今年の雪融けは早い。南面の沢なら、6月初めでも入れるだろう、そんな観測で中ノ岳へ向かう。
まだ、夏山シーズンには早いのか、神威山荘は無人だ。ニシュオマナイ川の造林道跡を辿り、神威への登山道が450m二股へ下りる手前から、細い踏み跡を左に入る。左股のゴルジュを巻く形になるらしい。
今日は暑くなりそうだ。沢に降り立つ。水量は予想通り少なく、膝下である。m社製の沢シューズと沢スパッツは快適そのものだ。比較的広い河原を、適当に選んで歩く。特に難所はない。辺りは春を迎えたばかりで、色合いは全体に茶色い。
眼前に、中ノ岳からベッピリガイへ伸びる尾根が抱く急峻なカール状地形が広がる。紅葉したらきれいだろう。594m二股からは、カンバの流木が立ちはだかり、鬱陶しい。700m二股の手前に、一箇所ゴルジュが出現。最初、テープを頼りに右岸を大きく巻きすぎて、沢に下りられなくなる。右岸を小さく巻くのが正解だった。
700m二股から上流は雪渓で埋まる。履き替えが面倒なので、渓流シューズとピッケルで押し切る。790mでも沢が合流しているが、ここを通過して860mの沢を左に入る。結構な高さの滝が連続するが、足場は悪くないので、登っていて爽快だ。滝の上流は比較的穏やかな流れだ。
1150m付近で登山靴に替える。少し雪渓を登り、前を見ると、一面のササ。踏み跡もテープもなく、進むべき方向もわからない。とりあえず、標高を上げようと闇雲に手足を動かす。途中からはハイマツのお出ましだ。
右手(東側)の稜線に近づきながら登っている計算だが、なかなか思うように進まず、景色も変わらずもどかしい。
30分以上も格闘し、1350m付近の平坦な雪渓から稜線に出る。空には雲が出始めている。おまけに、西風が強い。
ベッピリガイ分岐も強風で、テン場にならない。ここから中ノ岳ピークは、指呼の距離だ。風は強いが、稜線の眺めは良い。未だ踏まざるペテカリへは、かなりの藪漕ぎを強いられるだろう。でも、いつかは縦走してみたい。南方の神威は、ニシュオマナイ岳に遮られて存在感が薄い。新緑にはまだ早いし、雪もかなり消えている。何か物足りないのはそのせいか。
強風で長居もできず、コルに戻る。結局、コル東側の雪渓に幕営する。夕方、ガスがかかって何も見えなくなる。
暗くなり始めた頃、「バキバキバキ、ドスン」という大きな音。ライトを照らすと二つの目が光る。
すぐに闇に消えていった。やや遠いので断定はできないが、ひょっとしてオヤジか?
朝は澄んだ青空が広がる。風は東に向きを変え、相変わらず強い。中ノ岳もくっきり見える。天気が下り坂に向かうようなので、早々に下る。藪を下るのは苦ではないが、今度は沢への下降点がわかりにくい。視界不良時には、要注意だ。
滝を含め、沢の下降には困難はない。往路を忠実に戻り、シーズン最初の沢登りを終える。('01/6/2〜3)
写真上:ペテカリ南面 下:朝の南日高(左からソエマツ、ニシュオマナイ、神威)