《北京之春》第35 #06 1996 4月号より―                                 

[編者記] 1996226日、チベットの宗教的指導者でありノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ十四世は、
チベット亡命政府の所在地インドのダラムサラにおいて、《北京之春》雑誌社社長 薛偉(シュエ・ウェイ)と会見し、
両者はきわめて親しく友好的な対談を行いました。ここにその録音を整理し、会談の概要を発表するものです。

真の友のように―ダライ・ラマとの対談録


 

 









 

【漢族とチベット族は友であるべきです】

 

  偉 :二年前ワシントンでお目にかかって以来、私は海外で民主化運動に関わって
     いる多くの活動家たちとしばしばチベット問題を討議してきました。チベッ
     ト人民の人権と自由を求める闘いも、ますます国際社会の注意を引いていま
     すね。最近、あなたの自伝を読ませていただきましたが、最後のページで語
     られたお言葉を憶えています:「私はチベット人の友人たちに謝意を表しま
     す。チベット人が受けた苦難に対するあなたがたの共感と支持は私をいたく
     感動させ、たゆむことなく自由と正義のために闘う勇気を私たちに与えてく
     れました。私たちが頼みとするのは武器ではなく、もっと強くて力のある真
     理と決意なのです。私の感謝はすべてのチベット人を代表するものです。ど
     うか、この歴史上において存亡の危機にあるその時、チベットのことを忘れ
     ないでください。」今あなたに申し上げましょう。中国大陸から来た民主運
     動家たちはチベットを忘れません。私たちは苦難を受けたチベットの人々を
     深く心に留め、勝利はいずれあなたがたのものと信じています。本日ここに
     おいて、《北京之春》編集部と我が友人たちを代表し、あなたに敬意と祝福
     を表します。                            

ダライ・ラマ :中国の友人にお会いできてとてもうれしく思っていますよ!歴史的に私たち
     はこのような深い関係をもちました。チベット問題は双方が友人として誠実
     に相対してこそ解決できるものです。もし暴力に訴えるなら根本的な問題を
     解決することはできません。漢族とチベット族は互いに友であるべきです。
     チベット族は漢族の困難と苦しみをもっと思いやらなければなりませんし、
     漢族もチベット族の心の声にもっと耳を傾け、その置かれている立場を思い
     やらなければなりません。互いに助け合い、絶えず交流を深めていくという
     基礎の上に立てば、どんな問題であってもすべて解決できるのです。あなた
     にお会いできてほんとうにうれしい。時間を気になさらないで、何でも思い
     のままにおっしゃってください。                   

薛  偉 :本日は一人の記者としてだけでなく、一人の友人としてあなたに、 そして
     自由を求めて解放のために闘っておられるチベットの戦士の皆さんにお会い
     しに参りました。中国共産党の一党独裁に抵抗する戦線において私たちは共
     に戦う戦友です。 中国共産党政権はチベット人民を抑圧しているだけでな
     く、漢族、その他の少数民族まで圧迫しています。チベット人民が受けてい
     る苦難は、 大陸の他の民族も受けているものです。 しかし現段階におい
     て、チベット人民の苦しみは大陸のその他の民族に比べ甚だしいものがあり
     ます。私たちにはチベット人民の叫びと要求がよくわかります。いつの日か
     漢族とチベット族が兄弟のように仲睦まじくつきあうその時を私たちは待ち
     望んでいます。                           
     そこで、あなたがご存知のチベットの現状と、チベットひいては中国全体の
     前途についての分析と予測をうかがいたいのです。           

ダライ・ラマ :これは大きなテーマですね。いちいち詳しくお話ししていたら時間が足りま
     せん。チベット亡命政府の広報部に資料がありますから、それをお読みにな
     って研究なさるとよろしいでしょう。                 
     一般的に申し上げると、私が最も関心をよせ、また焦慮していることは、 
     チベット固有の宗教と文化のことです。 これらの文化はチベット人に充実
     した精神生活と楽しみをもたらすことができ、 人々の個性もこうした文化
     ゆえに善良でおとなしいのです。しかしながら、現在、 仏教を中心とする
     チベット文化はまさに滅亡の危機に瀕しているのです。         
     もう一つ私が焦慮しているのは教育のことです。 チベットは物資に乏しい
     ところです。この点においてはもう少し発展させなければなんりません。 
     しかし、大切なことはやはり人々の素質を高めること、それには教育水準を
     高めなければならないのです。現在のチベットの教育程度はかなり低いもの
     で、文盲は至る所にいます。 共産党は学校をいくつも建て教育程度はたい
     そう発展したと言っていますが、実際、 考えてみると、その数と質は驚く
     ほどに貧しいものです。特に農牧地区はひどい。 昔のチベットでは学校は
     ごく僅かか或いはほとんどありませんでしたが、 幾千もの寺院があり、 
     それが文盲克服に大きな役割を果たしていました。しかし、共産党の侵攻後
     寺院は消滅し、寺院に代わって文化教育を行う職能機構は設置されませんで
     した。その結果、文盲率は以前より上がったのではないでしょうか?私は、
     現在のいわゆる“教育程度の高揚”に対して疑いをもっているのです。今や
     多くの中国人はチベットへと移り、街々の至る所、 およそ条件のよい地区
     すべてに居住しています。チベット人は、靴造りや縫製というような仕事ま
     でも彼らに奪い取られ困り果てているのです。             
     さらに環境保護の問題、これもまたひどく失望させられるものです。 以前
     から森林伐採の現象は相当ひどかったのですが、 今では“改革開放” の
     スローガンのもとに個人的に大量に森林を伐採する者も多く現われ、 チベ
     ットの自然環境と生態保護に重大な影響を与えています。その上鉱物資源の
     開発です。チベットにはもともと採掘できる百六十数種の鉱物があります。
     比較的先進的な方法を用いれば自然生態に害を及ぼさずにすみますが、しか
     し今のところはそのような方法によってはおらず、 乱開発の現象は非常に
     深刻なもので、チベット全域は甚大な被害を被っています。現実は私がお話
     ししたこれらの状況をはるかに超えており、 まさに心配と焦慮の種なので
     す。私はここで強調しなければなりません。 私の言うところのチベットと
     は、共産党の区分による西藏自治区のみならず、甘粛、雲南、四川のかつて
     チベット三区に属していた地域をも包含するもので、 十の自治州と二つの
     自治県を含んでいます。 これらの伝統的チベット区域は英語で Tibetと呼
     ばれ、六百数万のチベット人民を擁しているのです。その現状を政治用語で
     言うならば、すべて中国の植民地になってしまったということです。中国共
     産党の目的は“掠奪”ただそれだけです。彼らは、チベットに対するきわめ
     て僅かな投資を宣伝することときたら非常に派手にやりますが、チベットか
     ら掠奪していった物については一言も口に出さないのです。政治上、“自治
     州”或いは“自治区”、“自治県”と名付けられた地域があります。何であ
     ろうがお構いなしにすべて“自治”の名を付けていますが、実際のところ、
     どこにチベット人の自治があるというのでしょう?  権限はすべて中国共産
     党が派遣した人の手に握られているのです。胡燿邦はチベットに来たことが
     ありますが、彼が政権を担当していた頃、かつて次のような政策を決めたこ
     とがありました。 −チベット人に真正の権限を与え、彼らを主人公として
     政治に参与させ、自らの郷土を管理させる−と。 胡燿邦が世を去って今に
     至るまで状況は全く正反対です。チベット人民は一切の権限を失いました。
     今やチベット問題は中国政府の国際関係と名誉に大きな困惑と損害をもたら
     し、中国はしばしばこの問題のために引っ込みがつかなくなっています。 
     チベット問題のために六百万香港人に中国の政策に対する不信を生じさせ、
     台湾と大陸の統一もチベット問題ゆえに妨げられています。 未来の中国人
     は、 必ずやチベットの民族文化の滅亡に遺憾と悔恨と傷みを覚えることで
     しょう。ナチス・ドイツのヒトラーのユダヤ人殲滅からすでに五十年が過ぎ
     たとはいえ、人々はいまだにその行いを厳しく非難しています。     
     もしもチベット民族が滅ぼされるようなことがあれば、共産党はそのために
     長いこと汚名を負って世界の人々の譴責を受けることでしょう。今こそチベ
     ット問題の行き詰まりを打開しなければなりません。打開の方法を考え出さ
     なければなりません。 さもなければチベット人も中国人も苦しむことにな
     り、双方にとってなんの益にもならないのです。            
     チベットは歴史的に独立した国家です。 しかし、今チベットが独立すれば
     中国は大きな土地を失うことになり、そのことを中国人に認めさせ同意させ
     ようとするのはかなり難しいことでしょう。チベット人の幸福という点から
     考えて、もし中国人がほんとうにチベット人と互いに助け合い、互いに尊重
     し合い、平等互恵ができるなら、いつの日か、独立するよりも中国人と共同
     生活をするほうがもっと大きな利益をもたらすことができるとチベット人が
     思うことがあるかもしれません。こうしたことはあり得ることなのです。 
     この点を踏まえて、七十年代から、チベット問題に関する解決に対して今ま
     で“中庸の道”を採ってきたのです。 現状は認めないが、チベット独立の
     問題をも一切持ち出さず、チベット人に高度の自治、即ち相互の信頼と互助
     の原則においてチベット人自らにチベットを治めさせる権限を与えるよう主
     張してきました。 この中庸の道に基づけば、現段階のチベット問題は解決
     可能なのであり、双方とも認め受け入れることができると私は深く信じてい
     ます。ここ数年、中国共産党はチベットにおいて非常に強硬で暴虐極まる手
     段を採ってきました。ダライラマといえば、彼らはたちまち反動派の頭目で
     あるなどと言って、ひどく罵ります。 今またパンチェンの問題が出てきて
     いますが、共産党の態度は非常にかたくなで、 チベット人民に対して更に
     人道にもとる行為を為しています。 しかしどのようなことがあっても私は
     中庸の道を採り、相互信頼と相互利益の前提の下に、 チベット問題を話し
     合いを通して解決するという初志に終始変ることはありません。     


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【中庸の道でチベット問題を解決する】

 

  偉 :あなたの掲げる“中庸の道”は現実の大きな難題を解決しています。 海外
     在住の民主化運動活動家や中国人留学生たちにおいて、彼らはチベット人民
     が受けている苦難と人権を勝ち取ろうとする努力、民主を求める闘いに対し
     て非常に同情し支持している人たちですが、しかし大多数の人々はチベット
     の独立に対して疑いをもっているか、 或いは程度の違いこそあれ、反対の
     態度を採っています。このことは決して我々が大方の方向でチベット人民の
     闘いを支持することを妨げるものではありませんが、しかし確かにある程度
     の困惑を引き起こすでしょう。私たちがまず考えなければならないのは統一
     か独立かという問題ではなく、目下のところ当面の急務は努めて中国共産党
     の強権統治を終わらせ、中国の社会制度を変革し、自由と人権、民主と法治
     を実現させなければならないということです。このような前提があって始め
     て、どのような制度と政体を採択するか人民に考えてもらう機会と条件が揃
     うのです。                             
     あなたは度量の大きい方です。海外在住の民主化運動活動家たちの中で、 
     この数年来、チベットの未来を話し合ってきました。《北京之春》の于大海
     、胡平、著名な政治評論家の厳家祺、曹長青、及び”民連”の主席の呉方城
     、“民陣”主席の万潤南、そして“民連陣”主席の徐邦泰といった面々でで
     す。                                
     私は彼らが出した意見から三つの原則をまとめました。 第一は“民主の原
     則”です。すなわち、チベット人民は自らの将来と生活方式を決める権利を
     有し、他の民族がそれにとってかわることはできず、彼らの民族自決の権利
     を認めなければならないということです。第二は“平和の原則”です。それ
     は、統一であれ独立であれいかなる争いをも武力をもって解決するというこ
     とに反対し、武器を持たない人民を決して軍隊を用いて虐殺、弾圧してはな
     らないということです。第三は“移行”の原則です。もし統一か独立かをめ
     ぐって大きな不一致が生じた場合、すぐには解決できません。長期にわたる
     話し合いを通して五年、十年後に、平等、和睦、相互信頼と利益を前提とし
     て、まずチベットに高度の自治を実現します。 つまりあなたのおっしゃる
     “中庸の道”です。人々は比較的長期にわたる理解と交流を通してよき友と
     なり、そこから互いに益を得ることで、統一か独立かの問題はそれほど重要
     でなくなるでしょう。                        
     もちろん、私はあなたよりもさらに強調しますが、 もしこのような長期に
     わたる移行過程の後、チベット人民が依然独立を希望し、 真の兄弟よりも
     よき隣人どうしである方がもっとよいと考えるなら、 チベット人民は人民
     投票によって自らの前途を決定することができ、  中国の民主政府は必ず
     チベット人民の選択を尊重しなければなりません。           
     あなたは先程、もしチベットの民族と文化が滅亡の憂き目に遭えば、以後、
     中国人は悔やむことになるだろうとおっしゃいましたが、私はそのような日
     は絶対に来るはずがないと深く確信しています。中国共産党の統治者集団の
     崩壊は更に目前に迫っているにちがいありません。中国には近い将来、必ず
     や民主政体が出現します。私たちはともにその日をこの眼で見ることができ
     るでしょう。                            

ダライ・ラマ 1994年、香港、台湾の法律専門家と大陸の民主化運動活動家の方々は、アメ
     リカで未来の連邦中国の民主憲法の研究を行われ、憲法草案を制定されたの
     でしたね。チベットの高度の自治権享受も明確に規定されました。    


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【人類社会衆生のために幸福を求める】

 

  偉 :私はニューヨークにあって亡命したチベットの人々のことを知っています。
     私たちはよく一緒にデモ行進や抗議行動、中国共産党に対する示威活動をす
     るのですが、チベット人の独立願望は非常に強く、みな団結し心を一つにし
     ています。こういった執念ともいうべき精神は、中国及び海外の人士たちに
     とても深い印象を与えています。                   

ダライ・ラマ :あなたに一つ寓話をお話しましょう。仏祖 釈迦牟尼がお生まれになって後
     のこと、人相観を得意とするあるバラモンがおりました。彼は、釈迦牟尼が
     将来人類を救済するお方となられるであろうことを観てとったのでしたが、
     しかし彼自身は嘆いたのでした。 彼は言いました:「仏祖はその偉大なる
     事業を成し遂げられるであろう。 だがその時わしはもう死んでしまってお
     る。」 そこで申し上げたいのです。チベットにもこういう可能性があるので
     はないでしょうか? つまり、 将来民主中国が出現するそのほんの少し前
     に、チベットは息絶えてしまっているのでは?             

薛  偉 :そのようなことはあろうはずがありません。私たちは決して嘆いてはならな
     いのです。今やチベット人民は自らの道徳と勇気そして不屈の抵抗の精神を
     もって、すでに国連を含む欧州議会と国際与論の全面的な支持と同情を得て
     います。 相当数の中国大陸の人士たちがチベット人民の苦しみと心の声を
     十分に理解し、中国共産党のチベットにおける行為の真相を見分けて後に皆
     が団結しともに立ち上がる、そんな民主的連邦中国が実現する日も遠からず
     やってくるでしょう。                        
     去年、台湾を訪問した折り、こんな話をしました。 :「大陸に民主なくば
     独立は不可能。大陸が民主化されれば独立する必要性もなくなる」と。  
     その時、民進党の方々が:「大陸に民主なくば統一は不可能。大陸が民主化
     されれば統一の必要性もなくなる。」と反論されました。地球上のすべての
     国々は将来、国家を超えた平等で自由な社会へと向っていくでしょう。もし
     中国に自由で民主的な環境が出現すれば、チベットや台湾が独立への道を選
     ぼうとすることは、客観的に見て歴史の潮流に相反することになるのではな
     いでしょうか?もちろん私は、“人々の幸福”というすべてに勝るこの原則
     を終生変ることなく主張するでしょうが。               

ダライ・ラマ :まさにあなたのおっしゃる通り、チベットの利益も中国が民主へと歩み行く
     過程にかかっています。 中国の民主化運動に対しては、私はいかなる時も
     非常に共感し支持しているのです。私は仏教徒であり、常に人類社会衆生の
     ために幸福を求めなければならないと説いています。 ただ中国が十二億の
     人口を持つというだけでなく、彼らに幸福を得させるために、私は力の限り
     そのために生涯を捧げて尽くしたいと願っているのです。        
     ところであなたにお尋ねしたいのですが、近い将来、中国の前途にどのよう
     な変化と発展があるとお考えでしょうか?               

薛  偉 :それはまさに、私が先ほど活仏にお尋ねした問題ですね。逆に私にお尋ねに
     なるとは。(笑)                          

ダライ・ラマ :チベットの問題についてあなたが私に尋ねられるように、中国の問題につい
     ては私があなたにうかがわなければなりません。(笑)         


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【非暴力を貫く】

 

  偉 :中国とチベットの問題は不可分のものです。結局、現在のところ尚一つの版
     図に属しているわけですから。実は中国においてまさに問題となっているの
     は、チベット問題でも、台湾、香港の問題でもなく中国共産党の問題である
     と私は考えているのです。 もし中共の専制統治が終われば、どんな問題も
     すべてすらすらと解決するでしょう。 中国共産党は禍のもと、中国のガン
     です。                               
     目下、中国においては四種類の政治的な力が働いています。第一は中共統治
     集団の力であり、それはすべての国家機関と富を掌握しています。 第二は
     中国人民の力です。天安門“八九民主化運動”はすでに、時を得てその蓄え
     られた勢いを一気にはき出すという人民の巨大な潜在力を示したのです。 
     第三は台湾の力です。 土地は狭く人口こそ少ないが、 堅実でなかなかの
     やり手です。第四は海外及び香港マカオの中国民主化運動、そしてチベット
     の民主化運動を含む力です。これは国際世論の共感と支持を得て、中国国内
     にもある程度の影響力をもっています。もし中共を除くこれら三種類の力が
     機を得てしっかりと団結するなら、 第一の反動勢力、 即ち中国共産党の
     統治を打ち破ることができるでしょう。しかし惜しいことに、様々な原因に
     よっていまだそこまでには至らず、中共一つが強大であるように見えます。
     幸いなことは中国共産党は一枚岩ではなく、 その内部には闘争、 分裂が
     あり、いずれは瓦解するに違いありません。というのも中国共産党指導者の
     権力というものは、神から授かったものでも君主から賜ったものでもなく、
     いわんや民主選挙によるものではさらさらないからです。 それは暴力を以
     って得た政権であり、“勝てば官軍、負ければ賊軍”という弱肉強食のジャ
     ングルの法則に則り、必然的に奪い合いの四分五裂状態を生み出し、政権は
     始終確固たりえないのです。 ケ小平という偉大な家長が亡くなってから
     は、 江沢民はもはやかつての毛沢東が有していたような絶対権威を手にし
     得ないでしょう。 いわゆるグループのリーダーというのは互いに対抗し合
     っているということなのです。 “樹は静かなるを欲すれど風止まず”とは
     歴史が証明していることです。 中国共産党には必ずや内部闘争が起り、 
     国内外の情勢の変化はまさに彼らの内部矛盾を激化させています。この矛盾
     が表面化してきたら、私たちは“六四再評価”(198964日天安門広場で
     の軍による武力制圧は当局によって“暴動”に対するものと発表された)の
    スローガンを叫んで、ケ小平氏にその責任を負ってもらいます。 中共の
     内部闘争の一部も人民の力を借りてこそはじめて相手を打ち負かすことがで
     きるというものです。人民の支持を得れば、その人は必ず人民にお返ししな
     ければなりません。圧力のもとで譲歩政策を採り、政治において徐々に解放
     と民主に向うというように。かつて胡燿邦、趙紫陽といった人たちがこのよ
     うな機会をもたらしたことがありました。 惜しむらくは中途にして早くも
     舞台を去ってしまわれたことです。しかし人民はすでに血を流すという経験
     をもって教訓を得ました。 先の三つの政治的な力が最終的にその力を合わ
     せれば、近い将来、再び天安門民主化運動が生まれ、 それはまさしく中国
     共産党独裁政権の終わりを告げるものとなるでしょう。もちろん民主はそう
     簡単にできるものではありません。ソ連、東欧ないしは台湾といったモデル
     のすべてが現れてくるでしょう。この十年以内に黎明の光を見ることができ
     るのではないかと私は思っています。穏やかに変化していく流れは妨げられ
     ないものなのです。                         
     私にはもう一つ心の奥に秘めた問題がああります。あなたはガンジーのよう
     に非暴力主義を主張しておられますが、今のこの時代はガンジーの頃の背景
     と相手とはまったく違います。 野蛮そのもののような共産党は民主制度の
     英国とは違います。このような状況下にあって、あなたはどのようにチベッ
     ト問題における非暴力主義を勝ち取ることができるとおっしゃるのでしょう
     か?                                

ダライ・ラマ :ではお尋ねしますが、もし私がチベット人たちに呼びかけて、命懸けで血を
     流すことをも辞さずに中国人と戦うようにしたら、あなたはここにいらっし
     ゃれるでしょうか?                         

薛  偉 :もしそれが中国共産党統治者に対するものであれば、私はここに来れます。
     もちろんほとんどの中国人は来ないでしょうが。 それに一部の人々や国際
     世論の同情を失うかもしれませんね。                 

ダライ・ラマ :(大きく笑い、その場にいた一人の台湾人ラマを指して)  彼は来ないです
          よ。人と人との間の問題はただ相互の対話を通して、相互に理解することに
          よってのみ解決されます。暴力は根本的な問題を解決できません。たとえば
          ボスニアとチェチェンですが、もし人々が承服しないなら問題を解決するこ
          とはかなり難しいのです。 中国とチベットの問題においては、ただ双方の
     接触を通して話し合うという道があるのみで、外国の力や国際社会に頼った
     り、暴力に依っては解決できないものなのです。            
     ただ互いによく理解し共感と好感をもってこそ、深い溝も消え距離も縮まる
     のです。互いに殺戮と戦争をしていては、 行動と目的はかけ離れ、 両者
     の距離はますます遠ざかるばかりでしょう。              

薛  偉 :今のところ、共産党はあなたを無視して話し合おうともしないのに、どうや
     って?                               

ダライ・ラマ :再度申し上げるが、中国との話し合いの道は必ず開かれます。私はいつでも
     中国人と話し合い、 チベットの問題を平和解決しようと望んでいるからで
     す。しかし中国側があくまでも話し合いを拒絶するなら、私にはもうどうし
     ようもないのです。そうなったら、もはや国際社会に呼びかけて、世論と多
     くの人々の支持を取り付けるしかありません。 それと同時に、中国の人々
     にチベット問題の真相を知ってもらい、私たちの立場をよく理解し支持して
     もらうように働きかけます。ただこうした非暴力の手段を用いてのみ、成功
     を勝ち取ることができると私は信じています。もし破壊活動やテロ行動にう
     ったえるなら、これまでの一切の努力は水泡に帰するでしょう。     
     中国の問題は共産党の問題であるというあなたのご意見には私も同感です。
     しかし、武装抵抗したり、暴力にうったえることで共産党を滅ぼすことがで
     きるでしょうか? チベット人にはそんな力はありません。       
     台湾でさえ軍隊や財力があっても共産党を打ち負かすすべがないのです。 

薛  偉 :台湾といえば、 ちょっとお尋ねしたいのですが、 現在、中国においては
     共産党と国民党の二つの政権があり、両者ともチベットは中国の領土である
     と高言しています。 しかしこの両政権は、独裁と民主という二種類の異な
     った政体に属しています。チベット亡命政府はこの両政権に対してそれぞれ
     どのような態度をとっているのでしょうか? 目下中共の武力による威嚇を受
     けて危機感をつのらせている台湾について、また海峡両岸戦争勃発の可能性
     についてあなたはどのようにお考えになられますか?          

ダライ・ラマ :私たちは北京、台湾双方と連絡をとり続けています。北京との連絡は向こう
     から返事が来なくなり途絶えてしまいました。 現在、台湾の民主と自由の
     発展には目覚しいものがあり、私はいずれまた台湾側と話し合うチャンスが
     訪れると信じています。これは私の望みです。             
     チベットの地位問題に至っては、中共には中共の、台湾には台湾の言い分が
     あり、チベット人にもチベット人の言い分があります。このような不一致は
     さておいて、私たちはまずチベットが高度の自治を享受すべきであるという
     点から話し合いを進めた方がいいでしょう。私たちが平等互恵の誠実な態度
     を以ってするなら、この問題は話し合いのテーブルの上で解決できると私は
     確信しています。                          
     台湾の危機については、今や中共は武力で台湾を威嚇しており、状況はかな
     り深刻です。将来どのように展開するかは今のところまだわかりません。 
     台湾は、 経済発展と政治における民主と自由の進歩においてまさに中国大
     陸の未来の民主制度への方向づけです。もし中国共産党によってつぶされる
     ようなことがあれば、それはとても悲しいことです。 まさに私が一貫して
     主張しているように、 国と国、民族と民族の間で武力をもって争いを解決
     することに、私は断固反対します。 中国共産党にはこの点をわかってもら
     いたいものです。                          


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【信念を失わず、闘志を強く抱き】

 

  偉 :海外に身を置く中国大陸の民主化運動活動家たちにご批判と望んでおられる
     ことをお話しいただけますか?                    

ダライ・ラマ :批判ですか…。互いに分かり合えれば、語り合うことで私はとても嬉しいの
     です。私は中国の友人に対して、民主化運動の人士であるなしに関わらず、
     どんな人に対しても一貫して友好的な交わりを持ち続けています。私はいつ
     も彼らとチベット問題を語り、仏教のことなども話します。チベット人の闘
     いもまた民主自由を勝ち取るものであり、基本的には私たちの目的は同じな
     のです。だから一切のチャンスを無駄にせず、彼らと互いに連絡をとりあい
     互いに支え合うのです。これから先も、このようなつながりを持ち続けられ
     るよう私は望んでいます。                      
     あなたがたに対して批判があるとすれば、一部の人たちは海外に出たばかり
     の頃は少なからぬ仕事をするのに、個人的境遇が少しばかりよくなると意志
     と信念はしだいに萎えてしまいます。ある人たちの間では人事問題をめぐっ
     て互いに言い争い、公衆の事業と努力すべき目標をなおざりにしています。
     1989年、 多くの大陸の民主化運動活動家たちが国外に到ってまだ数ヵ月の
     頃、私は、ただ外国の支持に頼るばかりではいけない、自らの力に依らなけ
     れば、そうしてこそ成功を得られるのだと話したことがあります。私たちが
     海外に亡命してすでに三十数年、あなたがたはようやく数年、私はあなたが
     たが決して三十年待つ必要はないと信じています。しかし最も大切な点は、
     信念を失わず、闘志を萎えさせてはならないということ、これは非常に大切
     なことです。                            
     私たちは互いに友好的に協力していかなければなりません、同じ目標に向っ
     て努力奮闘するために。私は必ずしも一概に共産主義の学説に反対してはい
     ません。 半分仏教徒で、半分はマルクス主義者であると自称しているんで
     すよ!(笑) しかし共産党の専制と暴政には断固反対します。      

薛  偉 :ほんとうにおっしゃる通りです。私たちは信念を持たなければ。未来はすべ
     て私たちの苦難と努力にかかっており、私たちは必ずや自由の精神を勝ち取
     ることでしょう。いつかポタラ宮にあなたをお訪ねする日の来ることを私は
     堅く信じています。                         

                                                                        <完> 




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