冬型気圧配置。ラジオは荒れ模様を告げている。こんな日に突っ込むのは無謀か。しかし太平洋側の天気自体は悪くない。小雪は相変わらずだが、駐車場に着いた時のような風は止んでいる。迷った挙句、「季節を感じに」登ることに決める。この時点で戸蔦別は諦めた。行けても67かピパイロだろう。
登山口からうっすら雪化粧。今週降ったばかりだろう。中途半端なこの時期、ルートは夏道に限る。幸い、うるさい程の赤テープで迷う心配はない。
1000までは、くるぶしまで沈む程度。季節風もそれ程強くない。1150までやや急になるが、フカフカの雪を踏むと脛辺りまで潜り、思うようにはかどらない。針葉樹の緩斜面にさしかかると、ラッセルに西風が加わり、嫌な感じ。
しばらく進むうち、S労山の3人に追いつかれる。共同でこの深雪に挑む。が、シーズン初めの降雪直後というのは手に負えない。少しでも登り斜面になると「♪3歩進んで2歩下がる」調子で、4交代でも全く効率が上がらない。車に残してきたスノーシューに思いを馳せるが後の祭りだ。
1400付近からは胸ラッセル。登り坂では殆ど頭まで潜る。両腕で目の前の雪をかき、腹から股下へと押し込む。それを二度程繰り返すと、ようやく足の出番だ。一歩前に出ると再び体ごと雪の中へ。そんな雪中遊泳のような不毛な作業を黙々と続け、かなり消耗する。
急登となった1450から先は、3人パーティの中でワカンを用意していた唯一のメンバーに頼りっ放し。意外だったのが、ワカンの後を歩く二番手の苦しみ。
天気は予想ほどは悪くないが、標高と共に稜線沿いの吹き降ろしが強まる。体力的にも時間的にも伏美まで届きそうもないので、1700付近で幕営。
労山パーティも一緒なので心強い。想像外の事態だが、安全な限り為になる。
夕方からは粒の大きそうな雪がフライを叩く。天気図から考えると、もう一日は二つ玉の影響が強そうなので明日下山とする。明朝、標高差100mの伏美まで届くだろうか。
冬らしい烈風のうなりの中で一晩過ごし、翌朝3人と共に出発する。昨日よりは空は明るい。空荷の分、ラッセルはかなり楽だ。雪を踏み抜いた足元にハイマツが見え出すと間もなく、目を開けていられない向かい風に迎えられる。9合目(1750)だ。手先に血が戻ってきて、痛痒い。
樹林が切れるので視界が利かないと嫌らしいが、幸い前方斜面が見渡せる。この辺まで来ると、雪が締まってきて歩きやすい。ピークは、斜面を登った台地から臍のように飛び出している。雪雲の向こうに、1612コルへの稜線がぼんやりと浮かぶ。
ハイマツの上に積もった雪をズブズブ踏み抜きながら進み、伏美到着。クラストもなく、アイゼンは不要だった。
展望は、上空の切れ間に覗くわずかな青空のみ。「晴れの得意日」でもこれが精一杯か。戸蔦別川の谷間から殴りつけるような突風が吹いてくる。長居は無用だ。
下りはわずかに20分。行きには見る余裕もなかった樹氷が薄日に輝いている。テントに戻って暖を取る労山パーティに別れを告げ、下山開始。昨夜の吹雪で、昨日のトレースはすべて消し去られている。急斜面なので、腰まで埋まっても下りならどうにか進める。
1300付近で、日帰りパーティとすれ違う。昨日であれば、日帰りは無謀だが・・・ともあれ、彼らの踏み跡のお陰であっという間に下山。駐車場の雪は昨日以下だ。雪雲がかかっているのは山稜だけで、上美生まで下ると陽光がカラマツを晩秋色に染めていた。
('02/11/2〜3)
写真上:最後の登り 下:樹氷