札内川二ノ沢左岸尾根

試される根気

 一カ月半のブランクを埋めるべく、羽田→釧路→帯広の強行軍で日高へ。今回はコイボクサツナイ狙いだが、ヒュッテ裏手尾根よりも近そうな二ノ沢からアプローチする。

 ダムのゲート前には車が一台、自分以外の物好きに思わずニヤリ。手と頬を刺す-15℃の冷気は通過儀礼か。

 かんばトンネルから早速尾根を目指すが、降りたての深雪が行く手を阻む。腿から腰まで浸かりながら非効率的にもがき続ける。今週二度の大雪で予想以上の苦戦。

 結局尾根までの標高差100mに2時間を要し、この時点でコイカクを断念する。俄かにモチベーションが低下するが、1分1mのラッセルにどこまで耐えられるかの「根気戦」に方向転換。この季節には珍しく空は穏やかだ。上流にはピラトコミが大きく聳え、眼下のヒュッテが里心をくすぐる。人が入りそうにない尾根の割には赤テープが目立つ。

 尾根に出てもピッチが上がらず苦悶。胸まで沈むと身動きが取れない。このまま頭まで埋まったら、との危惧が頭を過ぎる。上空が白さを増すと共に、寒さが募る。700付近で危うくストックを谷底へ落としかけるが、辛うじて雪上に止まる幸運。わずかな不注意が命取りだ。

 下山するつもりで昼前に行動食を平らげると、わずかに力が湧いて730に到達。この先は少し緩傾斜で左右の眺めも開ける。叶いません結局810まで進んで幕。あれほど帰りたがっていたのに、泊まらないと気が済まない二面性が我ながら不可解だ。

 凍てつくテント内は不思議と安心する。子どもの頃隠れた押入れや炬燵に通じるのかもしれない。今回の反省は強行日程による調整・気力不足か。いずれにせよこの雪に挑むのは無謀なタイミングだった、と自分を説得。思い通りにならないからこそ山は面白いし、過度な期待は禁物なのか。

 朧月夜に照らされる札内ダム。「心底好きなことには『want』の時代から始まって、やがて『must』の時代がやって来る」と語っていた写真家の言葉を反芻する。頭では頷けるが、自分はまだまだそんな境地からは遠い。こんな所に

 予報に違わぬ雪模様。やる気は出ないが身体を慣らすために偵察。いきなり60mの急登をもがくが、空荷なので信じられない位楽だ。やや締まってきたせいもあって1時間で100m以上登る。

 940で突如、目の前に小屋が出現。「札内ダム二ノ沢無線中継所」。多すぎるテープの意味を理解する。小屋を建てたということは、よほど風が弱い尾根なのか。

 元気になってなおも前進。結局、3時間歩くも1292には届かず50mを残して撤退。眺めもないので未練もない。大河

 凍結河川のような白いリュウタン湖を眼下に望みながら下山。ポカンと見上げた青空に、「雪片に満たされた宇宙を、僕を乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。」という小説の一節を思い出す。マツの実のくすんだ赤も、モノトーンの中では鮮やかだ。

 幕場から二ノ沢出合までは50分。登りにかかった6時間を思うと悲しくなるが、少し早い夕陽を受けた薄紅の入道雲に気持ちが温まる。林道を戻る心の内は、既に次回の山行へと踏み出していた。

 ('05/2/25〜26)

  

写真上:黙々と進む 中:泊まりたい 下:くすんだ赤


  • コースタイム: 
    札内ダム7:06-8:05二ノ沢出合-9:57尾根(590)10:13-11:19650
    11:29-13:2573013:35-14:02810
    8107:08-8:30無線中継所(940)-10:10125010:20-11:26810
    12:53-13:41二ノ沢出合13:54-14:34札内ダム

  • 印象:雪が締まれば使える可能性も。   

  • トイレ: 上札内市街が最終。