野塚トンネルの開通で、冬も日帰り圏内になった十勝・オムシャ・野塚。積雪期ならではの縦走に心躍らせ、深夜札幌を発つ。早い日の出は、春の到来を告げている。
早朝のオムシャは快晴で、今日の楽しいトレールを約束している。翠明橋手前に車を止め、林道から上二股沢に下りる。レンタルスノーシューはまずまず快調。
沢にはデブリが堆積し、恐ろしい光景だ。
歩き出して二本目の右手の沢(550)のすぐ上流側から尾根に取り付き、十勝岳西尾根を目指す。尾根の下部は造林跡だろうか、ところどころ切り株が顔を出している。スノーシューではすぐに登行不能となり、アイゼン装着。雪の締まり具合は丁度良い。西尾根に出るまでは、やや急な樹林帯を忍の一文字で登り続ける。振り向けば、無垢なオムシャの稜線が光る。
「待ってろよ、今歩いてやるから」そんな色気を察してか、途中から雲が広がりだす。カンバの枝に古い赤布を見つけ、やっと合流した西尾根(1148の東)では太陽が隠れてしまう。目指す十勝のピークは雲の中。士気は下がるが、吹雪いていないのが幸い。野塚国道が眼下に見えるのも心強い。
十勝までは、やや広くてなだらかな尾根歩き。アポイ方面は暗い空。雪庇はこの尾根では北側に発達している。南側から季節風が回り込むのだろうか。標高を稼ぐとハイマツ帯か、一面の雪。視界はあまり利かないが、大きな危険個所もなく、淡々と前進する。
さしたる急斜面もなく、十勝のピークに立つ。頂上だけは日が差し、風もない。楽古の頂上は雲の中。時折、太平洋が覗く。
凍てついた十勝の北斜面を慎重に下る。アイゼンが快適だ。視界が良好なので、樹氷を楽しめる。
下りきってからは、平らな尾根歩き。1249は快適なテン場だが、オムシャに近づきたいので前進する。1343を乗っ越すと、風が強まって視界も悪くなる。足も疲れてきたので本日はここまで。少し稜線を下ると風も弱まり、幕営。深い穴を掘れるほど、柔らかい雪が積もっていないのが心配だ。野塚トンネルを通る車の音だけが響く。
朝、空は暗い。「全道晴れ」の予報も、稜線ではあてにはなるまい。風がないのが幸いだ。円錐形のオムシャ西峰がわずかに覗くが、すぐに隠れてしまう。スノーシューを履き、キツネの足跡を先導に、オムシャ東峰へ。最後の登りは岩場で、アイゼンでもバランスが悪い。東峰に立つと、空が明るい。しばらく回復を待つが、野塚方面は見えてこない。この時点で、野塚南の下降尾根からの下山を決める。
フタコブラクダの背のようなオムシャの稜線はなだらかで広い。西峰に立つが、視界は20m位しかない。ここからは、地図とにらめっこして白い世界を行くしかない。西峰から野塚へ向かう稜線は、最初かなり岩ばっていて、尾根のやや西側を慎重に巻きながら歩く。現在地の照合も忙しい。
基本的には好天で、無風で雪が舞っている程度だ。慣れてくると不安も弱まる。小さなアップダウンを繰り返す。1220からの下降尾根は、オムシャと野塚の間から西に出ている唯一の顕著な尾根なので分かりやすいが、案外遠い。このまま下るのも惜しいので、分岐に荷物をデポし、野塚へ。歩きにくい岩場もなく、空荷なので一気に標高を稼ぐ。ピーク付近は東側に大きく雪庇が張り出しているので要注意だ。平らなピークは、標識の棒がなければわからなかっただろう。何の展望もないピークほどつまらんものはない。次回はきっと晴れの日に。
分岐まで戻り、下降尾根へ。一瞬、雲の合間から様子が見えたので安心だ。赤布が現れる。カンバ帯の広い尾根は、いい冬道だ。
ニオベツ川との合流点が近づくと、尾根の両側から谷が迫ってくる。特にニオベツ本流のデブリが凄い。スノーブリッジはすっかり薄くなり、何度もズボズボはまる。見上げると、なんと青空だ。川から野塚トンネルの日高側出口に上がるハシゴを見つけ、国道に出る。が、その前にハシゴに高かった冬用パンツを引っ掛けて引き裂いてしまう。油断は大敵だ。 ('01/3/31〜4/1)
写真上:オムシャ西峰と野塚岳(奥) 中:オムシャヌプリと1343ポコ(右) 下:十勝岳北斜面のクラスト