稜線での幕営が癖になった。海の眺めに胸を膨らませ、楽古に向かう。空は曇っている。
立派すぎる楽古山荘を横目に、登山道へ。いきなり、メナシュンベツ川が目の前に横たわる。転石はなく、登山靴を脱いで渡渉する。その先はしばらく造林道跡だ。10月に入ったというのに、麓の紅葉にはまだ早い。平坦な雑木林を縫って進む。
「夏山ガイド」には、最初以外は、石を飛んで渡れるように書いてあるが、水位が高く裸足での渡渉を繰り返す。沢の装備がないのが悔やまれる。
沢から左に折れる尾根への取り付きは分かり易い。急登だが、道は広く比較的先を見通せる。標高を稼ぐと徐々に木々が色づき、ダケカンバの黄色とカエデの赤が目を楽しませる。
メナシュンベツ川上流の谷から、シカだろうか「キューン」という高い鳴き声。秋のわびしさを駆り立てる。後方の眺めも利くようになる。高曇りの空は、さっきよりも暗くなっている。
ピークが1500mを切っているせいか、「グイグイ尾根」というよりは「ヨッコラショ尾根」程度だ。1317mの肩に出ると、ピークが見える。
あとは、ハイマツ混じりの稜線を15分程歩くと、顎が出る前に山頂に出た。
空はやや暗いものの、どこまでも北へと伸びる山並みは圧巻だ。ピークにはテン場はないが、やや傾いた裸地に無理やり張る。期待していた夕陽は雲に隠れ、北の稜線も途中から見えなくなった。
夜の帳が下りる。東は大樹・広尾、西は浦河の街の灯が小さな光が瞬き、何とも言えない。やがて昇った月が、名も知らぬ南側の尾根を照らし出す。
目覚めるとガスの中。天気は持ちそうもない。早々に撤収し、下山する。沢に下りた頃、雨が落ち始めた。('98/10/3〜4)
写真:月光のピーク(楽古からの南望)