十勝幌尻岳〜札内岳〜エサオマントッタベツ岳〜神威岳

春の稜線漫歩

          


 除雪は最終人家まで。スノーシューを履き、歩きださんとする足元に沢山の野糞。出鼻をくじかれる。オピリネップ沢(幌後橋)までの雪はややクサれていて、なかなかはかどらない。はやる気持ちを押さえ、前に進む。

 オピリネップ林道入り口から尾根に取り付くつもりだったが、斜面の雪が少なすぎる。しばらくは林道沿いに標高を上げる。結局、つづら折れの530付近から斜面をよじ登る。ところどころブル道にぶつかるが、構わずにスノーシューで突き進む。スキーでは絶対に無理だろう。

 860付近で尾根に合流。地形は明瞭で、尾根も比較的広い。強い西風は、まだ冬を思わせる。登るうちに、どんどん風が強まる。

 1472を過ぎると、比較的急になってくるが、まだスノーシューで行ける。夏尾根は結構急なのか、合流点ははっきりわからない。朝は晴れていたのに、いつしか西から暗雲が広がっている。風から守ってくれた樹林帯も切れ、横殴りの風を浴びつつ、正面の勝幌を目指す。勝幌北尾根から望む暗黒の西空地面はクラスト、ハイマツも結構出ている。稜線東側の雪庇は、この辺りまで来るとかなり痩せてくる。

 突風に倒されないよう、体を折りながら登るのは骨が折れる。勝幌ピークに立つも、まったく立っていられない。夏には目立つ岩も、雪に隠れて風除けにはならない。あわよくば幕営を、との甘い見込みを悔いる。ピークからわずかに西へ下った、遭難碑のある岩まで移動するのに数分を要する。腹這いになって、まさに足手まといなスノーシューを手に持って前進する姿は滑稽だったか。

 岩陰に身を置き、やっと生きた心地に。前進か撤退か。もう一度山頂を越えて戻る気にはなれない。幕営を考えると、前進した方が安心だ。

 黒い空の待ち受ける西へと下り、1740付近に幕営。疎らなカンバに風除けを期待するが、まったく当てにならなかった。1m近い穴を掘るが、風向きが変わった夕方にはテントが持ち上がり、作りかけの夕飯が散乱する。泣きそうになりながらテントを埋めなおす。風は夜にはおさまったが、木々の間から覗く人里の灯がとてつもなく懐かしい。


 翌朝、風は弱い。雲は多いが、荒れることはなさそうだ。前日にあんな目にあっても、一夜明ければケロリと忘れてしまう。相変わらず、西の視界が開けないが、無理なら札内から下りればよい、と決めて出発。

 尾根は広くて快適。いたるところで幕営可能だ。雪庇はほとんど北側にせり出している。後方の勝幌が隠れると、雲の中を一人旅。小さなアップダウンを繰り返しつつ進む。樹林が濃いので、スノーシューはくくりつけたままだ。

 1607を過ぎ、1710への登りを終えると、北西に折れ、一気に下る。(主尾根は南西に緩やかに延びているので、要注意だ。)

 1480最低点からの登り返しはなかなか急だが、徐々に空が明るくなり、勝幌が見え始める。

 1602付近はキレット状の岩峰と雪庇が連続し、巻かざるを得ないがやや緊張する。ここを越えれば平坦なピリカペタヌ源頭だ。札内はまだ雲の中で、風も強そうだ。今日こそ、風のない地形を選んで幕営だ。テントで休むうちに晴れ間が広がり、帯広の夕景も見えてくる。夜空に、札内のシルエットが浮かぶ。札内ロート


 勝幌の朝焼けを眺める。テント前の足跡は、キツネのものか。今日は快晴だ。標高差300mを、一気に上る。途中からは左手にカムエクを始め、峰々の勇姿が見え始める。

 1800付近の斜面はガチガチ。ピッケルを頼りによじ登る。最後はハイマツ帯を詰め、憧れの札内ピークに立つ。無風、360度のパノラマを縦にする。いつまでも休みたいが、午後から曇る可能性を考えると、ゆっくりもできない。早々に札内JPに向かって出発する。近そうで遠いJP

 JPまでは地図で見るよりも遠い。アップダウンも結構多い。1680を過ぎてからはキレット状で、ウサギの先導を頼りにルートを選ぶ。徐々に迫るエサオマンが頼もしい。

 予定をオーバーしてJP着。日本とは思えない国境稜線の姿に感動する。空は青を通り越して、黒いくらいだ。いつかチチカカ湖で見た空を思い出す。遠く聳えるカムエクは、やはり盟主と呼ぶにふさわしい。

 予定通り?、西風が強まり、雲も湧いてきた。おごそかな稜線エサオマンを越えてしまわないと。登りはほぼ夏道同様で、苦労なし。ピークは風が強く、通過せざるを得ない。

 北尾根の下降も、一昨日よりは風は弱く問題なし。ここを登るのは結構急なのできついだろう。風の除けられる1595で休憩。陽射し自体は春なのだ。

 神威までのどこかにテン場を見つける予定だったが、どこも風の通り道だ。おまけに、この稜線の雪庇の規模は物凄い。幅20mに渡って東側にせり出したものが、どんどん割れて雪崩れている。潅木帯を選んで歩くのはゆるくない。

 翌日の天気も約束されていないのだから、と結局神威JPまで来てしまう。西空がかなり怪しく、幌尻方面も隠れてきたので神威は諦めてピーク直下で幕営。白樺の大木の下に作った平坦地が、今日のねぐらだ。

 夜になると低い黒雲が運ばれてきて、1700から上はすっぽりと中に入っている。またまた冬の形相だ。ここまで下ってきて正解だった訳だ。


 明けて、予報とは裏腹の暗い空。最後に踏むつもりだった神威も中止し、一路下山。

 スノーシューが下りで大活躍。埋まりすぎず、足首も適度に曲がるのですこぶる具合がよい。札内を拝みたいが雲の中。

 神威北東尾根は赤布も結構あって迷うことはないだろう。テン場も至るところにある。一箇所、1000付近で尾根が二つに分かれる箇所がわかりにくいが、例え間違っても林道に下りられるので問題はない。結局、下りるまで稜線は雲に覆われていた。

 900付近で地面が見えているのには驚くが、この時期としては早いのだろう。

 さすがに林道に出ると暖かい。シャーベットに近い雪は、ツボでもスノーシューでも進まない。暖かすぎて、クマかもしれない足跡も半ば融けて判然としない。終点の見えない旅も、戸蔦別ヒュッテまで来ると一安心だ。寒くて開けられなかったビールで、一人乾杯。所々のぞく路面は、来たときには白かったはずだ・・・     ('01/4/14〜4/17)

 

写真上:暗黒の西空 中上:札内ロート 中下:案外遠いJP 下:春の国境稜線

  • コースタイム: 
    4/14 最終人家5:28-6:37幌後橋6:52-8:338958:55-13:03勝幌13:16-13:321740 
    4/15 17408:11-9:131607-10:17148010:32-11:391560
    4/16 15606:18-7:29札内7:40-8:4316808:54-10:01札内JP10:19-11:03エサオマン11:10-11:49159512:05-13:55神威JP14:03-14:111610
    4/17 16107:12-9:15戸蔦別林道出合9:38-12:17戸蔦別ヒュッテ12:50-14:10最終人家

  • 印象: 林道が比較的近いので、余り時間をかけずに楽しめる。エサオマン・神威間の雪庇にはくれぐれも注意    

  • トイレ: この時期は帯広市街が最終。(戸蔦別ヒュッテは冬も使える。)