夏本番である。体が山に慣れてきたことだし、今週こそ日高で、沢歩きの真似事をしてやろう。そう思って向かったのがコイカクシュサツナイだ。
札内ヒュッテの先に、登山口の表示がある。車を止め、地下足袋で沢に入る。夏山ガイドによれば、踏み跡・巻き道は明瞭との事。真夏の太陽が容赦なく照りつけるが、足元は水に浸かって涼しい。所々に赤テープがあり、川幅も広く、快適な水遊びだ。
意外にも、砂防ダムを越えるのに時間を食う。左岸につけられた巻き道を探すのに手間取ったためだ。その先は、再び広い河原歩きだ。
最初の函は右岸の巻き道を使う。続く函は中から強引な突破を図るが、水深が腿まで来たので諦め、左岸の巻き道を辿る。上二股までは、雪渓もあるが慣れないながらも沢歩きをこなす。上二股は、思っていたよりも木々が鬱蒼と茂っている。いつしか空は灰色に。こんな暗い所で独りで泊まるのは怖いが、これも仕方がない。初めはうるさかった水音が、いつしか子守唄に変わっていった。
目覚めると水の音。外を見ると、幸い雨は落ちていないし、増水もしていない。コイカクに向かって出発。
早速、背の高いササに囲まれ、尾根に取り付く地点を探すのに苦労する。いざ、尾根が始まるとひたすら高度を上げていく。いかにも日高らしい「グイグイ尾根」(私の勝手な命名)だ。何も考えずに喘ぎながら登るに限る。回りの植生も目に入らない。
いつしか、目の前が明るくなって、1305に着く。丁度腰掛けられる倒木があり、休憩。コイカクのピークは、まだ見えない。天気は悪くなさそうだ。期待を胸に、なおもカンバ帯を登る。顎が出るのが先か、展望が開けるのが先か。徐々に尾根が狭まり、高度感を覚える。見上げると、ニセピークかどうかわからないが、地面と空がくっついている。
ハイマツ帯を縫い、1719に立つ。凄い景色。名前も知らない緑色の山々が、南北に連なっている。カムエクは一体どれだろう?ここまでの急坂とは対照的に、周りは比較的平らである。1839に行ってきたパーティに出会う。2泊分の水を担ぎ上げるなんて、一体何なんだ?初めて見る1839は、特異な容姿で空に突き上げている。
まだ8時なので、行けるところまで行ってみることにする。とりあえず目指すはヤオロマップ。コイカクの頂を過ぎると、急にハイマツの愛想が悪くなる。全身を使わないと前に進めないし、枝が次々に脛を打つ。こんな手荒い歓迎は想定していなかった。おまけに段々ガスがかかってきた。「ヤオロマップの窓」からは冷風が吹き上げている。下はガスで見えない。厳しい登りを終え、ヤオロに立つも周りはすっかりガスの中。1839など全く見えないし、期待していた南側も視界なし。
早々に引き返し、夏尾根を駆け下りる。どんより曇った空のもと、前日とは全く表情の違うコイカク沢を下る。最後に川で泳いだら、体が冷えてしまった。('98/8/1〜2)
写真:1823とカムエク(奥)