その六 船堀之景
この地域は、江戸川区の中でも古くから、小松川を挟み農村集落として発展した所で、今の
小松川境川親水公園の一帯に密集していました。また、行徳に至る今井街道があって、沿道には商屋も連ねていました。
昭和30年代(
1955〜64)、今井〜上野間を結ぶ幹線交通として、下町名物のトロリーバスが運行されていました。しかし、その集落周辺は、冬になっても水が引かない湿田地帯だったので泥田で蓮根栽培が行われていました。そのような地質のため、高層の建築物は最近までありませんでした。
やがて荒川の堤防や河川敷の整備と排水機場の施設が完成すると、水害の心配がなくなり、泥田は畑になり、さらに住宅へと転換され工業団地ができました。
今では、すっかり都市化していますが、一部には、小松菜などの野菜の栽培や、シクラメンの栽培をする園芸農家が点在しています。
都心の大消費地を近くに控えて輸送コストも安く済み、なによりも新鮮なものが出荷できるのが生産者にとって有利です。
また、染物工場も数件見られますが、この地域を流れている水流を利用して行われてきた地場産業のひとつです。
一之江には養魚場があって鑑賞することもできます。
夏の風物詩「金魚売り」のふるさとはこの地域です。