| コイカクシュサツナイ岳〜トヨニ岳 その2
(ニシュオマナイ〜トヨニ) |
4/30 昨日のバテ具合で弱気になっていたが、しばらく空が持ちそうなので進める気がしてきた。下りるにも進むにも、神威までは行かねばならないのだ。 ニシュオマナイの南斜面に出ると、西風がやや強い。西の空はまだやや明るい。踏み跡を見失ったが、視界良好の下りなので背の低いハイマツ帯を好き勝手に進む。登りは下手をすると消耗するだろう。 下りきってから1220近辺が猛烈なヤブ。小さいアップダウンの続く潅木とハイマツのミックスで岩場でもあり、距離はわずかだがなかなか手ごわい。ここを過ぎると1310まで緩やかに登る。十勝側の雪庇が安定している。 1300付近から雪が舞いだした。視界は良好、風も強まってはいない。首を傾けないと拝めない神威への登りは急に見えるが、気温が低いせいか案外楽だ。
夏尾根の合流点までアイゼンなしで登れた。ここまでは風が通りそうなので、冬でも雪は少なそうだ。エスケープを取るか、進むか。背後のペテカリは霞んできたが、風は弱いし視界も利くので進む事にする。
神威への登りはアイゼンが快適に効く。急に雪山になった。ピークに立つと尾根の南、ソエマツ沢から強風が吹き
上げてくる。南側はすっかり曇っているが、目指す東側はしっかり見えている。連日の疲れもあるし、今日の行動は1468までか。
下りも雪が多く、アイゼンが活躍する。カンバのうるさい斜面を下る
途中、単独の男性とすれ違う。トヨニからコイカク、と聞いて日高を熱愛するFさんだと知る。(実は、彼の予定を聞いて今回の縦走を決意したのだった。)1468は幕営不適で、張るなら最低コルまで行った方がよい、との情報をもらう。ゆっくり話したかったが、空が気がかりでそそくさと別れる。 Fさんに活力をもらったのに、程なく風と雪が強まり、視界も悪化し、一気に前進する気力を
失う。1468手前の斜面に無理矢理平地を作って幕営。雪が少なく、すぐに枝が覗いて苦労する。ブロックを積んだので風
は除けられるが、湿った雪が体温を奪って寒かった。 明日は晴れの予報。楽しみだ。
ニシュオマナイ6:10-8:17夏尾根8:26-8:54神威9:00-10:501400
5/1 1468へのリッジは今日で正解。一人がやっと通過できる幅だが、両側が切れ
落ちていて凍っていたら厄介だろう。何より、怖さを知らずに通過してはもったいない。ピークで神威・ソエマツの勇姿を拝む。
今日はひときわ空気がきれいだ。(!この時、フィルムをセットし損ねたことを知らずに空撮りしていた。一番感動的な景色を撮り損ねるとは・・・)
下りは岩稜帯で、高山の雰囲気。神威方面から雲が湧いてきたが、天気には影響なさそうだ。ソエ
マツ直下までの区間は、今回で最も雪が多くて歩き易かった。至るところに幕営可能だ。 1420からの登りは、前半は凍り付いていたら緊張しそうな岩場で、後半はカンバも出てきて沢の最後の詰めのようなうるさいブッシュ。気温が低いのが幸いだ。1560の肩からが案外遠く、西峰で小
休止。ガスの切れ間から覗くソエマツ・ピリカが幻想的だ。
ソエマツから南はすっぱり切れ落ちたソエマツ沢からの横風を浴びながら進む。尾根の日高側に比
較的はっきりした踏み跡がついていて、ヤブもさ程ではない。が、五日目だけ
あって足の踏ん張りが利かない。プラブーツの中までひしょ濡れだし、スパッツはジッパーが壊れ、用をなしていない。
1534と29の間は高山風だが、29の南はハイマツ帯でトレースは判然としない。
1471付近は巨岩が連続し、なかなかはかどらない。今日はエゾシカの足跡が目
立つ。 いつしか雲が空を覆い、かなり暗くなる。振り返ると神威はおろかソエマツの頭にも雲がかかっている。ピリカへの登りは踏み跡が読めな
い上、下の方は尾根が広いので、ガスられると困る。
ハイマツは浅く比較的登りは素直だ。強い横風の中、幸いガスに巻かれる事なく、西峰を経てピリカ
のピークに立つ。「ピリカ、シリ(なんと美しい)!」と言いたいところだが、暗雲がたちこめる。 テントを出した途端、強風にあおられる。仕方なく南コルまで下がろうとパッキングしていると、西の空から青空が
迫ってくる。一気に雲が抜けて山並みが明るくなった。なんてこった。 ソエマツの東北東尾根上1310にも、ピリカ北東1449と同じような禿げ斜面を発見。山火事跡、それとも宇宙人の着陸地か?
多少風が強くても、最後の晩はピークで過ごしたい気持ちが勝り、結局ピークで幕営。遥かコ
イカクからの稜線を辿ると、感無量だ。
14005:50-6:0814686:18-8:58ソエマツ西峰9:17-10:56153411:15
-14:07ピリカヌプリ
5/2 今日も見事な快晴で、感謝感謝。史上最強の異臭を放つ靴下を履くのは抵抗
があるが仕方がない。臭いついでに、幾重にラップしても匂う自分の排泄物とも今日でおさら
ばだ。 ピリカの直下はかなり急だ。右手には日高幌別川の断崖が口を開ける。一気に300m下って
振り返ると北望とは違った鋭い山容だ。 1384まで小コブが連続するが、思うように足が動かずもどかしい。先の下りのせいか、或いは疲労の蓄積か。 が、1500への登りでアイゼンを履くと一気にリズムが良くなる。ここは急だがいい
具合に凍り付いている。上空には薄雲だ。1512は吊り尾根なのになぜか低潅木の中。ここからトヨニ北峰までは、十勝側に大き
く張り出した雪庇上を快調に歩ける。 穏やか過ぎるトヨニ北峰に着く
と、地面が全て出ており、3月とは全く異なった光景。縦走終了の一抹の寂しさが突然湧き上がってくる。苦しい場面が殆どだった
のに・・・
トヨニまでは部分的にしか雪を使えない。下山は、迷った末国境稜線経由を
選ぶ。勘のない道を使うのを避けたかったのだ。 冬に苦しめられた危険区間(1251の北)はその存在すら忘れさせる「夏モード」に様変
わりしている。国境稜線上はササと低潅木のブッシュで、部分的に獣道らしきト
レースが見える。極力十勝側の雪を使うが、暑さは相当だ。今日は十二分に水
を持っているので安心。 いつも使う直登尾根下降点(1115)には辛うじて雪が残っているが、尾根を下るうち
に3m級のササに視界と身動きを奪われ、ルートを見失う。仕方なく沢へ下りる。案外、水量が多くて最後の最後に沢シューズに履き替える。気休めに、インナーブーツに沢水を入れてゆすぐ。思ったほどルートを外したわけではなかったようで、最後はトンネル出口の真横に出た。
ピリカ5:43-6:3213386:45-8:1915128:39-9:41トヨニ
北10:07-12:521115(国境J)-14:33野塚トンネル
中下:稜線北望 下:あとは下るのみ 印象: トヨニから南は夏山。国境稜線を外すと一気に深いササ薮なので、ガスの時には要注意。
トイレ: 長期縦走時は、茶筒にでも入れて持ち運ばないとつらい。
赤すぎて気味の悪い朝焼け。高曇りで雪にもなっていない。どうやら体調は快方に向かっている。昨晩何も食っていないので、朝から米1合を平らげる。
風雪の神は一晩で遊び飽きたのか、明け方にはロートが見え出した。天候回
復の過程が一番感動的だ。が然やる気が湧いてくる。
一晩中風が強く、時々意味もなくポールを押さえる。テント内もかなり冷え込んで、殆ど眠れない。日が
昇ると風は収まり、睡魔が襲うが下山日の喜びで押し殺す。
1338までは極めて浅いヤブで、「道」
に近い。腕力にものをいわせる事もない。山に慣れきったせいか、最終日という実感は湧かない。