・・・ 赤っ面(あかっつら) 悪婆(あくば) 浅葱幕(あさぎまく) 荒事(あらごと)
・・・ 色悪(いろあく) 色敵(いろがたき) 居所(いどころ)
・・・ 馬の脚(うまのあし)
・・・ 江戸三座(えどさんざ) 絵面(えめん)
・・・ 大部屋(おおべや) 大向う(おおむこう) 思い入れ(おもいいれ) 女形(おんながた)

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赤っ面 ・・・ 歌舞伎の敵役(かたきやく)の通称。 大物の悪人ではなく、ちょっと軽薄な人物を表現する
時に、顔を赤く塗ることから言われるようになった。
悪婆 ・・・ 悪婆といっても中年近くの女性で、悪人というより男まさりの鉄火肌の姉御という感じの役。
眉を剃り落とし、「馬の尻尾」と称される下げ髪で浴衣姿というのが典型的な格好。
浅葱幕 ・・・ 薄い水色(浅葱色)の幕で、開演時に開く幕(緞帳)や定式幕(「さ〜そ」ページで説明)の
奥に吊ってあり、柝の音を合図に一瞬で落としてその場面を強調する効果がある。
また、浅葱幕を道具にかぶせて(「振りかぶせる」という)その場から消す時にも使われる。
荒事 ・・・ 初代市川団十郎が考案した、江戸歌舞伎独特のもの。隈取(「か〜こ」ページで説明)とい
う独特の化粧法で、人間離れした力強さ、若さ、勇猛果敢な様などを表現した。
「子供の心で演じる」と言われるように、純粋な心の持ち主という設定の役で、歌舞伎十八
番(「か〜こ」ページで説明)の「暫」に登場する鎌倉権五郎景政や、「矢の根」の曽我五郎
時致はその代表的な役。
色悪 ・・・ 二枚目の悪役で、色気がある役どころ。 「四谷怪談」の田宮伊右衛門などが代表的。
色敵 ・・・ 色気のある悪役だが、色悪ほど二枚目ではない。
居所 ・・・ それぞれの役によって舞台上で居る位置が決まっているのは歌舞伎独特のものである。
台本にも細かいト書きはなく、「よろしく決まって・・・」などとなっているが、歌舞伎俳優は
自分の役によってどこに位置すればよいかわかっているので、見た目に美しい立ち位置
に立てる。立役(善人の男性役)は舞台中央に近い位置、女形は立役よりも下がった位
置、など決まりがあり、その中でも姫、女房、娘など役柄によって細かい位置が決まって
いる。
また、主役が台詞を言っている間は、脇役は目を伏せ芝居をせず(いずれも主役の邪魔を
しないため)主役を引き立てるといった行儀も心得ていなくてはならない。
馬の脚 ・・・ 歌舞伎では動物の出てくる芝居もたくさんあって、その中でも馬は特に多く使われる。
馬は前足と頭担当の人と、後ろ足担当の二人が中に入って動かしている。胴体と頭だけが
作り物で、足は中に入った人の足そのまま(胴体と同じ色にして、ひづめを描いた股引をは
く)が胴体下に開いた穴から出ている。 中に入るのは役者だが、馬に乗る役者の体重と
馬そのものの重さ、また衣装の重さなどもかかるのでそうとうな重労働になるし、意気があ
わなくては芝居にならないので出来る役者は限られている。その人達には「飼馬料」という
特別手当が出される。 一般的に「三階さん」と呼ばれる下回りの役者がやるので、そうい
う役者達の総称として「馬の足」といったりもされた。
江戸三座 ・・・ 中村座・市村座・森田座の三座を言う。 江戸時代には芝居小屋を勝手に建てることは許さ
れず、幕府の許可を得たものしか認められなかった。 本来は山村座というのもあったのだ
が、「絵島生島事件」(大奥の奥女中絵島が、増上寺に代参の帰りに山村座に寄って、生
島新五郎という役者と遊興にふけったことが露見して、絵島は信州高遠へ配流、生島新五
郎は三宅島に遠島になった。この事件で山村座は廃絶になった。)で取り潰しになり、江戸
時代が終わるまで三座のまま続いた。
絵面 ・・・ 芝居の中で役者が決まりのポーズで静止し、まるで一幅の絵のように見えることからこう呼
ばれた。
大部屋 ・・・ 江戸時代の楽屋は立役は三階、女形は中二階と決まっていた。三階は一番奥が座頭(ざ
がしら)の部屋、その両脇が座頭に次ぐ役者達の個室、そして中央の空間が個室を持てな
い下廻りの役者達の居場所だった。 これに由来してそこにいる役者達のことを「大部屋」
とか「三階」とか言うようになった。
大向う ・・・ 劇場の客席で向桟敷(最上階の後方)部分を大向うと呼ぶ。昔は立ち見席だった。そこから
ひいきの役者に掛け声をかけることを言うようになった。 現在は専門集団とでもいう団体が
あり、そこに所属している人達がかけることが多い。
思い入れ ・・・ せりふの合間に、何かを思いついたり、考えたりという仕草をすることを言う。
女形 ・・・ 歌舞伎俳優は男性だけなので、女性の役を演じる俳優を女形と呼ぶ。単に女性の模倣を
するのではなく、仕草、姿勢などいろいろの要素を盛り込んで実際の女性より「女」らしく見
せるのは世界にも歌舞伎だけしかない。(京劇も何十年か前までは女形専門の俳優がい
たが今はいなくなった。)
実際、重い衣装や鬘をつけてしなやかに動くのは相当な体力がいるし、常に肩を落とし肩
甲骨をつけるような体制で、膝と膝を離さず舞台を勤めるのは体にかなりの負担をかける
が、それが美しさをかもし出している。
元禄時代に名女形といわれた芳沢あやめ(芸談集「あやめ草」も残している)、霧波千寿
などが出て女形の芸が完成したと言われている。