カタルプ沢〜エサオマン入ノ沢〜北カール

憧れの北カールへ

 安井宅前に停まるマイクロバスを横目に林道を奥へ。6号砂防奥の崩落箇所はなんとか通れる幅に修復されている。

 涼風が吹き抜けるカタルプ出合に下り立つ。最初から巨大な岩盤上を走るナメの連続。快適だが気の抜けないへつりも多い。

 760で右股に折れる。やや水量は減ったが相変わらずのっぺりした河床。820で南に折れると、堆積岩が埋め始め、沢の表情が少し和らぐ。910では左岸から15mの細滝が出合う。

 970で15mの滝越え。滑らか左岸から岩と草付きの際を攀じるが、足を滑らせてアドレナリンが全身を駆け巡る。必死にバイルを突き立てて切り抜ける。下りは厳しそうだ。

 1030では水量の多い左股に惹かれるが、神威へ突き上げる方が少しはトレースを拾えそうなので右股へ。

 1100までは樋状の滝が続く。1140はペロリとした広い岩盤が露出する20mの滝。緩めの右岸から慎重に岩溝を辿り、最後に不安定で嫌らしい草付きを際どくトラバースして通過。ここの下りも手掛かりがないので危険だ。

 ペースが上がらないのは体力の衰えのせいか。1270で雪渓が出現し、奥には見るからに恐ろしい垂直な滝。息を止めるようにブリッジの下を通過し、30m滝の下に出る。遠目よりも緩く、適度なホールドもあって直登可能だ。

 上空は曇ったままだ。背後の妙敷が次第に大きく見えてくる。辛うじて1360で再度雪渓が現れる。1400を越えるとかなり細くなるが、結局1600まで水は涸れない。

 詰めの薮は薄く、夥しい虫に追われながら神威の東コルに飛び出す。ガス勝ちだが、久々の眺めにしばしうっとりする。北カールははるか彼方だ。

 雲に隠れたエサオマンを正面に思い描きながら沢を下る。雨雲が低く垂れ込め、不安が全身を包む。

 丸一日沢に浸っていると足の集中力が低下してくる。1550の崖印は特に難しくない。暗いが、雨は落ちてこない。いつ絶望的な地形が出てくるかと脅えながら進むが、幸い悪場も難所もなくすんなり970二股に出る。

 もう一度登り返すには疲労困憊しきっているのでやや広い1000の左岸にツェルトを張って潜り込む。オヤジの置き土産のすぐ脇だが、今晩だけは勘弁してもらおう。

 夕方、雨足が強まるが「なるようにしかならん」と開き直ってビールを流し込む。晩には止み、格段の安心感に包まれながら眠りに就く。最近、楽しめる山行になっていない気もするが、過酷さを求める沢旅が癖になるのだろうか。

写真上:この先に何が待つ 下:やっと峠越え 

 不安定な予報に脅えながら夜明けを迎えるが、意外にも星空が広がり、気分が軽くなる。断片でもいいから北カールを覗きたい。ほぐれされた朝

 快適なナメが続く入ノ沢。このまま楽々とカールへ、と思いきや1080で小ゴルジュ。その先には15mの滝が控える。見上げると左岸の急な草付きにスリングがかかっているが、泥斜面の足許は不安だ。

 トレースらしき跡に従い、かなり下流から右岸を大きく高巻く。が、トラバースは厳しそうなので笹を掴んで無理矢理下降し、河床に戻る。焦らず自分を信じて右岸の側壁をへつり、滝身から離れないように小さく巻く。かなり微妙なバランスを保ちつつ、一段目の上で沢に降り、L字状の細い滝を直登してこの難所を終える。

 その上流はナメが続くが、程なく傾斜が増して岩屑が埋めるようになる。水は1360まで。

 涸れ沢を詰めるうち、知らぬ間に東へ寄りすぎていたようで断崖に突き当たる。ガスの間から一瞬眺めが開け、潅木を掻き分けて方向修正。細い流れを詰め、わずかな晴れ間が迎える北カールに立つ。

 北東カールよりも開放的だ。切立ったカール壁は音響効果抜群だろう。エサオマン北ピークには二つの人影。雪渓水で体に力が漲る。

 どのルンゼかを見定める間もなく、一面ガスの中。とりあえず手掛かりのありそうな草付き斜面を這い登る。そこら中に真新しいオヤジの糞が残されており、明らかに見張られている気分だ。叫びながら進む。1760で薮に突っ込み、最後はハイマツと格闘しながら1800で北尾根へ。うっすらと残されたトレースでも、ブッシュとははかどり方が違う。

 北峰からは平和な尾根歩き。視界5mのエサオマンで座り込み、食糧を貪り食う。これでなんとか帰れそうだ。

 札内JPまでの稜線も眺めなし。安心しきっていた北東カールへの下りでは、途中トレースを見失って難儀する。こわばる腿途中で岩壁に阻まれ、必死でカンバ帯のトラバースを続ける。1時間の試行錯誤の末、カールボーデンへ。大の字に横たわって生を実感する。

 標高を下げるにつれ、夏の陽射しが差し込む。長大なナメ滝にはいつも癒される。酷使の末硬直した大腿四頭筋に細心の注意を払い、沢を下る。

 997まで下り、あとはだらだら歩きと安心していたら不穏な轟音。やがて雷雨に見舞われる。昨年の記憶が蘇り、増水の恐怖に強張った表情で下降。なんとか無事に林道へ。今年も「生還」が相応しい盆沢の帰着。

写真上:一瞬でも安堵 下:癒しの滑

('05/8/14・15)

  • コースタイム: 
    8/14  5:10-7606:00 -9107:20 -8:1510308:30 ‐9:551280 10:05
        -12:00神威東コル12:20-13:15146013:20-14:25113014:30-
        15:05970-15:151000
    8/15 10005:10-6:5512007:05-8:35北カール8:50-10:00北峰-
        10:05エサオマン10:25-11:00JP-12:10北東カール12:20-
        13:5099714:05-16:20エサオマン林道出合-16:35

  • 印象: 北カールの羆密度は濃い。西寄りのルンゼが使いやすそうだ。    

  • トイレ: 戸蔦別ヒュッテが最終だが、林道のかなり手前になる。