戸蔦別川遡行

ふさわしい沢納め
   

 赤く染まる山並みにうっとりしながら戸蔦別林道へ。大雨の後でもないのに、何故か6号砂防で車止め。連休だけあって4台も駐車しているが、いずれもエサオマンに入っているようだ。正面に十ノ沢源頭の燃えるような紅葉を拝むと、林道歩きの肌寒さも忘れて絶叫。

 八ノ沢からの入渓は二年振りだ。十ノ沢出合の先までブル道跡を快調に辿る。897を過ぎると両岸が迫り、地形図からは想像できないような函が現れる。沢越しの最奥部に控える国境稜線が青空と残月に映える。970の細滝を越え、三股へ。

 登りは使ったことのないBカール経由にしよう。天気は最高で何の不安もないのだが、なかなか心の底から楽しめないのは悲しい性か。沢にも少しずつ太陽の恵みが訪れる。せせらぎ1856を拝みながらの歩みは正に「錦秋の膳」。いつもより重いザックが背中にのしかかるが、勝手知ったるルートなので心にもゆとりがある。大きな滝を巻きながら着実に標高を稼ぐ。

 1300付近は三股状で、Bカールへ突き上げる沢の見極めがやや難しい。滝の直上の細い二股を左に入り、ガレ場を急登。振り向けば猫の耳のような伏美岳。空が近づき、67の頭も見え始める。谷越しに日高らしい地味な紅葉が展開される。

 名残を惜しんで1520で水が潜る。万が一カールの水が涸れている事態を危惧し、3L汲むとザックが両肩にのしかかる。程なく、平坦なカールボーデンへ。平和な秋晴れの下、昼寝に誘われるが秋の午後は短い。幕営も魅力的だが、風も弱いので頂きを目指す。

 ピークに突き上げる急なカールバンドを詰める。登ってみると予想ほど急峻ではないが、トレースはない。西陽最後は這い松の生え際を四つ這いで攀じ登り、稜線へ。掟破り覚悟で山頂の幕営を決定。

 張り綱を忘れる不用意さを、微風を良いことに石を置いて誤魔化す。神威へと延びる尾根を西陽が素晴らしい黄色に染め上げ、声も出ない。吹きっさらし眼下の平野は穏やかそのものだ。

 日没後、一時北風が強まってテントを歪ませる。が、深夜には収まって一安心。頭上には恐ろしい位くっきりと白い天の川だ。


 明けると雲海が下界を覆っている。朝焼け目当てで七つ沼から上がってきた国営放送の撮影班も空振りに終わった。

 赤テープに誘導され、1770からAカールへ安易に下降開始。しかし早々にルートを見失い、以降1時間以上樹林帯を右往左往。急峻な崖に何度となく進路を阻まれ、四肢を総動員してトラバースを繰り返す。束の間の憩い油断大敵。こういう時には不思議と「生き延びてやる」という強い気持ちが湧き上がって恐怖を感じない。きっともの凄い形相なのだろう。

 1540でなんとかゴーロに下り立ち、命拾い。そのまま下ると1400右股の上流だったことが判明。ここの左股には赤テープが。

 極度の緊張後のためか、脚に力が入らない。慎重に踏み跡伝いを下って995へ出る。今回もなんとか無事に戻れそうだ。   

('05/9/24〜25)

写真上:命の洗濯 中上:午後のBカール 中:広がる両翼 
中下:強風の中で 下:この時にはまだ余裕が 

  • コースタイム: 
    9/24車(6号砂防) 6:05-7:27八ノ沢出合7:33 -9:409959:55-11:45130012:05 ‐13:35Bカール13:55 ‐15:20戸蔦別
    9/25戸蔦別 5:40-8:0015408:05 -9:359959:50-11:35八ノ沢出合11:50 ‐13:05

  • 印象: Aカールへの下降は十分な注意が必要。視界不良時に備え、お助けロープを用意しておけば安心。    

  • トイレ: 戸蔦別ヒュッテが最終。