初めて日高の山に挑む。選んだのはアプローチが短く、しっかりとした夏道がついている十勝幌尻岳。眺めもいいらしい。
新得のSさんの車に便乗し、帯広の拓成から戸蔦別川に沿った戸蔦別林道に入る。登山口の看板が出ている。途中、岩だらけでとても林道とは思えない個所を行く。いよいよ日高の内院に入り込むのか。朝出ていた靄はすっかり晴れ、秋晴れになっている。
オピリネップ川出合を過ぎると左に入る林道があり、そのおよそ1km先が登山口の土場だ。しばらくオピリネップ川沿いの踏み跡を辿る。が、いつの間にか踏み後はなくなり、登山靴で河原の岩を飛び移る状況に。どう考えてもおかしい。ガイドによれば、道は一応あるはずだ。スタート近くまで戻り、少し離れた所に登山道を発見。なんのことはない、最初の左岸から右岸への渡渉を見落としていたのだ。
ドロノキやハンノキなどの河畔林を縫って進んでいくと、やがて沢の水量は少なくなり、ナキウサギが居そうなガレ場の下に出る。ここから尾根に取り付く。ガイドでは「キャンプ適地」とされているが、それらしい場所はない。
最初から笹藪の急登でグイグイ標高を稼いでいく。いきなり日高の洗礼か。無心にササをつかむ。つづら折れの道を登るうち、やがてダケカンバの巨木がが目立つようになる。
いつしか笹藪は薄くなり、直登になる。登山道をなおも進んでいくと、少しずつ傾斜は緩くなってくるが、足首はかなりの鋭角だ。ゆっくり休む場所もない。
どの位の標高まで来たのか。右手の展望がやや開けてくる。下界は雲海だ。右から稜線が合流する。どうやら、1700mの肩のようだ。ようやく一息入れられる。木々の間から見え隠れする稜線に、ピークへの期待が高まる。
肩から90度左に折れ、緩斜面を歩くとついにハイマツ帯に出る。今まで隠れていた視界が一気に開け、感動が体を襲う。これが、日高ならではなのか。岩場からはナキウサギの声が聞こえる。間近に見える山頂まで、幸せな登りをゆっくり踏みしめる。
ピークからは長大な日高の主稜線が南北に望まれ、南の先はどこまでも続いている。山の名前はよくわからないが、カール地形は圧巻だ。
札内岳やエサオマントッタベツ方面も美しい。山で「地球」の円さを実感するのは初めてかもしれない。
ガスカートリッジを忘れたので、湯を沸かせないが、風もないし、日差しも柔らかだ。Sさんと二人、山頂でうたた寝。ツバメが風を切って飛び回っている。
下りは来た道を引き返すのみ。初めてでこんなに言い思いをさせてもらって、大満足だ。気分は既に戸蔦別ヒュッテでの宴に切り替わっている。沢に下りてからの道には、所々立派な岩が河床にある。車止めの先の土場に出る所で、半分流された丸木橋を発見する。登りでの間違いは、この最初の渡渉地点を見落としたためだ。
('97/9/6)
写真上:秋晴れの北日高 下:札内(左)とJP