−チベット民族が公正な待遇を得られるように−
安 其:
この過程においてあなたご自身が果たされる役割とはどのようなことでしょうか?
ンガポ・ジグメ:
わたしの仕事は、チベット民族が公正な待遇を得られるよう努力すること、チベットの権利を尊重するように働きかけることです。これまでの経歴と受けてきた教育によって、わたしにはチベットの歴史、チベット人の心の動きがよくわかると同時に、中国文化にも引かれ、それを心から愛しており、中華民族をとてもすばらしい民族だと思っています。たとえ彼らに多くの欠点があり多くの困難を経てきたにせよ、彼らは悠久の歴史をもつ民族であり、また将来性のある民族なのです。ある方面においてはもしかすると漢藏両民族間の交流を促進することができるのではないか、両民族の掛け橋となって相互のつながりをつけることに役立てるのではないかと思っています。
安 其:
あなたは現在、チベット向けの放送を担当されていますが、その主な目的はなんですか?
ンガポ・ジグメ:
チベットには報道の自由がなく情報もないので、それでわたしたちは正確で客観的公正な情報やニュースを提供しているのです。チベットではこの数年、情報取得という点である程度の進歩が見られましたが、実際にはなんらの報道の自由もありません。人々が外の世界を知ることはかなり制限されており、チベット内部のことについても報道規制があるため放送されることはめったにありません。わたしたちの放送を通して人々にイデオロギーで歪められたものではない正確で客観的公正な報道を提供していけたら、と望んでいます。
安 其:
情報はどうやって手に入れているのですか?
ンガポ・ジグメ:
大手通信社のニュースを含む各方面の情報がすべてそろっています。わたしたちのところには主にインドから来たチベット人レポーターが数名おります。チベット内地にレポーターのネットワークをつくりたいと思っていますが、難しいですね。電話さえうまくかからないことがあります。
安 其:
ジャーナリストとして、西側で主流となっているチベット問題のとらえ方、扱い方をどのように評価されますか?
ンガポ・ジグメ:
わたしの見たところでは、西側の主要な社会でチベット問題を話題にすることはさほど多くないようで、近年に至ってようやく増え始めた感があります。一般的にいえば、西側の主な社会では、チベットの自由、民族自決、自分たちの文化、伝統、宗教を保持していこうとする努力に対しておおよそ同情的です。もちろん西側社会のチベットについての理解の程度もまちまちで、具体的な状況についてはっきり理解しているとは言えません。
安 其:
チベット問題について西側が言っていることと中国側の宣伝はいずれも真実を欠いている、と言う人もいますが、ほんとうでしょうか?
ンガポ・ジグメ:
そういうことはあります。表面的なこともわりと多いですが。その他、亡命チベット人たちの宣伝工作もかなりのもので、西側の報道はどちらかといえば亡命チベット人側の宣伝に偏っています。というのも中共はあまり信望がないので、多くの人はその宣伝を信じていないのです。チベット亡命政府の宣伝もある面において多くの問題があるとわたしは考えています。西側の報道は本質的にはむしろより真実を追求していくことを目指しており、故意に事実を曲げて報道することはありません。しかし彼らも多くの規制を受けており、今のところ中共は、チベットにおける西側メディアの取材や調査をほとんど受け入れていません。西側のジャーナリトたちは中国大陸の他のほとんどの地域へ行けるのに、ただチベットへ行くことだけは規制されているのです。こうして西側メディアがチベットについて正確で全体的客観的な報道を行うことが制約されてしまうのです。
安 其:
先ごろチベットに関する映画《セブンイヤーズ・イン・チベット》が上映されて波紋を投じましたが、その中に宗教に関する細かい部分やンガポ・ンガワン・ジグメの描き方について真実を欠いている部分がありました。あなたはこの映画をどう思われますか?
ンガポ・ジグメ:
これはあまりにもお粗末な宣伝映画です。あまりにも粗雑で嘘だらけです。史実に基づく映画ということですがそこに描かれている多くは架空のものです。フィクションとノンフィクションが入り乱れたひどくいいかげんなもので、その手法は卑劣で多くの状況が実際とは異なっており、ほとんど歴史的事実を無視しています。例えば、原作者のハーラーが解放軍のチベット侵攻を目の当たりにしどんなに残酷であったかなどと語っていますが、実は彼は解放軍を見たこともなく、解放軍がラサに侵攻する以前に彼はラサを離れているのです。彼の原作にもそんな内容はありません。原作と映画さえも違っているのです。
以 上