる)を取付け,実質長を
長くすることを思い付きました。円盤の代理部品を探していましたが,大型
日曜大工店で,ステンレス製の”ふきん掛け”(30cm*3本組)で支柱にビス留
めできるものを発見し,アンテナ垂直部の太い部分に取付けました。
その後,アンテナアナライザ(Delica AZ1-HF)によって,同調周波数を
21.000MHz付近に合うように,先端素子の長さを調整しました。
その結果,インピーダンスが50オームとなり,21MHzアマチュア帯全域で
SWR=1.1以下になってしまいました。
3.Advantages(効果)
通常のマルコ二式アンテナ(GPアンテナもその一つ)は”定在波励振”
ですが,“ふきん掛け”を中間冠として取付けた後の動作は”進行波励振”
になり,広い周波数帯にわたってSWRが低くなります。21MHz用ですが,28MHz
でもSWRは2.0以下です。
試に,ふきん掛けの本数の影響を見ると,次の表1のように,3本以上が効果
があることが分ります。
表1. ふきん掛け本数の影響
ふきん棒の本数 | SWR(21.400MHz) |
0 | 3.8 |
1 | 2.5 |
2 | 1.5 |
3 | 1.1 |
この帯域の広さによって,アンテナに雨滴が付着した場合の同調周波数の
100KHz程度のずれ,使用周波数による同調点の変更なども少なくなり,トラ
ンシーバと接続しただけで,いつでも, 使える状態となりました。
この“ふきん掛けアンテナ”の受信感度は,広帯域化によって,特に低下
していないようです。これで,空中状態がよいときには,フランス,イタリア
などの欧州局とSSTV又はSSBで交信できています(交信記録参照)。出力500W
で送信すると,短縮コイルの下部(ステンレス芯部)に発熱を観察できます
が,絶縁破壊を心配するほどの温度上昇ではありません。
風圧及び外観を考慮すると,直径600mmの円盤を取付ける勇気はでませんが,
300mmの金属棒3本なら安心して,設置できます。
4.Structure and dimension(構造及び各部寸法)
この21MHz“ふきん掛けアンテナ"は,通常のGPアンテナの垂直底部に
220mm長さの短縮コイル(28.5T)があり,垂直中間に3本の300mm棒(冠と呼ぶ)
が120度の角度ごとに取付けてあるという構造をしています。
試作例の寸法は,次のとおりです。
- )垂直部全長(a) = 1,625mm [(b)+(c)]
- )頂部から冠までの長さ(b) = 850mm [(a)-(c)]
- )冠から底部までの長さ(c) = 775mm [(e)+(f)+(h)]
- )冠(ふきん掛け)の1本の長さ(d) = 300mm
- )冠からコイル上端までの長さ(e) = 490mm
- )コイル巻線部の長さ(f) = 220mm[(g)を含む]
- )コイル巻線部のステンレス管との重複の長さ(g) = 70mm
- )コイル底部から垂直底部までの長さ(h) = 65mm
これらの寸法は,頂部から冠までの長さ(b)は,21MHz最下周波数でSWRが低く
なるように調整します。
冠の取付けは,下の写真のように,垂直部の太い部分を挟んで蝶ナットによ
って締付けます(冠部拡大写真参照)。
部品は,(株)田窪工業所,”水切棚用ふきん掛”,三本掛,型番PPR3です。
製造所の所在地は,JP799-1392, 愛媛県東与市北上962番7です。
購入価格は,JPY550でした。
なお,私の設置状態では,無線機近くから30mm幅の網導線によって鉄骨構造
建物のアルミニューム製の窓枠へ接地しているので,このアンテナの水平素子
(カウンタポイズ)は,働いていません(電流が流れていないようです)。
このふきん掛けの留金は,屋外での強風に耐えるようには設計されていません
から,安全のために,太い銅線などの支えをアンテナ垂直部に1回以上巻き付けて,
取付け部を補強してください(実際に,強風時に外れかけました。)。
短縮コイルと垂直素子との接合は,水道用ゴム管又はガス管を接続するとき
に使う厚目の自由寸法バンド(ホースバンド)で固定しています(底部写真参照)。
アンテナ素子の取付けは,6角ボルトを蝶ボルトに変更し,工具なしでも取外し
できるようにしました。基部の自在バンドは,内蔵コンデンサを除くために,
二つ割りにした基部の補強のためです。その上方の自在バンドは,短縮コイル
下端を垂直の放射器(ラジエータ)へ接続するためです。後者は,短縮コイルを
巻き直さなければ不要です。
更に,設置後1年を経過した2001年9月,台風11号及び15号の神奈川県への来襲時の安全の
ために撤去し,錆の具合及び補強の可能部分を点検し,根元の蝶ネジ2本をステンレス
の蝶ビス(5mmx10mm)に替へ,ふきん掛けの保持に30mmx70mmの帯を自作して,
クリップの周囲を覆いました。ふきん掛けの中心部のネジも4mmx40mm
のステンレス製に,更にクリップの締付けビスも穴を拡大して,5mmx50mmのステンレスの
ビスと蝶ナットに変えました。これらの補強で,耐候性の向上及び強度の増大を図り
ました。
5.Principle(原理)
“定在波励振”のGPアンテナが,“進行波励振”の“ふきん掛けアンテナ”
になるためには,次の要件があると推察されます。
- 給電点からアンテナ側を見て,50オームである。
- 垂直先端の開放端からの反射波を,途中で阻止(打消す)仕掛が
ある(“ふきん掛け”がその役をしている。)。
この“進行波励振”動作のアンテナは,次の特徴があります。
(出典:別冊CQ Ham radio,“バーチカルアンテナ”,1994年/3月,pp.79)
- 打上げ角が(GPに比べて)低くなる。
- バンド幅が同調周波数の上に8倍から10倍の広さになる。
このアンテナの原理は,約60年前にKandoianが発明したとされています。
したがって,この“ふきん掛けアンテナ”は,“カンドイアン型アンテナ”
の変形の一つです。
6.Working Examples(運用実績)
この改造母体にしたアンテナ(L-15)は,サイクル22の頃,CW/SSB 50W運用
で100エンテイテイ強と交信した実績がありますが,感度及び飛びともそれと
同等の感じがします。ちなみに,改造後のDX交信を次の表2.に披露します。
ただし,空中状態の変動,相手局側の受信力(耳)のよさなどの影響の方がアンテナ
の効果よりも大きいので,参考に止めてください。日本時間の深夜の交信は,サイクル
23の大オープン時のものです。
CWは,ITUコンテストのもので,実RSTは599でなく519から539程度でした。
空中状態がよく,相手局が運用していて,糞つまり(パイルアップ)状態でなければ,
7大陸との交信が可能です。
表2. DX交信記録見本(21MHz)
Time[UTC] | Stations | RST/RSV | Mode | Notes |
---|
18 May 1999, 11:33Z | FR5AB | 595/555 | SSTV | Reunion Is.,France, my 500W |
12 June 1999, 16:18Z | G3NSY | 51/52 | SSB | Shrewsbury, UK, my 400W |
26 June 1999, 17:59Z | IK2QEI | 58/59 | SSB | Milan, Italy, my 300W |
06 July 1999, 13:32Z | BV4SD | 595/595 | SSTV | Taichung, Taiwan,my 300W |
10 July 1999, 23:07Z | W6KP | 599/599 | CW | CA, USA, my 400W |
10 July 1999, 23:11Z | F6SKA | 599/599 | CW | France, my 400W |
10 July 1999, 23:15Z | 9V9HQ | 599/599 | CW | Singapore, my 400W |
16 July 1999, 14:53Z | A41MC | 52/55 | SSB | Muscat, Oman, my 400W |
6.Summary(まとめ)
この“ふきん掛けアンテナ”は,短縮垂直アンテナですから多素子ビームアンテナとは
段違いの弱さ(エンテイテイ数で3分の1程度と交信可能)ですが,設置場所に制約のある市
街地で,それなりに楽しめるアンテナです。
7MHz, 14MHzなど21MHzより低い周波数のL型GPをお持ちの方は,是非,それらのバンド
でも長い冠(棒)を取付けて試行してみてください。