〜5月のパレット奮闘録〜


初日の光景5月6日(木)「スクール開講」
イラストのお仕事を初めて早8年。しかし依然として仕事に
波のある状態の私は「このままではいかんだろう」と
一念発起。いきなりパレットスクールの門を叩いたのであります。

ここのイラストコースでは、売り込み方法やイラスト界の情報など
お仕事に即したノウハウを教えてくれるとの事。獅子は自分の子を
谷底に落とすと言いますが、子供がいない私はとりあえず
自分自身を谷底に突き落として、一から学び直すことにしました。

三角屋根の小さな小屋みたいな教室は、なぜか
魚河岸築地にあります。「そんなに人が来るのかしら」と軽く
考えていたのですが・・・。


心の準備なく教室に行ってみると、そこには50〜60名近い定員一杯の人数が
ぎっちり登録されていました。世の中にはイラストレーターになりたい人が・・・
沢山いるんだなぁ、やっぱり。
私は学校も職場も、果ては部活動からサークルまでずっとイラストとは
無縁の環境だったので(っていうか、どうしてそんな人が絵描きに???)
実はこれほど沢山の「絵描き、もしくは絵描きを目指す人々」を
目の当たりにするのは初めて。ドキドキです。

初日の講師はイラストレーターの原田治さん。某ミスドの可愛いキャラクターなどで
知られている方です。始終にこにこと穏やかにイラストで
仕事を取るための様々な方法をお話してくれました。
例えばどのような媒体でイラストが使われやすいかとか、「自分の得意分野を
最低ひとつは持ちなさい」とか、営業が苦手ならエージェントに所属するのも良いとか
(日本ではまだそうでもないけれど、海外では一般的な事らしいのです)
キャラクターイラストの売り込みのコツ・・・等々。
やはり私はまだまだ努力の至らない点が多かったと、初日からして思い知らされました。
頑張らねば。

周囲をパッと見ると、受講生の9割方が女性でした。年配の方も見かけたけれど
ほとんどが同世代の様子。カジュアルな服装の子が大半でしたが、中にはやはり
お洒落だなぁ〜と感心するような服装の子も。なかなか個性豊かな教室です。
外見よりも、みんなどんな絵を描く人なのかな。興味津々で、これからも通います。



あどちゃん、歌い描く5月13日(木)「亜土ちゃんとグレートな人生」
今日の講師には水森亜土さんが登場。子供の頃NHKの
「楽しい教室」でガラス板にいつもマジックやスプレーで
絵を描いていた亜土ちゃん。子供心に「なんて楽しそうに描く
人なんだろう。それにいいなこの人は、ガラスに絵が描けて」と
一種憧れの(?)感覚で見ていた亜土ちゃんが、目の前に!
もちろん最前列に座って講義を受けてみました。他のコースの
生徒さんもこの日は聴講にきていたので、教室は立ち見が出る
ぐらいの大盛況。亜土ちゃん、大人気です。

さて実際に見る亜土ちゃんは、まさに天才肌の人。
可愛くて楽しそうで(でもやっぱり年齢はわからない・・・)
音楽に合わせてジャズやブルースを歌いながら、両手で器用に
次々描いていく姿は、まさに驚愕の一言。2時間があっと言うまで
教室は思いっきり亜土ちゃんの世界一色に染まっていました。

あのスプレー缶ももちろん登場しましたが、間近でかぐと結構匂いが
強かったりして、それもまた新鮮な発見です(?)
亜土ちゃんは時々「キャハ」とか「キャホ」とか言いながら
本当に面白そうに描く人でした。テレビアニメ「ひみつのあっこちゃん」の
エンディングテーマ『あっこちゃん好き好きソング』も、実はこの人が歌ってます。
で、描きながらそれをみんなで大合唱して(と、言っても合いの手を入れただけですが)
多いに盛り上がる、大爆笑講義でした。

特に亜土ちゃんが言葉少なに言うセリフがいいんです。
「絵は目標をうんと上の、うんと高い人に合わせた方がいい」とか。
「皆ちゃんはこれから沢山のことを(パレットを通じて)拾得して
グレートな人生を送って下さい」とか。色々。
絵を描いていて目標の人を言うと、ほとんどの人が「無謀だ」とか呆れ顔をして
「辞めた方がいい」と有り難い忠告をしてくれます。それと同時に「堅実な人生を歩けば」
と、これまた有り難い人生訓も述べてくれます。「そうかなぁ・・・」と思うと不思議と気持ちも
小さくなるんですよね。でも亜土ちゃんの言うように「目標をうんと高く持ってグレートな人生」を
送るのも別に悪くないじゃないと思うと、何だか楽しい気分です。
今日はすごく元気をもらえた講義でした。

ミネコ先生の講義で5月15日(土)「イラスト基礎コースを聴講してみる」
パレットクラブスクールの特典には、聴講制度という物があって
例えば私の場合は所属しているイラストコースの他、デザインコースや
イラスト基礎コースの聴講が出来ます。(実技には参加できませんが)
本日は基礎コースの授業に潜伏。「どんな内容かな」と興味津々です。

講師は上田三根子さん。雑誌、ポスター、3Dキャラ・・・もう街中
至る所の至る物に、そのポップで可愛らしいキャラクターが使われている
大人気のイラストレーターさんです。(身近なところではハンドソープ
「キレイキレイ」のキャラがロングランヒット中)

明るく元気に、前半はご自分のイラストについてや、仕事のお話を
後半は基礎コースの人達が持参した作品ファイルを見ながら、一人一人に
適切なアドバイスをしてくれました。上田さん曰く「イラストレーターは
サービス精神が大事。見てくれる人を楽しませたり喜ばせる絵を
描こうとするのはすごく大切なこと」等を教えてくれました。

どんな仕事の依頼でも描いていくと、自分にとって勉強になるとか
印刷された物は距離が出来るから、自分の作品を冷静に見る機会になるとか
世間一般の人がパッと見て、すぐわかる様な絵を描くことが大事とか・・・等々
イラストコースとは違って、全体の3分の1〜2分の1位しかイラストレーター志望者が
いない基礎コースで、とても優しくやんわりとイラストについてを説いてくれました。

印象的だったのは、「お仕事は誰が見ているかわからない(故にどんなきっかけで
次の仕事が来るかわからない)」ことと「持続させることが大事」という話でした。
大ヒット作「キレイキレイ」のキャラクターも、元はと言えば全く違う雑誌イベントの
記念グッズを制作したことから、花○の方の目に留まったのだとか。
色々な裏話や使用している画材の苦労話などが伺えて、楽しい講義でした。

それにしても基礎コースはいいな。こうやって丁寧にファイルを見て貰えるし
来週はクロッキー帳持参で実技のレッスンもあるそうです。
何だか和やかに楽しんでイラストに接しているコースでした。



ヒロ杉山さんの講義で5月19日(水)「印刷のことも学びましょう」
水曜日はデザインコースの授業を聴講してみました。
イラストとデザインは切っても切れない縁なので
このコースの聴講は、たぶん色々と勉強になることも多いはず。

本日の講師はヒロ杉山さん。
その斬新なデザインは、ポスターや本・・・その他様々な物に
姿を変えて街中にあふれています。
ヒロさんはご自身の個展の度に、自費出版で本を作っているそうで
今までに制作した様々な印刷方式や綴じの本を持参して
「印刷の知識」について色々お話ししてくれました。

トムズボックスで初めての本を作って以来、本作りの楽しさに目覚めた
ヒロさん。次第に凝りに凝った本を次々作り出していきます。
その結果得た知識は「デザイナーになったら懇意の印刷屋さんを作って
おくと良い」と言うことでした。でもそれが実際にはなかなか難しいとも・・・。
自費出版は私も個展の時にした事があるのですが、これがなかなか
面倒くさくて手間のかかる物。それをものすごく楽しそうに
次々アイデアを出して作成し続けるヒロ杉山さんは、やっぱり根っからの
クリエーターなんだなぁと感心する事しきりです。物を作る人ってみんなものすごく
バイタリティーあるんですよね。パレットの講師陣を見ていても、そう思うのですが。


ヒロさん曰く「技術があるに越したことはないけれど、センスとアイデアで
いくらでも面白い物は作れる」とのこと。如何に人がやっていない事をするか・・・が
いいクリエーターの条件だそうです。とにもかくにもアイデアが勝負のようです。


和田誠さんに質問5月20日(木)「和田さんに質問してみよう」
イラストコース3回目の講師は和田誠さんです。
シンプルだけど、味のある似顔絵を描かせたら天下一品。3大新聞の連載を
始め、イラストレーターでなくても、その作品を知らない者はないと言うぐらいの
イラスト界の大御所。その和田さんが目の前に・・・!!
(↑最前列のやや真ん中に座っていたので、文字通り目の前なのです)

他のデザインや基礎コースに比べて、いつも大入り満員なイラストコース。
今日も立ち見が出るほどの大盛況です。そんなみんなの憧れと緊張を
知ってか知らずか、当の和田さんはすごく誠実で親切な方でした。
どうも断定的な指導や作品評価は苦手らしく、あらかじめみんなに質問を
書いてもらい、それに答える・・・と言う形式の講義でした。
スクール側が質問にざっと目を通し、だぶっているものをまとめて簡単に
約20項目ぐらいのリストにしてくれたのですが、和田さんはそれを使わず
なんとオリジナルの質問状をそのまま見て、一人一人に丁寧に答えてくれました。
その数約60人分。半端な量じゃありません。結果から言うと2時間の講義を
はるかに40分以上延長して、最後まできちんと接してくれました。感服です。

作品制作の仕方から、使っている画材、お芝居のこと映画のこと新聞連載の期日・・・
似顔絵のコツに失敗談、影響を受けた人物・・・等々。
お仕事が多岐に渡っているせいか、質問内容も本当に色々でした。

話の折りに度々出てきた言葉で「手を抜かないで、一生懸命やること」というのが
とても印象的でした。それが一番の仕事のコツだそうです。
「手を抜いた仕事はすぐ人にわかってしまう。イラストレーター仲間同士には当然
見抜かれるけれど、一般の人にもすぐわかってしまう。一般の人もクライアントも
お金を払うだけの作品を描いているかどうかを見抜くものだ」

この他にも印象に残った話は沢山。以下抜粋です。
 「イラストレーターはどんな仕事にも対応できるように、日頃から
(映画でも芝居でも)幅広く何でも見ておいた方がいい。家に籠もってばかりでなく
色々な所に出入りしたり、人にあったり、様々なことに興味を抱くこと」
 「作品のインスピレーションは、すぐに浮かんでくる物ではなく
長年の知識や経験の積み重ねによる物。映画や小説、エッセイなど色々な
物を読んだのが栄養のように蓄積されて、ある日ポッと浮かぶ物。
本も絶対読んだ方がいい」
 「自分の作品を客観的に見られることが大事。独りよがりの作品では
仕事に結びつかない。自分の中にアーティストも批評家もいる・・・と言う
状況を作れる訓練をすると良い」(作品を客観的に見られないと、苦言を言われた時など
しゅん・・・となってしまって、それでお終いになってしまう人も多いから。
悪い物は素直に受け入れて、考え直すことも必要)
などなど。

絵描きと言えども、家に閉じこもって絵ばかり描いていたらダメと言う事ですね。
講師陣始め、クリエーターにバイタリティーあふれる人の多いわけが
何となくわかったような気がしました。
日々是勉強。頑張ります。

最後に和田さんが知人の方から聞いた、印象深いお話をしてくれました。
「誰か一人から君の仕事をすごくけなされても、それで落ち込んじゃいけない。
一人がけなしたら、何処かで一人すごく誉めている人がいるんだから。逆に
10人に誉められても、有頂天になっちゃいけない。何処かで10人が
けなしているんだから」
・・・身につまされる言葉です。座右の銘に致します。

さてイラストコースの講義も3回目、しかも女性率約9割ともなれば、あちこちで
ちらほら声を掛け合う姿などが見られます。今日はクラスのまとめ役に
立候補する人なども出て、今度名簿作りをするそうです。
段々「教室」らしい雰囲気になってきました。こうやって話が出来る人が
増えていったら、通うのも別の意味で楽しくなってくるかもしれませんね。



ハプニング発生5月26日(水)「ハプニング授業発生」
今回はデザインコースの聴講です。講師はまだ若い
ギャラリー経営者の方。テーマは「デザインとアートの関係」について。
どんな話が聞けるかドキドキ・・・だったのですが、これがちょっと
「あれれ?」というような授業でして・・・。パソコンやDVDを駆使して
そこのギャラリーに属しているアーティストさん達の作品を紹介したり
彼らの「制作コンセプト」を伝えてくれたのはいいんですが・・・
延々作品紹介だけなんです、内容が。
講師の方の意見があまりなくて、延々淡々と文章を読み上げて
映像を見せる授業・・・爆睡者続出です。こりゃ大変だ。

かれこれ開始から1時間も経った頃でしょうか。最前列にいた女性が
「この内容の授業を、最後までされるんでしょうか?」と、みんなの疑問と不安をいきなり代弁!
「作家の言葉をテキスト通り話すだけで、一体私達に何を伝えようとしているんですか」の言葉に
一同深く共感。「私はギャラリストで批評家じゃないから(自分の言葉は必要ない)」と
いくら先生が説明したところで・・・納得できませんよねぇ。やっぱり。
呆れかえったその女性、とっとと荷物をまとめて帰ってしまいました。
「こんなの授業じゃないですよ」との捨てぜりふがなんとも痛快。そしてふと気がつくと
周りにもかなり空席があって、みんなが途中退出したことが伺えました。

私達は講師を選べないけど、今までが良い先生に当たっていたんだなぁと
改めて感じました。中には申し訳ないぐらいコミュニケーションを取るのが苦手な
先生もいらっしゃるようです。まぁこんな日もある。



あこがれの高田さん5月27日(木)「イラストは過酷ないばらの道なのよ」
イラストコース4回目の講師は高田理香さん。
すごくお洒落でセンスのいい、フランステイストのイラストを
描く作家さんで、私の憧れの人でもあります。
イラストレーターならば、高田さんみたいな絵を描きたい!!!
でも悲しいかな、まるでタッチが違う私はせめて高田さんの
お話を伺って参考にするまでなのです。

高田さんはものすごくテキパキお話をされる方で、きっと
自分にも厳しい方なんだろうな・・・と、話の端々から感じ取れました。
挙手により、私達の大半がイラストレーターを目指していると
わかった高田さん。その道を生き抜く覚悟について話してくれました。

イラストレーターはもちろん絵が好きで、描けて、上手で・・・だけではダメで
(技術的な物は後から着いてくるから良いとして)問題は「その人の持っている物(中身)」が
すごく大事だとか。絵は描くとその人自身が出るそうです。だから持っている物も
知らず知らず出ます。それだけならいいけれど、何も持っていないとからっぽの物が
出てくると言うから恐ろしい。
「イラストレーターを続けるつもりなら、持っている物をしっかり持つこと。
すり減って空っぽになった絵には、仕事は来ません」とピシャリ。

「自分の中の自分にしかない物」を持つことが大事だそうです。
それに好奇心と探求心。「受け手(世間一般の人々)と同じ様な生活をしていたら
人を感動させたり、振り向かせるような作品はかけませんよ。魅力ある物を
提供するためには人一倍努力して、人より何歩も先を見たり知ったりする事が必要」と。
長い年月をかけて、流行にも人の意見にも流されない「自分の描きたい世界観(個性)」を
持ち続けることが大事とも。

その他にもどんな志を持って作品を作ればよいかとか、ご自身がイラストレーターに
なった経緯や使用画材、仕事作品紹介など、とても密度の濃い授業になりました。

まぁとにかくイラストレーターというのは、見た目ほど華やかでもなく、自分のやりたい
仕事なんて「ほんのこれっぽっち」しか分野がなく、ほとんどが描きたくない物だったりして
その上収入は不安定だし、仕事の予測はつかないし・・・と、「思った以上に覚悟がないと
出来ないですよ。今他に仕事を持っている人は、その仕事が出来るだけでも凄い事だから
そっちを大事にした方がいい」ぐらい、過酷な道らしいです。
「女性ならお金持ちと結婚した方がいいですよ〜」とも(笑)
若い頃は「絵が描けて、発表(仕事)できるならお金なんていりません」と言っていた
時期もあるという高田さん。「でも今は違います。お金は大事だよ〜♪」と言って
教室中を爆笑の渦にしていました。

私にそれだけの根性があるかどうかは、甚だ疑問です。(たぶんないよ)
でもやっぱり私も絵を描く以外は何もできないから、いばら踏みながらも
気が済むまで突き進んじゃうだろうなぁ・・・。そう言う無謀さはあります。

最後に持参した作品の講評をしていただきました。この日は大体3分の1ほどの
人達が作品を持ち寄り、それぞれ2〜3枚壁に貼って急きょ作品展のような賑やかさ。
みんなで作品を見ては「もうお仕事されてる方もいるんだー」とか「この絵可愛いねぇ」とか
すごく盛り上がりました。本当に色々なタッチの絵を描く人がいるんだな・・・と、
もうワクワクです。高田さん曰く、私の絵は「これは珍しい作品が出ましたね」と。
(『サンタクロースの目線』と『星空制作中』を展示したのですが)
「女性で俯瞰図を描く人って珍しいんですよ」との事。(そうなんだ)
ストーリー性のあるところは認めていただけたのですが、もっと絵の中で
強調したい部分を目立つようにした方がいいとも言われました。今はちょっと
(主張したいものが)控えめなので、構図でも色でも工夫してもっと絵の中で
目立たせると良い、例えば文章がなくても絵だけ見てわかるぐらいに・・・との評。

確かに・・・最近文章に頼っているなぁと薄々思っていたので
身にしみる助言でした。今日の講義内容をしっかり身につけて、私もいつか
高田さんみたいな作品を・・・描けないだろうなぁ、やっぱり。
でも頑張ります。

ドキドキしながら通い始めたスクールも、沢山ためになるお話を
聞きつつ、1ヶ月が過ぎました。来月以降もお話を伺ってみたい講師の方が
目白押しで楽しみです。「パレット奮闘録」は来月も元気に続きます!
乞うご期待。