ヌビナイの冬

どこから見てもアブノーマル


 12/27 
 どんよりした空。ハンターがしっかり跡をつけてくれた懐かしの昭徳林道を滑走する。今回はW氏が同行してくれるので、気持ちが軽い。

 次第に青空が広がってくる。ヌビナイの沢音が耳に心地良いが、四泊分の荷が肩に食い込む。

 里心が離れるにつれ、没我の境地へ。硬く締まった足許だけを見つめながらスキーを前後に動かし続ける。南向きの法面は小さく雪崩れている分安心か。

 左岸林道終点の沢は結氷前で、ヒヤヒヤしながら渡渉。モービル跡が途切れると、やはりラッセルは辛い。

 クマの沢出合からは程よく締まって快調に遡行。左岸の切立った415でスノーシューに切り替える。

 程なく左岸は切れ落ち、本流を渡渉せざるを得ない。水量が少ないとは言え、部分的に凍ったヌビナイを飛び石伝いに渡る姿はもはや尋常ではない。精神的な緊張も沢登り並みだ。

 沢が大きく右に折れると、ようやく1235へ続く尾根が目に入る。スキーを脱いでから一気にペースが落ちた。じりじりしながら更に上流を目指す。沢の奥に忽然と聳えるは1449の丸い山容だ。思わず叫び声を上げる。

 目指す尾根の出合に到達し、無風の幕場で安着を祝う。テント内ではいくつもの事を同時にしない方が良いのだが、なぜか気が急いてしまう。時は貴重だが、心のゆとりも必要だ。

 急峻な取り付きに押し潰されそうな夜、大きな月が静かにテン場を照らす。

車(220)6:35-7:482297:56-8:43左岸林道分岐8:56-
10:57林道終点11:07-11:48クマの沢出合12:01-14:38450

 12/28 
 晧晧とした月夜が明けると、沢の奥に遅い夜明けが訪れる。靴擦れの痛みが激しいW氏は無念の退却。引き返す後ろ姿に良心の呵責を覚えながら、一人尾根に取り付く。

 天気は良いが、想像通りの悪場続きで全くはかどらない。四肢をフル稼働しながら斜面を這うように登る。

 570付近でアイゼンに履き替え、岩盤に爪を突き立ててようやく巻く。600でトドマツに懸かる古スリングを発見すると、何故か心の安らぎを覚える。

 610からはやや楽になり、スノーシューで一気に高度を上げる。が、それも束の間、690で垂直に近い岩壁が立ち塞がる。両側はすっぱり切れ落ちて取り付くしまもない。これでは進もうという気も起きず、撤退を決める。圧倒的過ぎて無念さもない。

 悪場をアイゼンで慎重に下り、平和な出合に下りる。行動食を腹に入れると、不思議と力が湧いてくる。

 前日で度胸がついたのか、難なく渡渉を終える。デポしたスキーに乗って、快適に左岸を東へ。振り返ると、1235南尾根の壮大さを改めて実感する。目指したソエマツはちらっとも見えない。いい時間になったので林道終点に幕。今日も青い月が雪面を照らす。明日はモービル跡を戻るだけだ。

4507:28-9:5761010:09-10:4069010:50-11:5345012:03-13:22クマの沢出合13:27-13:56林道終点

 12/29 
 今朝も全身を縛り付けるような冷え込み。思考も感受性も停止したまま、スキーを滑らせる。振り向けば白い峰々がくっきりと青空に浮かぶが、今回は不思議と未練はない。

 肩に食い込む荷が憎らしくなる頃、ようやく車が見えてきた。

4507:35-8:58左岸林道分岐9:14-11:05

('04/12/27〜29)

     
  • 印象: 450までの河床は比較的広い。