野塚の農家の玄関先に、トトロのハリボテが立っている。冬の朝はいつも不安だが、心が和む。
札楽古林道の崩壊は思ったほどではないが、安全策を取って柳橋の1km先に駐車。赤く染まる楽古を仰ぎながら歩き出す。雪は殆ど消えているが、路面は所々台風で掘れたままだ。
この時期にしてクマの足跡。横幅が10cm強なので、大きなクマではないだろう。どっしりとした足跡(後足)が横長の足跡(前足)の前に着地しているので、後足が前のように見える。
足跡についてしばらく行くうちに、生々しい鹿の足。近頃の道東のクマは、数を増やしているエゾシカを食うらしい、との話を急に思い出し、ストックを握る手に力が入る。
徐々に標高を上げるが、辺りの造林地にほとんど雪はない。当然、途中から東尾根に取り付こう、という企みを実行する気にはならない。林道終点(400)近くで足跡が消え、一安心。
登山道に入るとすぐに渡渉点。冬のくせに、そして「札」の名とは裏腹に水量が多い。橋は流されて渡れない。岩は全て凍りつき、プラブーツではとても歩けない。
こんな時期の渡渉は意地でも避けたいし、靴を履き直すのがとてつもなく億劫なので、近くの岩を放り投げて足場をこしらえようとする。が、すぐにその努力の空しさに気づく。結局裸足で渡渉。深さは脛まで。3歩目から感覚がなくなった。一体何の為に、と自分の行動に久々に疑念を抱く。
夏尾根を忠実に辿る。600までは両脇の沢に挟まれたヤセ尾根。雪は5cm程度。その先の急登ではくるぶし位だ。沢をはさんだ斜面からは、シカ達が不審者を見つめている。「キューン!」リーダー格の雄が発する仲間への警告か。
林道で吹き荒れていた風は弱まり、背後には広尾の街と太平洋が穏かに広がる。700から900までは、夏道沿いに張られたロープが雪の上に出ていて足の動きを妨げる。900から上では脛位のフカフカ雪だが、傾斜が緩いのでツボで行ける。北には1050の勇姿が聳える。
1100から上はさすがに急で、アイゼンをつけようかと迷いながら登るうちに、東尾根に合流。さすがに風が強い。朝の好天は去り、上空を雲が駆け巡っている。
ここからは安全を期してアイゼン装着。楽古の肩までの急だが快適な斜面を喘いで登る。1300から上はハイマツ帯なのだろう、視界を遮る樹林はないが、左手の国境稜線は残念ながら殆ど隠れてしまっている。幸い、ピークの東側は季節風から身を隠せるので気が楽だ。
肩では烈風を覚悟していたが、それ程ではない。クラストしていたのは最後の登りだけ。ピークからの展望は殆どない。国境を境にして、西側の天気がよろしくない。
樹氷に見とれながら往路を戻り、東尾根の樹林内で幕営。積雪は少ないが、昼間の風向きなら問題なかろう。雲間からは、2時過ぎにして早くも夕映えの1269が覗く。
かなり暖かい夜だった。熟睡から醒めると、空は高曇り。視界も良好なので、スノーシューで肩まで往復。霞んではいるが晴れてきて、昨日は拝めなかった南への国境稜線が現れる。これで満足。
下りは1時間で渡渉点まで駆け下りる。尾根末端の雪は昨日よりかなり減っている。恐れていた川は、水量が明らかに減っている。一歩で飛び越えられて拍子抜け。最後は楽古がにっこりと見送る中、単調な林道歩き。 ('02/11/23〜24)
写真上:癒し系 中上:まだまだ少雪 中下:朝の稜線 下:曇りもまた良し