その二十四 川口之景

鋳物の町・川口は、町のあきこちにキューポラの突き出た鋳物工場が今でも操業を続けています。JR京浜東北線の車窓からもそうした光景が見られます。地場産業の鋳物は、かつて荒川の川底でとれる砂が鋳物の精製に適しているということで、この産業が発展してきた歴史があります。この町は、吉永小百合主演の映画「キューポラのある町」(原作・早舟ちよ、1962年・日活、浦山桐郎監督作品)として全国に知れわたりました。今では工場から出る煤煙が公害条例の規制の対象となり、鋳物の需要の後退も重なって、その姿は数えるほどになりました。跡地には、東京の隣という事もあって、超高層マンションが出現して、景観を一変させています。荒川の堤に立って川口の町を眺めると、まるで羊羹を立てたような建物ばかりが目につくようになり、キューポラのイメージは外観からは払拭されてしまいました。しかし、駅周辺を歩くと、多機能歩道橋のベストインテリアンデッキや、商店街のアーチやレリーフ、街灯、用水に架かる橋の欄干などには、地場産業の鋳物のデザインが施されて伝統技術を誇っています。川口名物「たたら祭り」には、民謡流し踊り、サンバカーニバルなどの多彩なイベントが繰り広げられています。