| カムエク撤退(六ノ沢出合まで) |
早朝の上札内に「ピョウタンの滝で通行止め」の表示。管理人が常駐している筈の札内ダムまで入れないなんて。上空ばかりか心にも暗雲がたちこめる。 ピョウタンの手前は実質一車線で、山側には3m近い雪壁。これでは雪崩が怖くて乗り入れ不能だ。でも、最大6泊を見込んだ装備は万端、入れるだけ入ってみようか。七ノ沢出合までは16kmだ。 が、靴を履いているとインナーブーツの紐穴が破れ、紐も切れてしまう。不吉な予兆が一層モチベーションを下げる。しばらくして気を取り直し、札内ダムまで1時間半以上かかったら引き返すことにして歩き出す。 気温は‐8℃。雪雲が空を覆い、春ははるかに遠い。1羽で悠然と舞っているオオワシは、以前Yさんが話していた個体だろうか。こんな内陸に・・・雪は12月よりは締まっているが、路上には見たことがない位雪が積もっている。 気が付くと、戻る口実を探している。そんな不安を和らげようと、トンネル毎に大勢の工事殉職者に心の中で手を合わせる。思ったよりも早くダムに到着。ここまで来ると進める気がしてくる。ヒュッテまでの橋の積雪は2m前後。小雪が舞うが、薄日も射して気持ちが乗ってくる。 コイカク登山口を過ぎた幌尻覆道の出口は雪に塞がれて先が見えない。デブリの一部は覆道内にまでなだれ込んでいて、トンネルごと押し潰されないか心配になる。脇の穴からすり抜け、そそくさと通過。 上流に行くにつれ、雪が深く、そして柔らかくなる。トラバースは楽だが、膝までのラッセルが続くとやはり引き返したくなる。「スキーがあれば」とない道具を今更思い描くうち、辺りは吹雪の様相を呈してきた。 夏のゲートを通過し、七ノ沢出合まで約2kmとなった。が、疲れもあってか六ノ沢砂防ダムが見えているのになかなか近づかない。トラバースの連続と吹雪模様に、いい加減うんざりする。「このままでは今日中に七ノ沢出合にも届かない。」そう思った瞬間に撤退を決意していた。 自分のトレースを辿る復路は速い。積雪2mはある幌尻覆道上流の路面上には、「只今の気温‐8℃、凍結注意」の電光掲示。なんとも滑稽だ。 札内ヒュッテ内に幕を張ると、吹き荒れる風が信じられない位の温かさだ。撤退を決めた時には「山が呼んでいなかった」と決め込んだが、実際には自分の心の弱さに負けたのかもしれない。 目覚めると春らしい好天。ヒュッテ裏手の斜面を散策後、打って変わって締まった雪を踏みしめて引き返す。昨日の午後に通ったらしいパーティのスキー跡だけがくっきり残る。不思議と無念さは湧いてこないが、振り返った札内上流が雪雲に覆われていて少し安心する。ダム下流では重機が汗だくで除雪作業に当たっていた。
コースタイム: 印象: この時期だと、単独でのスノーシューラッセルは厳しい。
トイレ: 札内ヒュッテが最終。

ピョウタンの滝6:13-7:29札内ダム7:39-9:05ヒュッテ9:29-10:43滝潭水位測定計10:50-11:28夫恋覆道-12:48滝見橋-13:33六ノ沢砂防ダム下流13:43-14:47夫恋覆道14:54‐15:15水位測定計-16:10札内ヒュッテ
札内ヒュッテ8:22-札内ダム9:39-10:26ピョウタンの滝