雨上がりの林道は蒸し暑い。巨大な砂防ダムを過ぎ、第5岩内橋の手前でウエダ川を分ける。水面は濁り気味だ。奥に伸びる細い林道は路面こそボロボロだが地図上の終点からさらに左岸に渡り、500m程続いている。突然林が目の前に立ちふさがり、林道は終わる。切り立った崖の上なので、ササ薮を漕いで540二股から本流に下りる。
河床の岩は全体に黒っぽい。小函が連続するが殆ど中から通過できる。
600を越えると岩は白く、そして小粒になってくる。高曇りで単調な沢歩きが続き、気分が乗ってこない。所々斜面が崩れているのは、台風の影響か。
800を過ぎ、階段状に高度を稼ぐ。茂みの中を流れる沢はいつまでも暗く、奥に控える勝幌はガスに覆われたまま。やがて、ガスを身に纏う。細かい霧滴が肌に冷たい。単調な景色に飽きてきた。雨粒が落ちたら撤退だ。
やや開けた1050二股を黙々と通過。流れは一段と細くなる。1180で小滝状の左股に入ると、その先で急にV字の樋状滝になっている。岩盤が脆すぎるので直登を断念し、手前から左岸の潅木帯を高巻く。ここを越えると再び穏かな流れだ。
1450で水は涸れ、あとは草の生い茂る沢状地形をひたすら詰める。ガスの切れ間が覗くと、先ほどまでの弱気の虫はどこへやら、だ。夥しい虫達に囲まれるが、幸いスズメバチの来襲もなく、獣道を這いつくばうように進み、稜線に出る。
案外明瞭な稜線上の鹿道を北上する。1750から上では手強いハイマツとの押し合いだ。東峰に立つと、気の早いナナカマドの赤が目に飛び込んでくる。勝幌までのハイマツ漕ぎはピークが見えているだけに厳しく、消耗する。
後ろを振り返ると、午後の日に映える東峰の紅葉が瞼に残る。
勝幌に立つ。下界へと流れる雲海の動きは意思を持っているかのようだ。日没前、巨大な十勝平野のスクリーンに影勝幌が投影され、そのスケールの大きさに圧倒される。
夜にはガスったため、話題の火星にはお目にかかれなかった。朝焼けも空振り。日の出と共に雲が切れ、今度は西の札内に勝幌の影。
本峰北斜面の紅葉はわずかな面積だが、そこだけ燃えているようだ。マルハナバチの飛び回る沢に下りると曇り空で歩きやすい。予想通りの平凡で長いだけの河原歩き。険しい訳でもないのに殆ど手つかずの沢が平気で残っているのはさすがだ。開拓の手が入る以前には、こんな雰囲気の川がきっと沢山あったのだろう。
危険箇所がないだけに、下りでの油断は禁物。時々大声を上げて気を引き締める。蝉時雨の林道に戻ると、ようやく一安心だ。
('03/8/26〜27)
写真上:黒い河床 中:影勝幌 下:圧巻のぐるぐる雲