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町の合併を契機に光ファイバー網と町民ポータルサイトを整備 .NET Framework
を基盤とするシステムで行政サービスを提供
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少子高齢化社会の到来、厳しい経済環境などによって、自治体の合併が検討されることが多くなってきています。
2003 年 4 月、瀬戸内海に位置する 1 つの島の 3 町が合併、1
つの町として生まれ変わりました。広島県大崎上島町は、いわゆる「平成の大合併」によって、大崎町、東野町と木江町が合併して誕生した新しい町です。3
町の合併を契機として、島内には光ファイバーの高速回線網が整備され、町の活性化を牽引する情報ポータルサイトも構築されました。町民への情報提供の役割はもちろん、町民同士のコミュニケーション
インフラとしても活用されています。
<導入の背景>
広島県の大崎上島町は、旧 3 町
(大崎町、東野町および木江町) が 2003 年 4 月 1 日に合併、広島県の「平成の新設合併第 1
号」として誕生した新しい町です。
「2003 年 4 月 1
日に、新しい大崎上島町としてスタートを切りました。合併しても人口 1 万人程度の小さな町です。1 つの島の中に小さな町が 3
つあるという意識よりも、3
町の『町民』が同じ『島民』というスタンスになれるような合併になればと考えています」と、大崎上島町企画課主幹の亀山英治氏は話します。
広島県本土から約 6km 離れた瀬戸内海に位置する、総面積 43.24 平方 km の穏やかなこの島の旧 3
町は、みかんの生産と造船を中心として、安定した自治体経営を営んできました。しかし近年、それらの産業は、構造不況などによって徐々に低迷を余儀なくされ、島外への人口流出も進みつつあります。
そういった状況を改善するために、島内の活性化を図り、島のセールスポイントを島外にアピールする手段として、大崎上島町が選択したのは、光ファイバーの全面敷設を基盤とした、IT
によるコミュニケーションインフラの整備でした。
大崎上島町企画課主任の有田芳徳氏は、次のように説明します。「島の課題は、大きく
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つ挙げられると考えています。それは、交通、医療、そして産業です。たとえば、本土への橋を架ける、総合病院を建設する、企業を誘致するといったことも検討はできますが、一朝一夕でかなう話ではありません。そこで、すべてを可能にする方法を模索した結果が、島外との交流と、島内での情報共有、そして、そのためのコミュニケーションインフラの整備だったのです」。
光ファイバーは、株式会社エネルギア・コミュニケーションズの敷設した回線を通って、本州から大崎上島町に接続されています。ファイバー網は島内を網羅し、島の中心である大崎上島町役場と各学校、施設などが相互に結ばれ、町民は最大
100Mbps
の高速インターネット接続サービスを利用できます。有田氏は、「大崎上島町が事業主体となり、新しい町の発足を前から利用者の募集を開始しましたが、既に
500 件以上の申し込みを受けています」と話します。
大崎上島には、みかんの他にもブルーベリーや新鮮な魚介類といった特産品が多くあります。ファイバー網を活用した
E- コマース環境の整備によって、大崎上島町の特産品をブランドとして育てていくことも可能になります。
「今の大崎上島町には、呉市や東広島市にフェリーで通うサラリーマンも多くいますが、それは農業や漁業だけでは厳しい、という現実の現われともいえます。Web
サイトを使って産地直送の仕組みをつくり、全国に向けて島の特産品販売をビジネスとして育てていきたいですね」と、有田氏は語ります。
<導入の経緯>
社会福祉法人 大崎町社会福祉協議会 事務局長(旧職) 松浦 真英
氏
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| ファイバー網の整備とともに、大崎上島町では、町のポータルサイトを用意、施設予約サービス、生涯学習情報提供サービス、学校間情報連携サービス、観光、特産品情報提供サービスなど、さまざまな情報発信を計画しています。
社会福祉法人大崎上島町社会福祉協議会が運営する「スマイル
21」は、「ちょっとしたお手伝い」のできる人が、協力者として社会福祉協議会へ自らを登録しておくと、利用者を紹介される仕組みです。協力者は、利用者を福祉、介護の面を中心にサポートしていきます。
この町の福祉介護システムは、海外から視察団が訪れることもあるほど先進的な事例です。このサービスへの登録は、これまではがきを用いて行われていましたが、町のポータルサイト整備を機に、インターネットからの登録も可能になりました。さらに、パソコンからだけでなく、携帯電話による登録も可能です。
スマイル 21
は、「サポートを必要としている利用者の話し相手になる」といった簡単なことからでも参加できるようになっています。少しでも利用拡大の可能性を広げられるよう、誰もが使用している携帯電話にも、対応範囲が広げられました。つまり、町民の立ち話で話題になったような場合でも、その場ですぐに登録ができるのです。また、町民同士のコミュニケーションや学習、交流を支援するために、「大崎上島元気塾」という
Web
サイト上の企画も用意されています。この企画では、町民から自薦、他薦で講師役を募り、様々なテーマでオンライン講座を開いていきます。元気塾を町民相互の交流のきっかけとし、大崎上島町がひとつの町だという意識を、町民同士で高めていく狙いがあります。
これらの情報発信はいずれも、一方通行の情報伝達ではなく、町民相互のコミュニケーション手段となるように注意が払われていることが特徴といえるでしょう。
スマイル 21
の運営母体である、旧大崎町社会福祉協議会事務局長の松浦真英氏は、「システムを無機質なものにせず、肌と肌が触れ合ったときに生まれる心の交流を一歩進めたような、血の通った仕組みが必要だと考えました。人が町をつくり、一方で町が人をつくります。人は、他人と積極的に関わることで、相手の喜びを自分の喜びと感じられるようになるのです」と話します。スマイル
21
は、旧大崎町が行っていた試みでしたが、合併を機にその枠を拡大し、新しい大崎上島町の全島に助け合いの輪を広げることで、「一島一心」の精神を培っていきたい考えです。
<システムの概要>
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ユニアデックス株式会社 中国営業所IT営業グループ 部長 松浦 義正
氏
| こうした期待を受けて進んでいる光ファイバーを中心とした各プロジェクトで、システムの開発と構築を担当したのが、広島ソフト・エンジニアリング株式会社
(以下、広島ソフト) です。
同社で E ビジネス事業部部長を務めた松浦義正氏
(グループ会社再編成により現在は、ユニアデックス株式会社中国営業所 IT 営業グループ部長)
は、「合併を機に、町は変わろうとしています。システムの開発にあたっては、今後どのような方向へ進んでいっても対応できるような、カスタマイズ性の高さも採用のポイントとなりました。もちろん、低コストで、かつ全員が納得できるシステムでなければなりません。そういった要件を満たせるプラットフォームとして選択したのが
.NET 環境だったのです」と話します。
広島ソフトは、自治体が蓄積したコンテンツ群をデータソースとして、住民向けに情報提供や資料閲覧、情報収集、施設予約などの各サービスを提供するソフトウェア「S-mile
Web Board」を開発しています。S-mile Web Board は、ASP 、ASP.NET
のコンポーネント群で、Microsoft Visual Studio .NET
で開発されています。大崎上島町では、S-mile Web Board の基本機能とともに、スマイル 21
や元気塾などの独自のニーズを、Visual Studio .NET によって容易に追加することができました。
また .NET Framework と ASP.NET を用いることで、Web
ページのデザインとデータ処理用のプログラムを分離させて開発できますが、このシステムでは .NET Framework
の拡張ツールである ASP.NET Mobile Control
も活用されています。このツールは、通常のパソコン用に作成した Web アプリケーションを、携帯電話やその他のモバイル
デバイスの Web 表示仕様に合わせた形で、実行できるようにするものです。つまり、あらかじめ .NET Framework
環境を採用していれば、システムを新たに携帯電話に対応させる必要があっても、携帯電話での画面表示用デザインを考慮するだけで済むのです。ユニアデックスの松浦氏は、「私たちは、3
町の業務調整のコンサルティングも手掛けてきました。合併とシステムのそれぞれに深く関わったのですが、その中で最も印象的だったプロジェクトがスマイル
21
でした。非常に意義のある取り組みと考えており、構築がスムーズにいく最良の手段を選択できたと考えています」と話しています。
ASP .NET Mobile Control 開発画面 (1) [拡大図] |
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ASP .NET Mobile Control 開発画面 (2) [拡大図] |
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ASP .NET Mobile Control 開発画面 (3) [拡大図] |
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ASP .NET Mobile Control 開発画面 (4) [拡大図] |
<今後の展望>
大崎上島町は、2003 年 4 月 1
日に誕生したばかりです。光ファイバーとポータルサイトが整備されてからはまだ日が浅いですが、積極的な活用が予定されています。
企画課の亀山氏は、「行政サービスのソフトはできました。次は、それを使いこなせるかどうかです。町民に対する
IT
講習会を積極的に実施し、町民のリテラシー向上に努めていきます。『小さいけれど、あの町はがんばっているね』と言われるような存在になりたいと思っています」と、未来への展望を語ります。
また、大崎上島町のソフトハウスで、パソコン利活用に抵抗のあるお年寄りのために、島内の、国立広島商船高等専門学校「地域交流・共同研究センター」と、扱いやすい接続装置の共同開発を進めている、有限会社シスコムの代表取締役藤原弘三氏は、次のように話します。
「大崎上島町の穏やかな気候、自然環境などには他の何にも変えがたい価値があります。こういった島が持つよさを残しつつ、得意とするところを伸ばしていく必要があると思います。ファイバー網や
Web サイトは、そのきっかけとするには十分でしょう。これだけの環境を持つことができたのですから、地方の小さな自治体の、1
つの地域モデル、自立のあるべき姿を全国へ提示していけるのではないでしょうか」。
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町の合併により、自治体運営のスリム化と求心力の向上が図られました。そして、合併を契機とするさらなる飛躍のカギとして、マイクロソフトのテクノロジは今後も重要な役割を果たしていきます。
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