ペテカリ岳東尾根

屈従の尾根歩き

   

 11/1 
 麓は一面枯草で、雪の気配すらない。ピッケルを車に置いて出発。上で雪が取れない状況を想定し、6l強の水を担いだせいもあって足が進まない。おまけに夏より暑い記録的な高温。一体、どうなっているのだ。

 ポンヤオロ付辺の谷は、採石場よろしく露出した岩盤だらけ。支流を見下ろすと、急すぎて近づくことさえできない滝があちらこらちに。

 頭から水の心配が離れない自分にとっては、ゆとりあるカケスの飛翔までもが恨めしい。白色が全く見られないポンヤオロは一昨年と同じ状況のようだ。ペテカリで雪を融かす羽目にはならないと良いが。雪はない

 久々の夏道だけあって喘いでしまう。見え始めた勝幌・札内も黒々としているので1121でスコップとスノーシューをデポ。この分の水を持って上がりたかった。

 オーバーパンツの裾を膝までまくって歩く。鬼気迫る1483が睨みをきかせる。頭上から樹幹が覆い被さるようなポンヤオロの急登はこたえる。岩壁を巻いてポンヤオロ到着。やや霞んではいるが、国境稜線の眺めは申し分ない。ペテカリの北斜面にはわずかに雪が残っているようだ。暖かいが、風の轟音が響く。

 ポンヤオロからの過激なアップダウンでバテる。やはり水分不足か。こんな捩れなくても早大尾根1295へのV字谷は鋭すぎて奥まで見渡せない。1417を過ぎた辺りから、北向き斜面にわずかながら残雪が出現し、望みが出てくる。1483に威圧されながら最後の登り。

 1518の東、1500に平坦地を見つけて幕。何よりの驚きは早大尾根。極地法だろうが何だろうが、戦後の真冬にこんな地形をクリアした彼らを同じ人間とは信じられない。

 1518の北で掬い取ってきた汚い雪も貴重な水分だ。丁寧に沸かして頂く。日常での水の無駄使いを改めて反省する。壮絶

 中の川へ伸びる下降尾根の北に突き上げる物凄い沢には、今の時期でも雪渓が残っている。あんな地形を目の前にしたら、「恐ろしい」を通り越してポカンと口を開けるしかないだろう。

 国境に雲が掛かり、夕焼けは拝めず仕舞い。筋肉がちぎれそうな尾根歩きを一日続けると、さすがに街の灯は遠い。唸り続ける風の中、満天の星空は更けていった。   

車6:20-7:368437:46-8:381121-10:49ポンヤオロマップ
11:12-12:511417-13:361518−14:201500

写真上:起伏の向こうに 中:ゼットンの木 下:1483へと伸びる早大尾根

 11/2 
 風は止まないが、夜明けと共に出発。国境付近にだけ、雲がかかって見えない。踏み跡の大部分は尾根の北側なので、中の川からの強烈な吹き上げを食らわずに進める。

 「靴幅リッジ」の名称の割にはスリリングな箇所はないが、前を見るだけで嫌気がさすようなアップダウンが続く。朝一番の勢いに任せる。激しい起伏行く手の1580が朝日を浴びてオレンジ色に輝く。この一瞬がたまらない。雲に覆われた国境稜線の下には、控えめに赤らむ神々しいカール。

 ストックが潅木に引っ掛かるが、凍っているかもしれないピーク直下に備えるため手放せない。1580を越えると1573までの起伏は比較的緩い。一瞬、雲が晴れてAカールとペテカリの姿が覗く。その光景に悩殺され、1573から撤退という選択肢を一瞬にして放棄する。

 1573に出るが、ペテカリ川から湧き上がる雲で視界は不良。上に行くまでに晴れてくれれば、との期待を胸に頂上を目指す。1620で一時トレースを見失うが、すぐに尾根に出る。ハイマツにオーバーパンツを派手に引き裂かれてしまったのが悔やまれる。

 一年半振りの頂上は南西風が強く、時折雲が切れる程度だ。遠望もないので早々に下りる。今日の状態ならアイゼンやストック、プラブーツさえ必要なかったことになるが、この時期だから仕方あるまい。

 殆ど補給していないので下りはバテ気味だ。1573で腹ごしらえするが、後半のアップダウンに耐えられるかどうか心配だ。ここから東は約束どおり晴れている。

 1580まで戻ると、気温は13℃に。霞んで見えない下界は20℃にもなっていようか。辺りは急峻過ぎる沢と崩落斜面だらけで、見ているだけで胃に悪そうだ。

 危惧していた程の消耗もなく、淡々と幕営地を目指す。中ノ岳から南のニシュオマナイ、神威やソエマツ方面も見え始めた。

 戻ってみると、4人パーティが立っている。これ以上進めないので脇に張らせてもらいたい、との由。大きな4テンなら1417の南に張るのがベストだろうに。手狭な場所なのでテントを動かす。染まる寝心地が悪くなったが止むを得まい。

 午後になってようやくペテカリが頭まで見渡せるようになる。空全体が白っぽいせいかぼやけて見える。まるで春だ。

 わずかに赤くなった夕焼けを楽しんだ後は、日高見の時間。朝、枝に衝かれた右目がまだ痛む。これも日高の醍醐味なのか。

15005:18-5:501494-6:5315807:03-7:5215738:01-
9:09ペテカリ9:18-10:06157310:20-11:07158011:14-12:351500

写真上:朝の1580 下:やっと拝めたペテカリ

 11/3 
 目が覚めると一面のガス。今日も10℃ある。予報では午後から下り坂、こんな日は早発ちに限る。出発前、余分な水を地面に撒く。結局、持って上がった水で足りたことになる。

 高温で一昨日に見た雪は殆ど消えてしまった。ポンヤオロまでは西風がきつい。東尾根の核心部は、間違いなく1417とポンヤオロの間だろう。

 振り返ると真っ黒な空が押し寄せてくる。雨雲との追いかけっこで、下りは周囲を見渡す余裕もない。

15006:08-6:381417-7:50ポンヤオロ8:08-9:1711219:25-10:31車

('03/11/01〜03)

  • 印象: 全体に起伏が激しいが、ポンヤオロと1417の間は凍ったら手に負えまい。1580の東1470にも1張り幕営可能。  

  • トイレ: 中札内市街か大樹カムイコタンが最終。