今年(2001年)の夏、道東・道北では7月からの1ヶ月で少なくとも10件、ヒグマの人里への接近が報じられている。 このように、今年は特にクマの接近が多いようだ。ヒグマの個体数自体は、近年横ばいと考えられている。警戒心が薄い個体が増えたのか、それとも今年は特に山奥の餌が少ないのか。雄よりも縄張りが狭いとされる雌の出現は、山の生息好適地が狭まって縄張りを持てなくなった結果なのか。 そもそも、クマの食性の約90%は植物だ。夏はフキ、秋はドングリや草木の実を食べ、動物性の餌の多くは昆虫(アリやハチ)だ。シカの死骸やサケももちろん食べるが、ヒトを含めて生きている動物を積極的に襲う習性はない。それなのに、人里に出てきただけで射殺されてしまう。このことに疑問を抱く人は少なくないはずだ。 多くの場合、生ゴミや畜産廃棄物の不適切な処理を通し、私たちが彼らをおびき寄せている。ひとたび人里イコール餌場、と覚えてしまったら最後、クマの行動はエスカレートする一方だ。 しかし、「邪魔者は消した」という凶悪犯扱いの報道姿勢には、「駆除せざるを得なかった。」無念さは一切感じられない。わが国でクマの生態が一般に理解されていない証だろう。クマの接近に際しては、「なぜ、人里に下りてくるか。」「下りてこないようにするには、どうしたらよいか。」といった観点から、私たち自身の責任を検討し、世界にも例のない、日本での野蛮な「有害獣としての駆除」(人間と生息地の近いオーストリアやフランスでも保護が基本)の現状についても、広く報じるべきだろう。 「即刻駆除」というお粗末な対応を改めるには、出現する原因の究明や適切できめ細かいマニュアル作りがもちろん必要だ。さらに、多くの人々がクマの生態を深く理解した上で、道を探ることが重要になろう。 ヒグマの保護管理は、北海道における公共事業の重点として掲げるに値する。被害農家への助成・助言はもちろん、試験的に「放置同然の国有林を多様な森林に再生する」、「サケを孵化場で根こそぎ取らず、一部を上流へ遡上させる」といった、クマの餌を増やす(元に戻す)方策も検討できないだろうか。 ヒグマが、世界的に見ても北海道の貴重な財産であることをもっと誇ろうではないか。 |