
アコヤ貝の大量斃死の謎
もう、かれこれ10年くらい経つのではないかと思うが、
愛媛県南部、宇和海沿岸で真珠生産のために養殖されている
アコヤ貝が大量死するという事件が起きている。
結局、現在でも原因を断定出来るだけの調査が出来ていないらしい。
発生当時、この問題をどう解決すればいいか頭を捻ってみた。
これは水産試験場や大学の研究期間がやることだから、
専門家に任せていればいいことだが、アマチュア科学者の
端くれとして考えてみたいことであった。
まず、最初に考えることは、原因となり得る要因を列挙すること。
1. 細菌、ウイルスなどアコヤ貝特有の病原体
2. 公害、有害な化学物質など
3. アコヤ貝の呼吸に関するもの。(水中酸素量)
4. アコヤ貝の食物に関するもの。(プランクトン)
5. アコヤ貝が海中から直接取得するその他の成分
6. アコヤ貝が出す老廃物と周辺環境でのその飽和
7. 水温、海流などその他の要因
これらについて、調べなければならないだろう。
正常な海域での測定と比較も必要だと思う。
その他、環境変化に関して、様々なことがヒントになることがある。
さて、この中で項目2の有害物質に関して、地元でホルマリン説
が早くから言われていた。
ハマチや鯛の養殖業者が、寄生虫を駆除する目的で使用している
ということらしい。
しかし、私の化学の知識では、ホルマリン(ホルムアルデヒド)は、
非常に酸化されやすい物質であり、少量なら容易に空気中の酸素で
酸化されて分解されるだろうから環境にも残らないため、
原因物質ではないと思っていた。
ただし、ホルマリンは、医薬用外劇物に指定されている物質である。
ホルムアルデヒドが酸化されて出来るギ酸は、濃度が高い場合、
皮膚に触れただけで水疱を起こしてしまうような強い作用がある。
このギ酸もまた酸化され易く、恐らくは空気中の酸素で
酸化されて水と二酸化炭素まで分解される。
ある意味、環境測定しても証拠が残らないのだ。
問題が発生して2年くらい経った頃、帰省している間に北灘湾などを
見て回ったのだが、何と!海がきれいになっているのだ。
以前の北灘湾は、ハマチ養殖などで蒔かれたエサの残骸で汚染され
濁り、微生物の分解で水中酸素量が不足するくらいになっていた。
養殖が続いている限り、海は濁っているはずなのだ。
それから、丸山灯台の周辺にあったヒジキの群生も見られない。
海岸に打ち上げられるはずのホンダワラなどの海藻も少ない。
海が綺麗になっているのは見せかけで、完全に死んでいると
言った方が良いのかもしれないと思った。
海岸を見ると捨てられたアコヤ貝も見る事が出来た。
捨てられてはいたが、水中でまだ生きているものも見られた。
思ったのは、痩せていること。
赤くなる症状としてウイルスによる感染症という見解が
得られているが、栄養失調が根本の原因のように見えた。
貝殻を見ると、かなり薄く、普通なら殻に寄生虫がついても
喰い破られる程薄くはならないと思うのだが、喰い破られていた。
どうも、貝の食物になるプランクトンが少ない様だ。
もちろん、病気で弱ったのが先だと考えることもできる。
5年くらい経ったある日、九州は天草でのフグ養殖で
ホルマリンを使って寄生虫駆除している現場をリポートした
テレビ番組をやっていた。水産業者の違法行為を
隠しカメラで撮影したような内容だったが、これを見て驚いた。
まず、生簀の周囲をプラスチックのシートで簡易に囲って
その中に医薬用外劇物であるホルマリンを一斗缶(18リットル)
2〜3杯の量を生簀に投入し、処理後プラスチックのシートを外して
多量のホルマリンをそのまま海中に流していた。
工業廃水でも、これだけの濃度のホルマリンが海に流されることは
まずないだろう。
科学者から見ると、とんでもないです。かなりの重罪です。
いくら分解され易いアルデヒド類でも、こんなに投入したら・・・
これと同じことが、宇和海でも行なわれているとしたら・・・
これとは別に、水俣病に関する番組を見て思ったのだけど、
地場産業の稼ぎ頭のチッソを県が支持する構造が
公害を早期に対策出来なかった大きな原因となっているようだった。
さて、専門家が10年も調べて分らないものだろうか・・・
Date: 2005.2.1
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