赤く染まる山並みを車窓から仰ぎ見る。やがて、朝一番の光が勝幌の雪堤を金色に照らしだす。車から降り立てば鳥の囀り。見るもの聞くものすべてが懐かしい。
最初の渡渉点の橋は、例年どおり流されて使えない。融雪水の奔流は、予想以上の勢いだ。初め、左岸伝いに偵察するが、どこも深そうで渡れない。元に戻って恐る恐る水に入る。ストックを川底に衝きたいのだが、流れに翻弄されてしまう。幅6〜7mだがかなりの緊張を強いられる。
河原には残雪が多い。850を過ぎると四囲は雪に覆われ、未だ褐色の木々は早春を思わせる。890で右股へ。

50mも登らないうちに、沢が埋まりだす。のどかな空気に体を預けると、呼吸の度に胸と腹がゆったりと膨らんでは凹むのが実感できる。完全に水面が消えたので、やや霞んだ緑の十勝平野を見下ろしながら1090でプラブーツに履き替える。
一直線の白い沢筋が、北尾根を突き抜けんばかりに延びている。
白い筋となって合流する小沢が紛らわしくて、わずかな屈曲や二股状地形も気になってしまう。沢勘で本流を辿る。
デブリの名残が残る1250付近から、傾斜がきつくなる。熱い位の陽射しで雪面も柔らかく、特別な難所もないが、1350で念のためアイゼン装着。久々の登行に悲鳴を上げる筋肉を宥めすかしつつ歩く。
無風の源頭部では、直射日光と照り返しに晒される。喘ぎながらようやく北尾根に合流。やや霞んでいる稜線は既に黒味を帯びており、雪の季節の終焉を実感する。いつしか太陽には暈がかかっている。
温めの風に吹かれながら、雪堤伝いに頂きへ。先客は愉快な二人組。こういう山の楽しみ方も羨ましい。
下りは夏尾根。ここまで暑いのは久しぶりだ。コガラのゆったりとしたリズムが森に響く。目の前を横切ったのはウソの番。雄の鮮やかな紅色が瞼に残る。
快調に高度を下げ、1000からは夏道を外れて尾根を末端まで辿る。こういう小冒険には心が躍る。
最後のスリリングな渡渉を終えると、目の前の崖には気の早いコザクラが咲いていた。
('04/5/15)
写真:まるでジャンプ台