〜9月の奮闘録〜


常盤さんの授業9月1日(水)「貧乏話に共感の嵐」
今日のデザインコースの講師は、アートディレクター&写真家の
常盤響さん。教室の壁一面に大きく引き伸ばした写真作品を
ぐるりと貼った様は、さながら即席ギャラリーのようで壮観でした。

常盤さんは主に「今の仕事に至るまでのなれそめ」を話して
くれたのですが、それがもう大爆笑の面白さ。
特に20代半ばの貧乏時代には、共感する箇所も多く
「味の濃いレトルトカレーを薄めて3回に分けて食べてたけど
(そうと知らない)友人が、遊びに来た時それを1度で食べてしまって
怒って半年ぐらい喧嘩してた」なんてうち明け話も飛び出たりと
笑いが絶えない授業でした。


初めはイラストレーターになりたかった常盤さんは、紆余曲折を経て
ADになり、写真を手がけ・・・と、今では写真の仕事の方が多い状態だとか。さらに
「こういう仕事は意外とメンタル面が大事だよ。フリーで仕事をするのは
色々と不安な事も多いし波もあるけど、(波は)自分の責任ばかりじゃないし。
儲からない時に、どれだけへっちゃらな顔をしていられるかが大事。ネガティブになると
作品も暗くなるから、まあまあ呑気に構えている方がいいよ」と、なるほどなぁと
思えるようなアドバイスをしてくれました。

写真家もイラストレーターも、表現の仕方こそ違っても
大変さの度合いはほとんど同じみたいです。
他にも持参したトートバックから、まるでお店が開けそうなぐらい沢山の
(仕事で手がけた)CDジャケットや本(の装丁)を出して、みんなからの質問にも
次々と答えて下さいました。第一線で活躍している格好いい人達も、若い頃はみんな
苦労して立派になったんだなぁ。(常盤さんはまだ若いけど)
何だか励まされる授業でした。


熱心な原子さんの授業9月2日(木)「イラストの道はやっぱり長く険しい・・・」
今日の講師、イラストレーターの原子高志さんの
課題内容は「自分の好きな世界観」。漠然とした
テーマのせいか、今回は様々な作品が飛び出して
面白い光景になりました。

自分の好きな物を描いた人、私のように「人が空を飛べたら
楽しいだろうなぁ」と夢の世界を描いた人など、様々です。
原子さんの講評は、どちらかと言えばシビアで厳しい口調。
でも決して毒舌というわけではなく、どうやったら
作品が良くなるかを突き詰めてのアドバイスなので、
きつくてもすごく納得のいく評価でした。
私の作品は「普通すぎてつまらない」から、もっと
意外性のある色使いに挑戦してみた方がいいとの事。
うーん、なるほど。そうかもなぁ。

噂通り夏休みを過ぎたパレットは、生徒数がかくんと減って
空席が目立ってきました。
それでも課題をこなしてきた人達は、すごく熱心です。それに応えて
2時間の講義時間を30分延長して、熱心に講評して下さった原子さん。

わずかな休憩時間中も、壁に貼ってあった作品や、大量に持参して下さった
ラフなどにみんなが群がって質問責めでした。その作風はものすごく線が綺麗で
細かくて、センスがあります。ラフ(下書き)なのに、驚くぐらい丁寧に描かれていて
ビックリです。そのまま額に入れたら、立派な作品になるぐらいの精密さ。
みんなが釘付けになるのもわかるなぁ〜。
かくいう私も「この線、どうやって描いているんですか?」と聞いてみたり。
(なんと授業後に実際に描いてみせてくれました。すごく親切な方でした)

そんなこんなで、延長授業後も質問責めにあったり、私含め数人の
作品ファイルを見て下さったり・・・で、終了した時は23時半近く!
なんと約4時間、通常の2倍もの時間、授業をして下さった計算になります。
う゛う゛・・・ありがたい。反面、申し訳なくも思ったりです(T.T)

私のファイルを見て「アクリル画のさっぱりした雰囲気のイラスト
(子供っぽい物ではなく)で描き進めてみたら?」とアドバイスしてくれました。
ペン画とアクリル画の作品を見比べて「同じ人が描いているように見えない
(個性を出せという意味)」とダメ出しされました。そして「今はまだ色んなタッチで
悩む時期じゃないでしょう・・・」とも。
原子さん曰く「(どんな作風になるかは)ある日いきなり
吹っ切れる時が来るもので、それには長い時間かかるよ。1年、2年じゃない。
でもそう言う時は必ず来るから、それを信じて今はひたすら描き続けるしかない」と
厳しいイラスト界事情を交えて、色々アドバイスしてくれました。

イラストレーターになるのって、今更ながらすごく厳しいんだなぁ。しまった(>.<)
ここに通えば通うほど「私の絵って全然ダメじゃん。つまんないじゃん」って
わかってきます。今までよくこれでお仕事を貰えたなぁ。私を使ってくれた
出版社の方々の寛容さと勇気にビックリ・・・基、拍手です。
今も十分厳しいけど、この先も時代の波を上手く乗り切ったり
他の追従を許さないほど、自分の個性を出した作品を作り続けるために
「幾つになってもみんな必死だよ」(by原子さん)な状態みたいだし・・・。
それでも原子さん曰く「恥かいても凹んでも『なにくそ』と思う気持ちの
あることが大事なんだよ。本気の気持ちを忘れないで
頑張り続けて下さい」と。

そんなわけで、私は呑気&本気でまだまだ頑張ります。
それにしても今回は、すごく勉強になった講義でした。
改めて原子さんの誠意に敬服ですm(-.-)m


売り込み大作戦9月9日(木)「売り込み大作戦の顛末」
新潮社装丁室の大森賀津也さんが作品ファイルを見て下さる・・・と
言うわけで、本日はみんなファイルをどっさり持ち寄っての売り込み大作戦です。
実を言うと大森さんには以前にも、作品を見ていただいた事があるので
お会いするのは今日で4回目です。とは言え、天下の新潮社には
年間で400人程のイラストの持ち込みがあるとか。こちらが覚えていても
先方にはなかなか覚えて貰えない・・・と言うのが、悲しい現状であります。

しかし例え大森さんの記憶から、私の名前や顔や作品が(何度も)
こぼれ落ちたとしても、挫けることなく営業活動は展開されていきます。
新潮社に持ち込みに行くと、お仕事の合間に見て下さるせいか
ほんの二言三言の会話で終わってしまうのが常ですが、さすがに今日は
講師としていらしたので、一人一人丁寧に作品評をして下さいました。
ところがこれが思いの外、厳しい講評。「本作りの現場」にいるプロの目で
ほんのわずかな不自然さも見逃さず、バッサバッサと切り捨てて・・・
もとい、評価をしていきます。

講義はまず「本の装丁について」から始まり、次いで「持ち込みについて」の
参考になる話を色々として下さいました。その後で作品評です。
みんなのレベルや作品のタッチ等によって、注意点はいくつかの
パターンに別れました。

例えば「イラストレーターになりたいんですか?」と言われたり
すごく上手い人でも「既視感がある(誰かの絵に似ている)」と言われり・・・。
そう言われた人達は、この先かなり厳しい現状を打破しないといけないので
大変だなと思いました。が、私も呑気に構えてはいられません。
なんと「(この線画)デッサンが狂ってますよ」と、痛恨の一撃。
今更ながら一番の基礎がおかしいとは・・・愕然(@o@)

時間がないので一人に対し、ほんの2〜3分しか講評出来ない状態でしたが
それでも、線画イラストの落ち度だけ言われてお終いでは納得いきません。
だって装丁と言ったら、アクリル画(カラー)が本業。そっちの評価はどうだろう・・・
と言うことで、例の如く授業後にお願いして再度作品を見ていただきました。

故に師曰く「こういう絵って破綻しにくいんですよね」とか。(破綻って何?)
悪くないけど問題はやっぱり「デッサン力」だとか。「例えばこの自転車の絵は
一見良く描けているように見えるけど、よく見ると構造が変ですよね?
例えば現実の世の中にあったら、立っているのがおかしな状態の自転車とか車
実際にいたら不気味な犬・・・そう言う物が『デッサン力がおかしい』と
見なされるんですよ。写真や資料をよく見て描くのも大切だけど、一番大事なのは
物の構造を理解して描くことですよ」と。そうか。
なるほど納得、確かに資料に頼りすぎて描いてるもんなぁ。実物知らずに(-.-;)

大森さんは大絶賛することもなく、誰一人のファイルも持ち帰らずに
授業を終了されました。
それじゃあ私達の売り込み熱意の矛先は、一体何処に向ければいいのでしょう?
実はこの授業、続きがあって「(今日指摘された点を直した新たなファイルを)
新潮社まで持ち込みに来て下さい。そこから全てが始まるんですよ。
でも、そうは言っても毎年1学年で10人も来ないんですけどね」と大森さん。
確かに授業後、熱心に電話番号を聞きに行った人は10人にも満たなかったような。
みんなこうして挫折の味を知っていくのねぇ・・・としみじみ思った夜でした。
かくいう私の持ち込みはいつになることやら。
でもさすがに5回も会ったら今度こそ覚えて貰えるかなぁ、顔と名前と作品(笑)


ラジオのような授業風景9月15日(水)「DJ先生、さすがの語り口」
今日のデザインコース講師はDJ&ミュージシャンの田中知之さんと
ゲストのかじのしょういちさんです。田中さんは「ファンタスティック
クラッシック マシーン」と言う名で音楽活動を行っている傍ら
東京FMでDJもやっている方なので、その語り口たるや軽妙で
かなり面白く、授業と言うよりはまるでラジオ番組の公開録音を
見ているような楽しさでした。
DJになったなれそめや、音楽談議、デザイン談議、最近の事・・・等
多岐に渡って色々な話を繰り広げてくれました。
あんまり話題が広範すぎて、とりとめない内容になってしまったのが
ちょっと勿体ない気もしましたが、聞いていて面白い講義でした。
(このイラストはちょっと手が短くて変かも・・・。ごめんなさい)


大爆笑授業!!9月16日(木)「抱腹絶倒の大爆笑授業行われる!」
今日の講師はイラストレーターの安斎肇さん。
安斎さんはリゾッ茶(←字があっているかわからないけど)のキャラクターや
TVの「タモリ倶楽部」などで知られている方なので、みんなの間でも
話題がかなり先行していて、ずっと楽しみに待たれていた講師の一人でした。
結果から言うとその期待を裏切らず、見事なまでに面白い授業が
展開されました。

今まで行ってきたお仕事を中心に、スライドを見ながらの説明は
安斎さんの独特の人柄もあってか、のんびり優しいその一言一言が
絶妙におかしくて、教室中爆笑の嵐でした。
思わず吹き出さずにいられない、ナチュラルな呆けやつっこみは
いつしか「何を話してもおかしい」という極地まで達し、もうみんな
笑いが止まりません。こんなおかしい授業は荒井良二さん以来だけど
あの授業を遙かに凌ぐ可笑しさかも。結果、すごーく為になると言う事や
「ああ、勉強したなぁ」という事には至らなかったものの、楽しさは
ダントツNO.1の講義でした。

その優しい人柄に甘えて(?)、授業後に作品ファイルを見ていただきました。
安斎さん曰く「モチーフ的には面白い物を持っているから、あともう一息なんだよね。
(もう一息で)殻を破ってかぶらぎさんらしい作品を描けるような気がするけど、
それにはどうしたらいいかなぁ・・・(しばし沈黙)。でもたくさん描いて行く内に
いつかきっと描けるようになると思うから頑張って下さい」と優しく励ましてくれました。
いい方です。

今日は幸い、原田治さんも授業後にパレットに残っていたので
(原田さんはパレットの責任者なので、良く教室にいらっしゃるのです)
お願いしてファイルを見ていただきました。師曰く「情景を描いた作品が面白い」との事。
「途中で体が切れている人物画は、なるべく全身を入れた方がいいと思うよ」と
キャラクターイラストが得意な方ならでは・・・と思えるアドバイスもしてくれました。
原田さんの優しい笑顔と語り口に癒される思いです。

最近パレットの先生方が心なしか「超辛口」続きだったので、まるで
モグラたたきのように叩かれ凹まされ続けてきた私達にとって
今日は珍しく「癒し系パレット」の日でした。
優しい話は(私みたいなタイプには)身に堪えないから善し悪しですが
たまにはこんな日があってもいいよねぇ〜と思える、そんな優しい秋の一日でした(笑)


編集サイトの話、いろいろ9月22日(水)「編集の側から覗いてみれば・・・」
今日のデザインコース講師は、筑摩書房専務取締役の松田哲夫さんです。
TV「王様のブランチ」の書評コーナーを務めていたり、赤瀬川さんのベストセラー
『老人力』を編集した方・・・と言う事で、お顔を知っている人も多かったようです。
何はともあれ、この日は編集サイトから見た雑談を淡々と語って下さいました。
私なりに今日の授業で得た結論は「本って奴は売れてなんぼだからねぇ。
イラストレーターも本を作る時は自分のポリシーよりも、確実に売れる本を
工夫して手がけないと出版社は相手にしてくれないかもねぇ」と言う所でしょうか。

それにしても松田さんが見せてくれた、電子BOOKは「普及したら侮れないかも」
と思える代物でした。先日ミュージシャンの田中さんもipodの話をしていたけれど
音楽や本がネット配信の時代になったら、当然CDジャケットや装丁の仕事は
減少するわけで・・・。そうなったらイラストレーターの仕事の場は
どうなるんでしょうね。何か別の分野に、活躍の場を見いだすんでしょうか?
それとも・・・。でもまぁ現にこのHPだって、すでに紙媒体じゃないですもんねぇ。
それなりに適応して行くんじゃないかしら・・・なんて、気楽に考えてみるしか
ないわけです。どうにかなるさ・・・多分(笑)


はじめて褒められた授業9月30日(木)「たまには誉めてもらいたい」
今日の講師はイラストレーターの河村要助さんです。
ひょろっとした線の細さが、柔和な雰囲気を醸し出している方でしたが
課題としてみんなが持ち寄った作品を見る時は
「このままの絵じゃダメだよ」とか「見る人の気持ちを惹く絵を描かないと
いけない」とか「既視感がある。もっと個性を出さなくちゃ」など
「ここはこういう学校だから、あえて言わせて貰うけど・・・」とズバリバサリ
手加減のない厳しさでした。
(ちなみに今回は自由課題。各々好きな作品2点を持ち寄りました)

いつも色々な先生から、散々打たれ続けている私。
自分の番が巡ってくるまで、正直言ってドキドキです。
この日持参した作品は、HPでも日替わりで紹介した
かぶのイラスト(題名「漬け物になる運命」)と
ペンギンのイラスト(同「ペンギンで遊ぶ」)でした。
私の簡単な制作意図を聞いた河村さん。作品をじっと見てから
おもむろに一言・・・・

上手いですよ。良く描けてる。
マチエール(この場合はバックの塗り方や色使いの意)も
工夫されてるし、いいですよ」と、珍しくお褒めの言葉が!!

「わーい、やったぁ」と心の中で喜んでいると、続けて「(かぶの絵を見て)目の付け所は
いいと思いますよ。こういう物をこんなに一生懸命描く人なんていないしねぇ・・・」と。
思わず「へっ!?」と聞き返したくなるような講釈はあったにしても、それもまぁ
誉め言葉として受け止めておきましょう(笑)
強いて言えば「構図や色使いをもっと工夫してみると良いかも。
もう一息ですね」と。

最近心なしか「もう一息」と言われる事が多いような・・・
それでもたまに誉められると、人間やっぱり嬉しい物ですねぇ(*^.^*)
もちろん他にも誉められている人は何人もいたし、「もう一息」なんて
言われずに堂々と太鼓判押して貰った人もいたわけですが、それでも
悪い気はしません。今日は久しぶりにウキウキと幸せな気持ちで
帰途につきました。たまにはこんな嬉しい日もあります。