広尾岳(中広尾川)

例の滝は何処?


 又吉老人から「きれいな滝がある」と聞かされ、矢も盾もたまらず中広尾川を目指す。コイボクシピロロ川伝いに山フンベの集落を抜け、さらに奥へ。孵化場を横目に林道を走ること8km、310地点まで入る。車のドアを開けた瞬間、格別な冷気に身震いする。台風の通過で、一気に秋が深まったようだ。

 里に近い沢の常で、集材道跡を辿る。410右股の滑滝は紅葉にはやや早いが、気持ちを穏かにしてくれる。沢の「どんつき」に構えるのは1176から伸びる東尾根か。450は作業道が入り組む伐採跡地で興醒めだが、秋らしい凛とした空気に心まで引き締まる。

 580を過ぎると沢登りの様相だ。澄み切った上空を縮れ雲が凄いスピードで流れて行く。小滝の連続

 10mに満たない小滝をいくつか登って行くうち、660でハング状の10mの滝に突き当たる。左岸の直近に崩れた鹿道が見えるが、危険すぎる。少し戻ってから20mの高巻きでクリアする。690二股で右に90°折れると陽光に包まれ、気が楽になる。核心部を越えると、あとは高度を上げるだけだ。

 870では帰路と違う経路を取ろうと、敢えて左股に入る。1000で水は涸れ、50mほどササのトンネルを潜って進む。高度差にして残り100m余りは背丈を越すササ帯に難渋する。真夏には耐えられないだろう。ようやっと、1186に出る。三度目の正直で初の晴れ間である。

 一休みしようと何気なく南を見やると、逆光の中に大きな角が二本。ハイマツの上に雄鹿のシルエットが浮かび上がる。一体だ一面のハイマツ帯が鹿の身体で、そこからヌッと首が飛び出ているような錯覚にとらわれる。フィルムを交換し終えて顔を上げると、既に立ち去った後だった。

 広尾岳までは鹿道の案内で楽に歩ける。頭の染まりだした勝幌が東に張り出す。遠くは1967か。さすがに秋風が冷たいが、心地よいピークでのひと時をいつまでも享受したい気分。

 下りは1160のコルからカンバ帯の鹿道を伝って沢に出る。940で二股に出る。登りなら、ここで涸れ気味の右股に入れば広尾岳への最短コースだ。滝の下りも問題ない。眼下に広がる広尾の街と太平洋の雄大さ、そして秋らしい陽気に誘われ、思わず叫びだした。

('03/9/16)

写真上:660の滝(奥) 下:ハイマツと鹿神

  • コースタイム: 
     車(310)5:33-6:18450-7:086407:17-8:18870-9:0911869:19-
     9:50広尾岳10:23-11:04870-11:5158012:04-13:05車

  • 印象: 林道は310まで問題なし。沢の見せ場は700まで。南面なので後半の薮漕ぎを覚悟しましょう。 

  • トイレ: 広尾の市街地が最終。