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型 |
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代々その家に伝わる演技・演出。音羽屋の型とか成田屋の型とか言う。 ある役者
が行った演技・演出が優れたものだったり、人気を博したりすると、その演じ方が型
となって継承されて行く。
明治時代の名優、五代目尾上菊五郎と九代目市川団十郎という二大俳優によって
それまでさまざまあった型が整理され、その他の型はなかなか演じられなくなって
来ている。 |
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活歴 |
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徳川幕府の崩壊後、明治政府の意向で江戸そのものの芝居を上演することが禁止
されたため、別の時代の出来事として上演された。(例えば赤穂浪士の討ち入りま
でを描いた「忠臣蔵」は元禄期の出来事だが、それを鎌倉時代の出来事として上演
した等) しかしその歌舞伎独特の荒唐無稽さが、明治期のリアリズム志向の中で
古いと思われ、活きた歴史劇を作ろうとした九代目団十郎により「活歴」(仮名垣魯
文が命名)が創作上演された。 だが現在上演されるのはそのうちの数作にしか
過ぎない。 |
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歌舞伎十八番 |
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市川団十郎家に伝わる歌舞伎18作を言う。七代目団十郎によって制定された。
「外郎売」(ういろううり)、「嫐」(うわなり)、「押戻」(おしもどし)、「景清」(かげきよ)
「鎌髭」(かまひげ)、「関羽」(かんう)、「勧進帳」(かんじんちょう)、「毛抜」(けぬ
き)、「解脱」(げだつ)、「鞘当」(さやあて)、「蛇柳」(じゃやなぎ)、「暫」(しばらく)
「助六」(すけろく)、「象引」(ぞうひき)、「鳴神」(なるかみ)、「不動」(ふどう)、「不
破」(ふわ)、「矢の根」(やのね)。
ほとんど上演されないものもあり、現在でもよく上演されるのは、「勧進帳」、「毛抜」
「暫」、「助六」、「鳴神」、「矢の根」あたり。 |
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勘亭流 |
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歌舞伎独特の書体で、絵看板や番付などに使われる。 御家流という江戸時代に
一般的だった流派から派生したもので、ほとんど余白のないくらい太くて丸みを帯
びた書体。はねを内側に入れるという特徴があるがこれは「お客が内に入る」とい
う願いを込めたものであると言われる。 |
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柝 |
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拍子木のことで、開幕や閉幕時をはじめとして種々の知らせに用いられる。
俳優全員が到着したことを知らせる「着到」という鳴り物の最後に打つ「着到止め」、
開幕15分前を知らせる「二丁」(チョンチョンと二回打つのでこう呼ばれる)
開幕を知らせる「直し」、幕が開く間に打つ「きざみ」(細かく打ち込んでいく)、幕が
開き終わると「止め柝」(チョンと1回打つ)で芝居が始まる。
芝居のあいだでも舞台転換や鳴り物の合図に打たれる。
閉幕時も俳優のせりふに意気を合わせて柝が打たれる。 |
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生世話 |
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歌舞伎の芝居は大まかに分けて時代物と世話物がある。時代物は武家社会を題
材にした芝居、世話物は町人を題材にした芝居である。 その世話物の中でも特
に写実的なものを生世話という。 |
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義太夫狂言 |
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丸本歌舞伎とか竹本劇とも言われる。 人形浄瑠璃として書かれたものを歌舞伎
にもってきた作品をこう呼ぶ。 台詞や動きを三味線に合わせ、地の文(台詞以外
の説明部分)は義太夫の太夫が語る(謡うとは言わない)のは人形浄瑠璃(文楽)
の特徴を残している。 |
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清元 |
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豊後浄瑠璃から派生したもので、義太夫三味線が太棹と呼ばれる重厚な音を出し
太夫が力強く語るのに対して、繊細な音を出す細棹の三味線で、男性とは思えな
いほどの高音でうたわれる。 浄瑠璃ではあっても語るというより、BGM的雰囲気
が濃い、情緒的なものであるため、謡うという感じがする。
歌舞伎でもっともよく使われている。同じ豊後浄瑠璃から派生した常磐津に比べて
演者の自由に演奏できるというのも、使われる理由の一つと言えるだろう。
初めて聞く人は常磐津と清元を見分けるのに、演者の前にある楽譜(五線符では
ない)を置く台が、赤くてタコの足のように曲がっているものが常磐津、黒くてまっ
すぐの1本足の台が清元なので、そこを見るとよいだろう。 |
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くどき |
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女形がその役で心の内を縷縷述べる場面のこと。
義太夫に合わせて台詞をいうことが多い(「絵本太功記十段目」(太十とも言う)の
操、「熊谷陣屋」の相模、「本朝廿四孝」の八重垣姫、「仮名手本忠臣蔵」のお軽
「艶容女舞衣」(酒屋とも言う)のお園など)が、所作事(舞踊)でも長唄「道成寺」や
清元「三千歳」、常磐津「将門」などの曲のなかばにもある。 |
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隈取 |
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時代物の立役がやる役の中で顔の血管や筋肉を誇張するように筋を描いた化粧
方法で、歌舞伎独特のもの。
初代市川団十郎が考案し、二代目が成立させたと言われている。
隈取にはいろいろの種類があるが、色で言うと赤は英雄的な若者、青は公家悪と
も言い、国家転覆を狙う邪悪な人物、茶色や黒は妖怪変化や悪霊を表している。
筋の描き方は数多いが、代表的なものとして筋隈・一本隈・むきみ隈・ざれ隈(猿
隈・蟹隈など)・公家荒れ・土蜘蛛などがある。
筋隈・・・英雄的な隈で、白地に赤で筋を取る。 血管・筋肉の流れにそって額の
両脇から頬にかけて、眉間から額にかけて、鼻から頬にかけて、口元、
顎などに筋を描いていく。 力強さを強調するもので「暫」の鎌倉権五郎
景政、「矢の根」の曽我五郎時致、「車引」の梅王丸、「道成寺」の押戻し
などが代表的なもの。
一本隈・・・筋隈の筋が少ないもので、すっきりした印象を与える。
「国性爺合戦」の楼門の場面での国性爺などが代表的。
むきみ隈・・・目頭と目尻を結んだ筋が眉まで延びている隈。貝の剥き身のように
見えるのでこう呼ばれるようになった。
力強さの中に優しさのある若々しい隈で、「助六」の助六、「寿曽我
対面」の曽我五郎時致などが代表的。
ざれ隈(戯隈)・・・おどけた感じの隈で、三枚目役が用いる。 猿のように見える
猿隈(「寿曽我対面」の朝比奈)、蟹のような感じの蟹隈、鯰隈
などが代表的。猿隈の変形で「御所桜堀川夜討」(通称「弁慶
上使」「御所三」)の弁慶がある。
公家荒れ・・・藍色で筋を取る隈。大悪人の公家や般若などに用いられる。代表的
なものでは「暫」の受け、「船弁慶」の平知盛、「妹背山婦女庭訓」の
蘇我入鹿、「道成寺」の後ジテなどがある。
土蜘蛛・・・妖怪変化の隈の代表的なもので、茶色を基調とした凄みのある隈。
「土蜘蛛」の蜘蛛の精、「紅葉狩」「戻橋」「黒塚」の鬼女などが代表的。
なお、隈取は「描く」と言わず「隈をとる」という言い方をする。 |
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黒衣 |
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歌舞伎では黒衣(くろこと読む人が多いが、くろごが正しい)は見えないものである
という約束事がある。
黒の木綿の詰袖にたっつけ袴、黒い頭巾と全身黒ずくめで顔も見えなくしている。
(顔の部分は紗で出来ていて着ている方は視界が利くようになっている)
舞台上でいろいろな仕事をするが、出演俳優の弟子が黒衣となってその俳優の
世話(小道具の出し入れ、衣装の着替えなどさまざまな用事がある)をすることが
多い。これは意気が合わないと出来ない仕事だからである。その他にプロンプター
(台詞を忘れた俳優に陰から教える)役も黒衣の仕事だがこれは狂言方(狂言作
者の下で書き抜き(その俳優の台詞だけを抜き出したもの)を作ったり、柝を打った
りする)の仕事である。
黒衣のほかに、雪の場面では全身白ずくめ、波の場面では全身青にしたものもあ
る。(雪後見、波後見という呼び方をする) |
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ケレン |
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「外連」と書くこともある。見た目の派手さ、奇抜さを狙った演技・演出を侮蔑的にこ
う呼んだ。 いわゆる早変わりとか宙乗りとか仕掛け物などを指す。
江戸中期以降、ケレンは中央の歌舞伎から排除される傾向にあり、明治期に入る
と歌舞伎は高尚なものにされて更に邪道呼ばわりをされていたが、昭和40年代に
入って三代目市川猿之助が復活し、人気を博している。 |
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芸風 |
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役者が醸し出す芸の雰囲気とでもいうようなもので、一人一人芸風があるが、その
中で人気のある役者、芸の巧みな役者の芸風を別の俳優が真似て演じるようにな
り、後世に伝えられたものもある。
芸風が合う役者同士の舞台は観客も楽しめるが、合わないと台本が面白くても白
けた舞台になったりする。 |
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下座音楽 |
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舞台下手にある黒御簾(くろみす)の内側で(客席から中が見えないようになって
いる)演奏される。お囃子(おはやし)ともいう。
幕末以前は上手側の柱の陰にあった。
長唄・三味線・鳴り物(鼓・笛・太鼓などいろいろ)の演奏者が、舞台進行に合わせ
てBGMや効果音としての演奏を行う。
自然現象を音であらわす巧みさは歌舞伎独特のものである。 |
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口上 |
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襲名披露などの口上が有名だが、それ以外でも出演俳優が一同に舞台上に並ん
で座り、客席に向かって口上を述べればすべて口上という。
大名跡の襲名披露や、追善興行などでは一幕「口上」としてとることもあるが、芝居
の途中で進行に関係なく、出演者が素に戻って「舞台半ばではございますが・・・」
といった挨拶で口上を述べ、終わるとまたそのまま芝居に戻ることもあり、また芝居
の幕切れで急に素にもどり、「まず本日はこれぎり」と終了の挨拶を述べることもあ
る。 |
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後見 |
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黒衣と同様、演者の後ろに目立たないように控え、舞台上の用事をする。
黒衣と違って、舞踊などでは素顔で紋付・袴姿で、また様式を重んじる演目では、
「裃(かみしも)後見」と言ってかつらを付け、裃をつけた正装で出る。
これも役者との意気が合わないと出来ないので弟子が勤めることが多い。 |