その二十二 領家之景

芝川を挟んで大きな工場が群をなすようにして建ち並んでいます。このあたりは、川口市内でもっとも多くの工場が集まっている工業地帯です。製鉄所の屋根からは終日白煙が立ち込めていて、荒川堤を歩いていると時々轟音が響いてきて工場の熱気が伝わってきます。芝川を境に北側は住宅地になっています。足立方面に抜ける間道をぬっていくと、所々に深い森が見られます。その森の中には寺や神社がひっそりと建っています。また、マンションなども建ち、新興住宅地が広がっています。近年は、公共施設の市民ホールができて、同好グループや市民団体などに、新しく移り住んできた人たちが加わって、ママさんコーラスや児童劇団の演劇などが上演され、新しい地域文化が生まれています。正月には、川口七福神めぐりの人たちが、布袋尊がまつられている正覚寺を訪れてにぎわいます。この他にも、六地蔵のある随泉寺や、光音寺、実相寺など、元郷から領家にかけてお寺が続いていて、町の古い歴史の跡を刻み込んでいます。また、稲荷神社の祭礼の日には、領家特有の伝統的な囃子神楽があって、祭り見物に楽しみを加えてくれます。こうした多彩な伝統を受け継ぎ、この地域一帯の生活文化は独自性を保ち続けています。