その14  11.4

久々にお届けします。今回は3日に見たNHKテレビ(総合)からのダイジェストと私の感想です。番組名と概略は以下です。

《心で奏でるメロディー「アイザック・スターンと若者たち」情熱のレッスン》
 「神様」と尊敬を集めるバイオリン奏者アイザック・スターン。その「神様」が高知で5日間にわたって日本、韓国、中国の3組9人の若手奏者、プロの奏者をめざす学生にとことん厳しく、かつ心優しいレッスンを行った記録である。
 ピアノ、バイオリン、チェロの3重奏(誰の何という曲かは音楽に疎い小生はすぐに忘れたけれてしまいました)を指導するのです。日本組は海外のコンクールでも高い評価を受けて既にプロ奏者として活躍している若手、中国は国際的にはまだまだの3人、韓国は最も若い19歳の学生トリオ(いずれも女性)。
 番組は、曲の理解や技術面で未熟な韓国、中国グループを中心に進む。「神様」の前で緊張の極にあり、やや自信なげの中国組、国内のコンクールの上位を総なめにし、将来を期待さているものの少し天狗気味のところもあり、まだ井の中の蛙の域にある韓国組。スターンは、集中的にこの2組を攻める。概略ながら曰く、「作曲者がこの音符にどんな思いを込めているのか、あなたの勝手な理解で弾くな」「あなたたちは、この作曲者の伝記を読みましたか。読むようにと教えられなかったのですか。どんな思いで作曲したか分かっていますか」など、全く遠慮などありません。
 しかも、納得いかない時は頭を抱えたり、机を叩いての指導です。楽譜にこだわる中国組には、楽譜を奪ってやらせるのです。「間違ってもいいのです。部分的な問題ではなく、どんな音楽を構成するかです」
 エリートとして、これまでそうした厳しい指摘をされたことのない韓国組は半分ふてくされてしまい、初日のレッスン後、翌日の練習をしないで町に出掛けるのです。帰って来たのはレッスン室の閉まる少し前でした。
 その結果は当然、翌日に現れます。スターンは見逃さず「あなた方は、どのくらい練習しましたか」。韓国のリーダー格のチェロ学生は「時間は分かりませんが……」と言葉を濁す。
 ここでスターンは「ここの主人公は私ではなく、あなた方なのですよ」「わたしにも大きな壁がありました。その壁を超えられたのはカザルス(スペインのチェロ奏者・作曲家・指揮者)のお陰です。壁の向こうには素晴らしい世界がありました」など若者たちの心に切り込み、熱く語りかけるのです。
 翌日の韓国組の変化は、素人の私にも分かる程でした。しかし、彼らは全部を弾けないのです。とことん話し合いながら練習したのでしょう。全部を弾き終わるまでの練習時間はなかったと告白するのです。他の組も大きな変化、成長を見せて5日間のレッスンは終わります。最終日の演奏会を待たずにスターンはニューヨークに向かうのですが、3組の演奏会での演奏ぶりはいうまでもありません。表情まで違っていました。

 溢れるほどの才能に恵まれた、まさに「名馬と伯楽」のドラマです。しかし、私たち「普通の人」にも大いに勉強と励みになるところのある番組のように感じました。とにかく基本をしっかり身につけると同時に、目的意識、目標を持って進むことが大事なのだということ、そうすれば大抵の課題、困難は乗り越えられるということだと思います。

 

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