前々から「チロロ」という涼しげな名前と「日高らしからぬ」たおやかな山容に憧れていた。だが、林道崩壊などで行くチャンスを逃していた。前日、予報は台風の接近を告げている。晴天は望めないが、夕方までは持ちそうだ。登山口で降っていたらひき返そう。
日勝峠の十勝側の空は泣き出しそうだったが、日高側に出ると打って変わって明るい空。日高営林署でゲートの鍵を借り、国道274号日高町千栄の外れからパンケヌーシ林道に入る。林道の距離は短く、路面も比較的平らである。
登山口では明るい曇り空。行けそうだ。曲り沢入り口のゲートから北電の管理道路を登ると、すぐに取水ダムだ。この上流からが登山道だが、曲り沢沢伝いにしっかりした踏み跡がついている。。流木や土砂で一部崩壊しているが、それ程厳しいルートではない。登山靴のまま、淡々と沢を詰めていく。
二股を右に入ると、9月とあってか水量はごくわずかだ。
やがて沢は涸れ、潅木と笹をくぐるとダケカンバ林となり、一つ尾根を乗っ越す。9月にしては蒸し暑いが、尾根は涼風が吹きぬけてまさに爽快(キロロ=チロロの由来?)だ。一度稼いだ標高を下げ、パンケヌーシ川二ノ沢に下りる。この沢は曲り沢よりもずっと広くて明るい。
二ノ沢はすぐに涸れ、形の良い石を鑑賞しながらののんびりした登りとなる。やや晴れ間も覗く。後方にはペンケヌーシが望まれ、カンバの黄葉も始まっている。二股を右に入ると、沢は狭まり、草原にヒグマの糞や掘り返しが無数に見られる。源頭部から右手斜面を登る踏み跡を辿って本峰・西峰間のコルに向かうが、この辺りの糞と掘り返しはかなり高密度で新しい。草の根まで掘り起こしてあり、間もない冬を思わせる。
コルは小石の敷き詰められた平らな庭のようで、実に気分が良い。ここにはまだ薄日が射しているが、南方に見える筈の1967・北戸蔦・幌尻には平らな雲が湧き出ていて、北斜面を滝のように流れ落ちている。
コルからはハイマツ帯を縫ってピークを目指すが、燃えるように赤いウラシマツツジがパッチ状に広がり、心を和ませる。
最後は高山植物の中を緩やかに高度を上げ、頂上に到達。
西峰がピークをはさんで望まれる。北は遠く十勝連峰や夕張・芦別まで見渡せるが、南は下を流れる千呂露川までで、北日高の山並みは流れる雲の中だ。
穏やかな日差しの中、ゆっくり休んでから下山。最後まで雨には遭わなかった。('99/9/23)
写真上:ウラシマツツジと北日高 下:湧きいずる雲