〜10月の奮闘録〜


森山さんの渋い授業10月6日(水)「いぶし銀の写真講座」
今日のデザインコースの講師は、写真家の森山大道さん。
以前から路上の風景を写した森山さんの作品に興味があったので
お話を聞いてみたい方の一人でした。
人気のある方だけに、聴講席は珍しく満席です。

授業前半は森山さんが去年パリで展示会をされた時の
DVDが上映されました。しかしご本人曰く「僕は写真家だから・・・」どうも
大勢を前にしてのお話はあまり得意ではないようで、後半は必然的に
質疑応答になりました。でもみんなから交わされる質問に
時に笑顔で応じてくれるその態度は、やはり渋くて格好良かったです。

「目の前の現実を(写真に撮って)自分を通してアートにしたい」と言う
その姿勢には共感を覚えました。何だか私もカメラを持って、ふらっと
絵になる風景を撮りに出掛けたいな・・・と思うような講義でした。



寺井さんに指導を仰ぐ10月7日(木)「著作権問題について真剣に学んでみる」
年間プログラムを貰ったときから、今日の講師である
金沢美術工芸大学の寺井剛敏さんは「一体何を教えてくれるのか」
非常に興味がありました。が、蓋を開けてビックリ、なんと
「著作権講座」がこの日のテーマでした。
実は寺井さんは以前、博報堂にお勤めされていたとか。
その経験を元に、色々なお話を聞かせて下さいました。
イラストと著作権って、実は何年も前から結構問題になっていて
『イラストレーション』誌でも過去数回に渡って、その手の連載が
掲載されていました。幸い私は今までトラブルほどの仕事は
なかったのですが、機会があったら一度学びたいと思っていた事だけに
有り難い講義でした。

一言で著作権と言っても色々事例があって、例えば会社の業務で制作したキャラクターの
著作権は誰にあるのかとか(答:会社に帰属されます)、ネットでの作品の無断使用は
「公衆送信権」侵害で訴える事が出来るとか、有名な所では著作者の死後
50年経った作品は原則として無許可で使用出来る・・・等々。
また実際にトラブルにあった時の相談先を教えて貰ったり
トラブる前の「チェックシート」(契約書のような物)の作り方を教えて貰ったり・・・と
いつもとは一風違うけれど、非常に役に立つ事を沢山教えて頂けた授業でした。

イラストレーターって、実は意外と立場が弱いんです。
寺井さん曰く「自分の作品は自分で守るしかない」のが現状です。
「色々な人がいる(業界だ)から、防衛できる所はしておいた方がいい」という
転ばぬ先の杖的な考えは、やはり大事ですよね。

また大手広告代理店にお勤めされていた経験から、広告の仕事を得た時の
注意点(統合制限とか他社制約があるから、同じ業種の仕事は出来ない等)も
教えて下さいました。また実際に当時の寺井さんが見初めた事がきっかけで
今大活躍しているイラストレーターさんの話などを絡めて「チャンスは自分から動かないと
やってこないから、どんどん作品を人目に出してチャンスを掴む事」も勧められました。

「よし、それなら」と、授業後のあわただしい時間帯にお願いして
早速用意していた作品ファイルを見ていただきました。(チャンス掴むの早すぎ?)
寺井さんの感想は「アクリル画は(最近描いた)野菜とか犬とか、こうした小物を
クローズアップした物が面白いよね。僕がクライアントだったら、こういう絵の方を
仕事で頼むと思う。ただ人物は顔がベタになってるから、あまり良くないかも。
人物を描くなら顔がない方がいいかも知れないし、顔を入れるならアクリルじゃなくて
ペン画の方がいいのでは?」と、「あーやっぱりそうかぁ」と思うような核心をズバッと
いい当てられました。でもむしろ、そうはっきり言って貰った方が
これからの(作品の)方向性が定まって自分の中でもすっきりしました。

寺井さんはやはり大学の先生だけあって、教え方がとても上手です。
すごく親切で優しい方だったので、今日は授業を受けることが出来て
良かったなぁと、何だか得したような満足な気持ちでいっぱいです。
よし、今月も頑張ろう。(*^.^*)


さすが、みうらじゅん10月13日(水)「ゆるキャラ音頭でホホイのホイ」
この日が来るの、実はかなり楽しみでした。そしてやっぱり
期待を裏切らないすごい授業です。なにせ講師はみうらじゅんさん、
肩書きはイラストレーターなど(笑)。教室は当然、満員御礼です。

とにかく面白い授業で、2時間があっと言うまでした。
内容はみうらさんが興味を持っている事についてでしたが
それが仏像だったり海女(AMAと表記してと言われた・・・)や闘犬、
埴輪のハニー、牛の話、天狗、下ネタ、ファンについて、
着ぐるみ文化、等々・・・
とにかく何の脈絡もない事がどんどん飛び出すのですが
不思議とどれもすごく面白そうな感じがします。
それらに全く関心のない人にも、「あーAMAって面白そうかも」と
思わせてしまう話しぶりはさすがです。自分が興味を持ったこと
体験したことを上手に咀嚼して相手に伝える才能に
長けている人だなぁ〜と感心しました。


持参したDVDも上映してくれたのですが、その中に入っていた
日本全国47都道府県の各キャラクターが踊る「ゆるキャラ音頭」は
爆笑物。何がすごいって「このキャクター達、どれも全然知らないよっ(笑)」って
物ばかりが元気に「ホホイのホイ、ホホイのホイ」って踊り狂ってます。
それ以上に可笑しくて大爆笑を誘ったのが「とんまつりJAPAN」。
これは日本全国の変な祭を集めて編集してあるのですが、本当に
「こんな祭、あり得ない!!」って思う物ばかり飛び出します。例えば
一人相撲祭とか、ウジ虫祭、笑い祭、尻振り祭・・・どれも絶妙な真剣さがすごい(^.^;)
他にも色々あるのですが、とにかくこのDVD、めちゃくちゃ受けてました。

そんなみうらさん直伝の「アーティストの心得」とは・・・
「変な事してても、人から突っ込まれない人生を歩く事」だとか。
「突っ込まれても聞こえない振りして遠くを見たり、人にダメ出しを受けずに
生きるのがコツ。芸術家はね、人の事なんて絶対考えちゃいけない」とか。
そうやって生きていくと、その内に道を歩いていても「よっ、アーティスト!」って
声をかけられる様になるんだとか!?(本当にっ!?)
とにもかくにも、すごく人を魅了する、生き方に奥行きのある人でした。
たった2時間でファンになって、しっかり「カエルのイラスト入りサイン」を
描いてもらった私のミーハーぶりもすごいけど・・・。いい人でした。(*^.^*)

いやぁ、こういう授業を受けると「人間、格好つけて生きてちゃいかんな。
もっと本能の赴くままに生きて良し」って気になります。たった一度の人生なら、
面白く生きなくちゃ損ですよねぇ。いやいや本当に(笑)
今日は色んな意味で目から鱗でした。


超陽性辛口先生現る10月14日(木)「素晴らしきかな『俺、最高』な人生」
イラストレーター赤勘兵衛(せき・かんべえ)さんの授業は、
いつものように指定された課題(自由課題で自信作1〜2点)を
ずらりと並べた中で行われました。
とは言っても、他の先生方とは違って作品の善し悪しや
描き方などを指摘するわけではなく、みんなから描いた意図や
想いを聞き出しては、それに対する評価をしてくれました。

結論から言うと「イラストレーターはこだわりの物を持つ事」。
こだわりの物を描いた時、それは人が見ても絶対面白い。
だから人がわからなくたって、自分がぞっこん好きと言う物を
描いた方がいい、自分が感動しないと良い物は描けない。
感動=こだわりなんだ・・・と。
赤さんはとにかくおおらかに良く笑いながら
授業を進めていきました。よく聞くと作品評はかなり
辛口なんだけど、その明るい笑いのせいで
全然きつく聞こえないのも、ある意味すごいよなぁ・・・。


「テクニックは二の次。一番はその人の物の見方。「見方=個性」でしょう。
その人間が面白くなれば、絵も勝手に面白くなるもの。技術だけが上手くたって
面白くはならない」ので、もう「人の目なんて気にしない!自分の目で見て
可愛いとか面白いと感じる物ばっかり描いてなさい。みんなに受けそうな物を
感動もしないで描くぐらいなら、描かない方がまし!自分が最高だなって
思って描いていれば良いんだよ。あはははははー(笑)」とか。

なるほど・・・まずは人ありきですな。
しかし昨日のみうらじゅんさんといい、この日のスーパー陽性な赤さんと言い
こういう授業を続けて聞いていると「そうよね、人の目なんてナンセンス。
今日から私、好きにやらせて貰います!」って気分になってきます。
(って言うか、今でも十分好きに生きてる私がこう言うのも何だがな)
そんなわけで、こうなったらとことん好きに描いてみましょう。
その内このHPに珍妙な作品が飛び出す日が来ても・・・
まぁそれはそれで良いかな、あはははは(笑)


ミネコ先生再び10月21日(木)「十人十色の『東京スタイル』」
某ラ○オン製品「キレイキレイ」等でおなじみの人気イラストレーター
上田三根子さん再びです。再び・・と言っても、前回お会いした時は
基礎コースの聴講だったので、イラストコースにいらっしゃるのは
今回が初めてです。

そんな上田さんの課題は「『東京スタイル』という架空雑誌の
トップページを飾るイラスト。見開きの特集で、どんな東京を
テーマにするかは個々人の自由」という、一見やりがいがありそうで
その実すごく難解な代物。私もアイデアを出すだけで3日位かかりました。
「東京ってイメージは、六本木ヒルズとかをバックにお洒落な服の
女性がいる・・・のが大半の女性誌の特徴かなぁ」とか色々考えたり。
でもいざ筆を持つと、そんな絵は全然つまらないし・・・。「先週赤さんが
自分が心底面白がって描かないと、良い絵にはならないって言ってたっけ」と
さり気なく復習しつつ、ひねり出したテーマは「下町」。で、結局勢い余って3枚も
描いてしまいました。まさに好きこそ物の何とやら(笑)
いざ教室に行って壁に貼られたみんなの作品を見てみると、まさに十人十色の「東京スタイル」。
ファッションや東京タワー、江戸の風景に東京の恋人達、レストラン特集もあれば
カフェ特集もあったり、はたまたショッピングも・・・と、非常に面白く壮観でした。
そんな作品を見つつ、上田さんも赤さん同様「クライアントを説得できるぐらいの
想いで描かなくてはいけないよ」と、今後の仕事を見据えて評価してくれました。

私の作品に関しては「自分の好きな物がわかっているのは良い事」と。
「それが人に負けない強みになる」と励ましてくれました。「色も良いし線画も
雰囲気と合っていて良く描けてると思いますよ。(自分の足で調べた)
資料を見て描いてるから説得力もあるし」と、嬉しい評価です。
それを踏まえて「車はもっと車らしく」とか、「ここに絵を入れたらもっと良い」とか
「写真はこうした方が不自然じゃないよ」など、細かいところを的確に
注意してくれました。最後は「仕事では好きな分野ばかり来るとは限らないから
何でも描けるようにね」とも。
好きな物や面白がって描いた物って、やっぱり説明がきちんと出来るから
本当に人に受け入れて貰いやすいんだなぁ・・・としみじみ納得した授業でした。
人の心を動かすにはまず自分から・・・なんでしょうかね。

今月に入ってめっきり出席者が減ったパレット。今日も課題を出した人が
遂に20名を切り、全体の3分の1程になってしまいました。
ちょっと寂しい気もしますが、その分丁寧な講評を受けられるのは
一生懸命頭ひねって課題を描いた甲斐があって嬉しいかな(^.^)


ローランド・ハーゲンバーグさん(左下)10月22日(金)「映像授業は頭がグルグル(@.@)」
デザインコースで6月に休講した写真家&ライターの
ローランド・ハーゲンバーグさんの振り替え授業が行われたので
金曜日はイレギュラーですが聴講しにパレットへ。
翻訳の方との同時通訳授業は、ローランドさんが沢山の映像資料を
(ビデオやDVDで)見せてくれる形で進行しました。
中でも興味深かったのが、海外の雑誌社を紹介したビデオです。
日本の出版社とは建物の作りも雰囲気も異なっていて
すごく参考になりました。日本の社食同様、綺麗なカフェテリアもちゃんとあって
特にドイツの出版社はお国柄か、昼から大きな鶏の丸焼きを食べていたのが
すごいやら羨ましいやら・・・(笑)
でもせっかくの授業だけど、映像物は手ブレもあるせいか目が回ります。
「あれれ具合が悪いぞ??」なんて不思議がって周囲を見たら、みんなも
「頭が痛い」とか「目が回る」とか「寒気が・・・」と色々。せっかくの熱心な授業も
体調が悪いと今ひとつ吸収できなくて、ちょっと残念。
ちゃんと勉強する為には、元気でいる事も大事ですね。



珍日本紀行10月27日(水)「市井の人の芸術、侮るべからず」
今日のデザインコースは編集者・写真家・美術家の肩書きを持つ
都築響一さんです。ご自分が「面白い、これこそアートだ」と
思った物について、スライドやDVDを見ながらお話してくれました。

都築さんと言えば『珍日本紀行』、日本全国の変な物や
変わった人を見ては「個人の変な人が黙々と作っている物が
一番面白いんだよね」と、どう見ても「おいおい、これはあり得ないだろう」と
思うようなすごい代物(アート?)を次々に紹介してくれました。

それは寂れた観光地の「極楽苑」だったり、100体ほどのカエルの
オーケストラがいる山中だったり、奇妙な帽子を作る女装のおじさんだったり
田舎の暴走族のバイク装飾や、トラック野郎の実用性のない豪華車体
だったり・・・。みんなの爆笑を買うものばかり。しかし同時に
アート(デザイン)って奥が深い・・・と言う事も、しみじみと感じるわけです(^.^;)
いやはや、なにもパレットの先生だけでなく、世の中にはすごい人や物事が
沢山存在するんだなぁ。何だかワクワクします。今日は勉強になりました(笑)



たまには切れることもある10月28日(木)「ま、世の中色々あるよねぇ」
今月最後のイラストコースは、某ギャラリーのエージェントさんが講師でした。
エージェントと言う職業は、簡単に言うとクライアント(企業や出版社等)と
イラストレーター等を結びつける仕事をします。故に、作品を気に入られたら
仕事に直結する方の参上。みんな自ずと気合いが入ります。

実際みんなのファイルの作り方はすごいです。さすがにこの時期まで
残っている人達は気合いも技術も違います。と、言うかみんな格段に
作品の見せ方が上手くなっていて、感心する事しきりです。
ちなみに今日の課題(持ち物)は「営業用ファイルを持ってくる事。
その中には必ず女性のイラストを入れる事。タッチを統一させる事」でした。

ところで私達イラストレーターは、依頼主(エージェント含む)によっては
随分扱われ方が異なります。「仕事の使い勝手がよくて、お金になる子」と
作家個人よりもビジネス本意で私達を動かす人もいれば、「良い作品(本)を
作っていきましょうね」と、作品性を理解して協調的に仕事を進めてくれる
依頼主もいます。(でもエージェントはビジネスマンだから、作家の心中なんて
気にせずビジネス本意で動いても、それが当然と言えば当然ですが)

今回の講師の方は残念ながらどうも前者タイプの様。
作家の制作意図を理解する風ではないようです。
課題の「女性を描く」にしても、いつも女性を主体に描いている人もいれば
そうでない人もいます。でもみんな「課題だから」と頑張って描いては
自信作と共にファイルに入れてきます。そんな人達の作品を見て一言
「この女性イラストは作品的に合ってないね。ファイルをもっと統一させなさい」と苦言。
「うーん、統一したファイルが見たいのなら、初めから自信作を持ってこい・・・とだけ
言ってくれた方がいいのにな」と、少々配慮に欠けたその対応に悔しい思いをした人
今日は沢山いたかも知れません。課題がマイナス要因になるなんて、ちょっと理不尽だな。
結構独創的な方でもあったので、その他様々な「営業の基本法則」が通用しなくて
首をかしげたくなる事も。でもまぁ、その中でも選ばれる人は選ばれます。
やっぱりここは私の力量不足なんだろうな。

私自身も2年ぐらい、こうしたエージェントさんに付いてお仕事を頂いた事が
あり、与えられた仕事に忙殺されて自分の絵を忘れてしまう毎日でした。
ある編集部さんに「こんなカット屋みたいな仕事をしていたら、10年後はないよ」と
言われて目が覚めたり・・・。実績のないイラストレーターはとかく選ぶ側の
都合に応じた扱いを受けますが、私達自身も自分の作品に合う人をきちんと見極めて
自分を見失わずに仕事をしていく術を身につけないといけないんですよね。本当は(^.^;)

でもパレットのみんなは、お世辞抜きで本当に偉いかも。
けなされても認めれなくても諦めず、一生懸命自分なりに課題をこなしては
再チャレンジを繰り返します。そして落ち込んだ人には優しく声をかける事も忘れません。
そう言うタフさ、優しさに支えられながら、来週もまた「頑張ってみようかな」と思います。
まぁ、世の中色々あるからね(^.^)
イラストレーターには負けん気も必要です(笑)


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