〜12月の奮闘禄〜
12月2日(木)「イラストレーターにとって一番大切な物は?」
12月最初の授業はイラストレーターの安西水丸さんが登場です。
壁一面にずらりと貼られた課題「見て貰いたい作品5点」を見ながら
各々の作品とイラスト道についてを語って下さいました。
水丸さんの穏やかな風貌や作品のイメージとは裏腹に
作品評は驚くほどに辛口です。ズバズバ容赦なく斬り捨てる
まるでサムライのような講評(?)にみんなビックリ仰天、押し黙ります。
それにしてもやはり作品評って好みが出るんだなぁ・・・と言うことを
実感した日でもありました。
普段良く褒められている人達の絵が
「こんな風にデフォルメされた絵って僕は苦手でね」とか「こういう個性的な
作風は2〜3年で飽きられる」とか「このタッチは良くないから、もうしまい込んで
見ない様にしなさい」とか「一旦イラストから離れてみた方がいいのでは」とか
「目がいまいちだなぁ」とか「古くさい」とか、散々にダメ出しされていたのが
印象的でした。「・・・何もそこまで言わなくとも」と思える手厳しさです(>.<)
逆に良い作品を描くのに、普段なかなか認めて貰えない人達が
「良いじゃないですか」と褒められていた事も印象的でした。
やっぱり相性ってあるんですねぇ。
私は「タッチやテーマは揃えた方がいいかな」と判断し、さっくりとした植物画を
5点並べてみました。師曰く「上品で面白い絵だけど、決め技がないというか。
筆のタッチや作風はこのままで良いんだけど、『これは面白いな』とか『おっ』と
思えるような決めが必要」だとか。・・・どうやら今まで色々な方から言われ続けてきた
「あと一息」の領域をまだ抜けていない様です。更に「植物しか描けない
イラストレーターはいないから、もっと色々な物を描いた方がいい」とも。
「色々描けますよぅ」と反論したいところでしたが、倍になって返ってきたら怖いから
大人しくメモを取る私。作品の見方はやや性急だけど、指摘する部分は間違っていないです。
水丸さんは子供の頃から絵が好きで、それでイラストレーターになりたくてなりたくて
でもなかなかなれなくて・・・と言う、遅咲きの作家さんです。
だから仕事を貰えない辛さも、この仕事が出来てどれだけ幸せかという喜びも
すごく理解している方です。一同深く共感。
「技術向上に一番良いのは仕事をする事。懲りるのも自信を持つのも全て仕事が
教えてくれる。そこから色々学べて強い線になる」のだとか。更に「その人の内面は
そのまま絵に出る。イラストレーターにとって一番大事なのは自分の生き方」とも
教えてくれました。
その為に良い友達を沢山作ること、良い絵や好きな絵を身近に置くこと、
色々な物を見たりしてイラストについて沢山勉強をすること、出来る人を
羨ましがらないこと、(自分の絵柄で)第一線に立つぐらいの意気込みで
臨まなくてはいけないこと・・・等を具体的に説明してくれました。
絵を描くって言うのは奥が深いことなんだなぁ。
最後に「地球上には絵が描けない人の方が圧倒的に多いんだよ。
絵を描ける肉体を持って生まれたのは、それだけでパンダみたい(!?)に
保護されるべき貴重な人材だと思うんだよね。(保護されないから自分から仕事を
取りに行かなくちゃならないんだけど・・・)だからその特性を生かして自信を持って
生きること」と言う、ユニークな励ましの言葉でみんなの背中を押してくれました。
友達を作ること、勉強をすること、仕事をすること・・・がイラスト道の
3本柱なのだな・・・とパレットのパンダ達は深く胸に刻むのでした。
12月9日(木)「大スカウト合戦行われる」
デザイン集団CAPのアートディレクター、藤本やすしさんが
エージェントの方を2名引き連れて、今日はスカウトにやってきました。
前回8月にいらした時、営業向けの作品ファイルについて色々と
指導して貰った事を踏まえて、この日のために山のように作品を
描いてはファイル作りに精を出していた私。
結局40枚と20枚の作品ファイルを2冊用意したのですが、その陰では
没になった作品も含めて、たぶん100枚以上をこの4ヶ月で
描いた計算になります。今まで月に1〜2枚ペースで制作していた事を
考えると、我ながらすごい数。頑張ったのはいいけど、さすがにヘロヘロです。
この日はざっと40名以上が参加し、3つのグループに分かれ
藤本さんを初めとしたスカウト団3名がこの輪をローテーションする形で
作品を見てくれました。でもこの中で選ばれるのはたった3名。
「見込みがあるから成長を見たい人」を含めても6名しか
ファイルを選ばれない、かなり厳しい境遇です。
そんな中、私の作品はそれほど酷評でもなく、アイデアがすごい爆笑を
買っていたり(なぜ?)、「新鮮ですね」とか「レトロな感じが持ち味でいいね。
面白いし上手い。この懐古的な路線で進めてみるといいかも」と言って
もらえたものの、残念ながらスカウトはされず・・・と言う結果でした。
選ばれた5名(だぶっている人もいたので)は、やっぱり普段の課題でも
「面白いなぁ」と味のある世界を描ける人達が選ばれていました。
特に藤本さんは「ビジネスにつながる人を選んだ」と言うように
即戦力になる人も今回は有利だったようです。
何はともあれ、持っている力と時間を全部出し切って、それでも選ばれなかったのだから
言い訳のしようもありません。「うーん、なんだか頑張っても頑張っても
ちっとも上手くいかないなぁ。やっぱり私の絵ってダメなのかなぁ。イラストレーターに
向いてないのかなぁ・・・涙」と、しおらしくうなだれていれば、まだ可愛いのですが
「でも作ったファイルはそのまま手元にあるから、次の営業に使えるじゃん。
カラーコピー代だってバカにならないもんねぇ」と、瞬時に次に向けて立ち直る私。
(そして翌日の朝から本当に、各出版社の年末の忙しさを省みず
ガンガン営業電話をかけまくったり、ファイルの郵送準備を始めた次第。
・・・決して怒っているわけじゃないですよ、たぶんね(笑))
イラストレーターに大事なのは技術や個性よりも、絶対に負けん気だろうなと
思う今日この頃であります。そんなこんなで次回はいよいよ最後の授業です。
12月15日(水)「自分の立ち位置を確認してみよう」
今日はデザイン事務所groovisionsの代表者、伊藤弘さんの
講義を聴講しに行きました。この事務所は以前はドコモの
iモードキャラクター(チャッピー)や、ピチカートファイブやリップスライムなどの
プロモーションビデオやジャケットを制作している、知る人ぞ知る
有名デザイン事務所。伊藤さんは今まで手がけた様々な作品を
見せつつ、物静かに淡々とデザインの面白い話を語ってくれました。
「何かをやりたいと思っている人は、制作した物をなるべく多くの人に
見て貰えるよう知恵を絞った方がいい。作った物が良いと気に入って
くれる人が出て、そこから仕事に結びつくから」とアドバイスをしてくれたり
「自分が何をしたいか、そう言う立ち位置というか視点がはっきりしていると
見通しよく動ける。ガーッとのめり込んで制作している時でも、客観的に
自分を見られるから、作品も独りよがりにならないでいい。
のめり込める事と突き放せる事、その両方が大事」など、色々と
参考になる助言をしてくれました。
デザインコースは本当に色々な分野の方が講師としていらしたので
毎回「今日はどんな話を聞けるかな」とワクワクしながら聴講に通っていましたが
それも今日でお終いです。(本当は来週もあるけど、行かない予定なので)
結局デザインとは何か・・・は奥が深すぎて良くわからないままでしたが
色々なタイプの「デザイン」に触れた事で、前よりも一層親近感を持てるようには
なれました。お話の内容はとびきり面白い物から、程々の物まで様々でしたが
このコースの聴講は新鮮で楽しかったです。最後は二枚目の伊藤さんが
講師だったので私的に有終の美なり(笑)
12月16日(木)「最後の授業はエンドレス!?(@.@)」
あまり実感がないのですが、いよいよ今日がイラストコース
最後の授業です。講師は初回同様、パレットの責任者原田治さん。
課題の「自信作2〜3点」を壁に貼り、マイクを手にみんなの前に出て
緊張しつつも、原田さんと一対一で作品説明&講評を行う・・・と言う
形式の授業になりました。
ところでパレットに通っていた間、沢山沢山課題はあったけど
今回が一番しんどかったです(@.@)と、言うのも先週のスカウト合戦が
終わった時点で「もうファイルを作らなくても良いんだなぁ〜」と
張り詰めていた糸がブチンと切れたからみたい。
絵は気力で描く物だったんだなぁ・・・と、今更のように気がついた
一週間でした。
幸か不幸か私はパレットに通う間、2度も原田さんに作品ファイルを見て
いただいた過去有り。(注:間違いなく幸いな人です)
そこで「今まで助言していただいた事を踏まえ、新作を提出するべきではないか」と
気持ちを入れ替えて制作に臨むも・・・筆が持てず。重い腰(右腕?)を上げて
描き始めたのは前日のお昼でした。少し気持ちを楽にして描いた
キャラクターっぽい動物画、新作2点ギリギリセーフです。
パレットの日々は、とにかく描きまくっていた日々でした。
初めの頃よりタッチもモチーフも見せ方も、少しずつ変化して
でも最後は「これで終わり」と言うよりも、まだまだ変化過程にあるなぁと
いう感じです。そんな私が結局行き着いた考えは「見る人が楽しいなと思える
絵を描けたら、それで良いじゃない」という結論でした。
だから新作はそんなタッチの絵です。(ちなみに来年の年賀状になる予定)
原田さんの作品評は「キャラクタータイプの絵は、ある程度自分の中で
イメージをふくらませて描いた方が(リアルに描くよりも)いいよ。
デフォルメの仕方も統一してタッチを整えるといい。子供向け雑誌に載せたいなら
細かい所もきちんと描かないと、子供の目はすごくシビアだよ」との事。
それでも「これだけ描けるんだから、その点を踏まえれば大丈夫」と
心強い助言をしてくれました。
が、しかし。
優しく真摯な原田さんの講評は、一人につき5分以上の時間を費やしており・・・。
今年の受講生は例年よりもみんなすごくまじめらしく、この最後の授業時点でも
40名以上はいる様子。作品も実に32名もの人がきちんと提出していたので
大変です。「単純計算して32名×5分以上。この授業・・・一体いつ終わるの?」という
みんなの漠然とした不安は見事に的中し、最後の授業はエンドレス状態に。
これは結構しんどい。これも私の気力の問題かしら・・・?
結局全ての講評に3時間15分を費やし、更にその後に終わりなき質問時間が
授けられました(@.@)(注:基本の授業時間は2時間です)
遠方から通っていた人達は終電が無くなるのでわたわた帰りだし、結局この授業は
流れ解散のようにして終わりました。・・・何だか寂しい(T.T)
恐るべき最後の授業(笑)
とは言え悪いことばかりでもなく、いつもは何となくバラバラに帰る
同じ沿線の人達が「終電ギリギリのため」みんなでまとまって帰ったりしました。
今まであまり話す機会のない人とも話が出来て、思いがけなく楽しい帰宅。
授業は終わっちゃったけど、週末に行われる卒業パーティーで
また再会できるので、寂しさも半減かな・・・と思ってます。
12月19日(日)「卒業パーティー行われる」
この日はパレットの教室を使って「卒業パーティー」が行われました。
全6コースの生徒さんが一堂に集まり、それはそれは賑やかな会になりました。
パーティーと言ってもとてもラフな感じで、みんな思い思い気楽に
飲んだり食べたり笑ったり、写真を撮ったり・・・等々。同じイラストコースでも
今まであまり話す機会がなかった人はもとより、他のコースの人達とも
名刺交換したり話したり出来て、とても貴重な催しになりました。
上田三根子さんやめぐろみよさんら、講師の方も参加して下さり
授業とは違ってうち解けた話を楽しんだり、原田さんや飯田淳さんに
イラスト付きサインを描いていただいたり。・・・嬉しい限りです(*^.^*)
10ヶ月の授業は長いようであっと言う間でした。色々な事があったけど
やっぱりものすごく楽しかったな〜と言う印象が強いです(*^.^*)
特に一緒に勉強してきたみんなが、とびっきり個性的で愉快だったので
後半は楽しさも倍増でした。感謝感謝。
最後までみんなで楽しく笑ったり話したり、「良いイラストレーターになろうね!」と
熱く誓い合ったり(注:お酒入ってます、もちろん(笑))と、楽しい夜でした。
パレットに通っている間は、本当に完全燃焼といえるほど
悔いなく頑張ってきたけれど、唯一心残りだった事を言えば
「10ヶ月も築地に通ったのに、一度もお寿司食べなかったなぁ」と
言うことでしょうか。
でも大丈夫!パーティー終了後、誰かが(←誰か・・・は周知の事実だが(笑))
「お寿司食べに行こう!」と言ったのを機に、とうとうみんなでお寿司屋へ!
場所が築地だからか、ずっと食べたいなぁと思っていたからか、はたまた
みんなで食べたからか、良くわからないけどこの夜食べたお寿司は
すごく美味しかったなぁ。(クルクル回っているお寿司なんですけどね(^.^))
もうこれでパレットに悔いなし、築地に悔いなし(笑)
そんなこんなで、ちっとも湿っぽくならず最後まで明るく楽しい
パレット奮闘録でした。「授業編」はこれでお終いですけど
近いうち引き続き「卒展編」を掲載していく予定です。
まだまだ続きますので、乞うご期待(^.^)v