約2年ぶりに、ピパイロ林道の奥へ。八の沢沿いの路面は案外平坦で、1.5km先の終点まであっさり入ってしまう。今日も引き続き晴天が約束されているが、久々の山泊まりに心地良い緊張を噛み締める。
終点(680)より手前で歩き出したつもりになっていたが、実際の林道は地形図よりも先(690)まで延びており、しばらく読図に不安を抱えたまま進む。
水量が多いので河畔のササ薮を縫いながら慎重に渡渉を繰り返す。ダニが気懸かりだがやむを得ない。右岸から苔むした柔らかい滝が合流する740は、あたかも日本庭園のようだ。
約1時間で広い二股に出る。標高差と鋭角に合流する沢の向きから考えて、790と考えてほぼ間違いない。程なく現れた820に現在地の確証を得て一安心。
820を左に入ると、早春を告げるエゾエンゴサクやヤチブキが眩しい。860では、巨大な階段状の一枚岩の上を凄い勢いで融雪水が流れてくる。
右岸の際をこっそり通過。
900を越えるとやや平坦になり、950からは雪渓が出現。970の滝(10m)を左岸から巻くと、あとは一面雪渓だ。照り返しと虫が容赦ない。
振り返ると、霞んでいるせいか平野が遠い。1080左股は、一部だけ沢面が覗く性質の悪いパターン。崩落ブリッジ上をそっと渡り、雪の残る右岸へ。鹿の足跡を頼りに、急な北向き斜面をトラバースしながら1140へ。この左股は、標高の割に傾斜が緩く、広々としている。

ジリジリと標高を上げ、1300へ。柔らかい雪だが、念のためここで登山靴に履き替える。沢を見下ろすと、雪渓上の黒い筋とカンバの幹が渋いコントラストをなしている。背後から射す日光は鋭く、渡る風は温い。
1450を過ぎると、雪渓は大分細くなる。北日高の盟主、1726が視界に入ってきた。低潅木を縫うように詰め、最後は久々にハイマツと格闘しながら国境1610(最低コル)へ。雪のあるルベシベ分岐(1620)まで、もがきながら進む。水平距離にして100m程度だが消耗する。
分岐からは、雪の上を無数の蝿達と一緒に登る。ルベシベを正面に望む雪堤上に幕。空は白っぽく、稜線もぼんやりして締まりがない。時折響く地鳴りは、雪の落ちる音か。
設営後、空荷でルベシベへ。途中は一部ハイマツ帯だが、沢からの踏跡を使えばさ程厳しくはない。2年振りの頂きへ。ブッシュで覆われた西へは一歩も進む気が起こらない。そそくさとテントに戻り、幸福な午後を過ごす。
響く音は鶯と郭公の鳴き声。テントの窓から1967を拝む。
やや左手奥にはガケの沢、そして遥か彼方にはカムエクの頭。雪で冷やしたビールに、喉が嬉しい悲鳴を上げる。
夜半から風が強まり、睡眠も途切れがちだ。東の空を暗い雲が覆う中、何となく夜が明ける。相変わらずの強風の中、下山準備に取り掛かる。
下りではアイゼン装着。1140からのトラバースでは緊張を強いられる。1100付近では、昨日のブリッジが既に一部崩れている。左岸のササを掴みながら1080二股に下り立つ。ぱっとしない白い空の下、あとは淡々と沢を下る。
沢歩きを終えて気が緩んだのか、八の沢林道でパンク。なんとか本流まで出て虎の子のスペアタイヤに履き替える。横面にパックリ開いた裂け目は修理不能で、新品履き替えはしめて7600円・・・
('04/6/4〜5)
写真上:暗い沢には黄色が映える 中上:雪渓上は虫だらけ(970)中下:緩やかに登る 下:風が出てきた