刷毛ではいたような空。さすがに秋らしいひんやりした空気。しばらく車内でぐずぐずするが、思い切って外へ。歩き始めると早速、カケスの学校に出くわす。
昨冬の渡渉を思い出しながら流れを辿る。右岸の巻き道を突き進むがさほど蒸し暑くはない。
出合からはガレた八ノ沢に沿って速やかに高度を稼ぐ。
900付近から振り返ると札内北東斜面の紅葉が飛び込んできて、思わず歓声を上げる。
工事現場のように周囲の崖が崩れた935で沢は左に折れるが、依然として気分のゆったりする開けた地形。自分でもスキーを楽しめそうな緩斜面だ。
1000を過ぎると向こう正面にはモザイク状の札内岳。左岸が大規模に崩れた1060で沢を塞ぐ潅木をくぐり抜け、1110二股へ。迷わず、水量の多い右に入る。幅広な10mの滑滝を越えると上流は伏流になっている。やや狭まるが険しさとは一線を画している。
目の前の岩を無心で乗り越えるうちに1270二股に出る。数ヶ月間持ち歩いてきたボソボソの「久慈良餅」を頬張る。

涸れた右股を横目に、左に入ると一転して暗い急沢に。1330付近で小瀑が続くが慎重に巻く。水はすっかり冷たくなっている。
か細くなった1540で水を汲み、最後の格闘に備える。振り返った木々の間から覗く鋭い峰は67か。
薮は案外薄いが出口が見えない。時折、頭上のナナカマドに射す日が視界全体を赤く染める。
約1時間の薮漕ぎで稜線に達すると、見上げる勝幌西面は早くも秋の装いだ。暑さと夥しい数の虫に囲まれる。既に、登る前に抱いていた「初心に還ろう」などという考えの居場所はまったくない。所々うっすらとついた鹿道を利用するが、ハイマツ帯に入ると自分の体重ごと押し当てないと前進できない。
オヤジの痕跡が皆無なのが気懸かりだ。
いい加減へばったところで、ヘリの音が近づく。随分な低空飛行で、普天間を思い出す凄い爆音だ。無力と知りつつ本能的に身構える。
1810に達したところで、夏道の岩場から道警の「たいせつ」が赤いヤッケの登山者を吊り上げるのが見えた。足でも滑らせたのだろうか。無事だと良いが、他人事ではないと心を引き締める。
久々に頂での昼寝を満喫。微風なので何の心配もない。初めての勝幌に心を震わせた7年前に思いを馳せながら、橙色に染まる戸蔦別をぼんやりと眺める。
照る照る坊主を逆さにしたよう朝日が何となく東の空を染めるうち、高度2000mの雲が西から押し寄せ、幌尻とカムエクを隠す。
曇ってくるのが目に見えるのでそそくさと下山。夏道を20mほど下りてから適当にハイマツ帯へ。ウラシマツツジやナナカマドの赤は曇りでも映える。地面が遠くならないようルートを選ぶ。
1720で一度解放されたハイマツ帯が、1650から樹高を上げて再度立ち塞がる。猿に戻って樹上をバランス良く渡る。
1630で崩れやすいガレ沢に出ると、1590で水が現れる。1470の緩い滝をabseilenするが、途中で足元の岩がゴッポリ剥がれ落ちて肝を冷やす。
1300で伏流となるが、1110まで潜ったままで蒸した涸れ沢が続く。雲が広がり、札内が隠れる前にと帰路を急ぐ。
('04/9/4〜5)
写真上:開けたガレ斜面 中上:覗き窓
中下:近そうで遠い 下:晴れたのは早朝まで