初めての雪の日高。円山牧場の朝陽は、振り出した雪に隠れてしまう。目指す芽室方面は暗く、出鼻をくじかれそうになる。
スキーを履き、まずは小屋へと向かう。単調な林道歩きにすぐに飽きてしまう。車ならあっという間の道のりがいつまでも続くように感じられ、既に足が重い。おまけに親指が靴擦れしかけている。
小屋にたどり着く。ノートを見ると、冬の間も時折来訪者があるようで心強くなる。空は曇っているが、視界は利く。橋を渡ると、新しいスキーのトレースだ。尾根への取り付きがわかりにくい地形なので、これは助かる。少しだけ沢伝いに歩いてから、左手の尾根に上る。
尾根の下部は広く、なだらかな樹林帯で、かえって地形を読みづらい。尾根の背に見当をつけて進む。いつの間にかトレースからは外れている。徐々に急になり、ジグを切る。カンバの巨木を縫って進むうち、向かって左手の尾根の端に、夏道の印か赤テープを発見。以降、テープを頼りに登る。930辺りで、尾根は直角に折れている。
時折薄日が差し、心が弾む。1000を越え、エゾマツ・トドマツの斜面が狭まり、急になる辺りで風が強まる。一息つくのも困難で、喘ぎつつもゆっくり登るしかない。東側には雪庇が張り出し、歩きやすそうだが体重を乗せるのはこわい。
1200を過ぎ、ややなだらかになると横殴りの西風。まだまだ山は冬の様相だ。 視界は良好だが、体を支えるのが精一杯になってきたので、1400付近で穴を掘る。
辛うじて風を除けられる1m程の穴を掘り、テントにもぐりこむ。予報では、北西の風は強いが天気は良さそうだ。ゴロゴロするうちに雲が切れ、懐かしい下界と周りの稜線が顔を出す。ダケカンバの白い幹が西日に染まって美しい。久々に手に入れた満寿泉の味わいもひとしおだ。
夜が明けると、青空だ。強風の恐怖よりも、白銀の魅力が勝って、ピークを目指す。主稜線までの急登は、夏道の記憶にはない。尾根をやや東側に回り込むと、歩きやすい。1600手前でアイゼンに履き替えると、気持ちよくツメが利く。
青すぎる空が近づき、1690のコルに飛び出す。初めて間近で拝む白い日高に、声もない。夏との様相の違いは当然だが、目にすると実感が違う。本峰よりも西峰の方が鋭い。強風の中、本峰へとハイマツ帯を行く。スキーではあおられて危ないかもしれない。稜線上の雪はほとんど吹き飛ばされている。芽室ピークの、強烈な風による歓迎を受ける。十勝平野や北の眺めは良好。岩陰にはいつくばり、テルモスのお茶をすする。ルベシベから南は冬っぽい雲の中。
15分だけ粘って下山。山並みとの別れを惜しみ、往路を引き返す。戻ってくると、よくもここまでシールで、という斜面だ。
スキーを引きずって下り、テントまで戻ると、風はすっかり弱まり、春の陽光が降り注いでいる。
ここからは颯爽とスキー滑降を、との目論見はすぐに崩れる。技術が未熟なのは承知だが、少しでもスピードが出るとバランスを保てず、顔から雪に突っ込むのには辟易する。プラブーツでのコントロールは自分にはまだ無理だ。下りでわかったが、750位までは尾根の東端から離れないのが得策だ。全身びしょ濡れになりながら、2時間かけて小屋に到着。ヤナギの芽が春を告げている。林道の雪は、舗装部分からは消えている。最後もスキーを引きずる羽目に。もう半月もすれば、小屋まで車で入れるかもしれない。 ('01/3/19〜20)
写真上:朝のカンバ帯 中:コル付近から西峰を望む 下:頂上からの南望